ロシアといえばこのド派手な玉ねぎ屋根「血の上の救世主教会」

シチリア島はいつか一周したいと思ったのでまた改めて訪れるとして、ロシア経由でそろそろ一時帰国を考えた私。

人生初のロシアはモスクワで、その時はロシア人の"愛想笑い"をしない文化に衝撃を受けたっけ。今回、寄り道に選んだサンクトペテルブルクの印象はそれとはえらい違いで、街も人もなんだかとっても明るくて垢ぬけた雰囲気がした。

世界遺産に指定されている街中にはネヴァ川や運河が流れ、バロック様式・新古典主義にロシア文化が融合した美しい建築物が並んでいる。

ロシア独特の玉ねぎ屋根を持った「血の上の救世主教会」は『テトリス』を思わせ、「聖イサアク大聖堂」は夜のライトアップが美しく、街の治安も悪くないように感じた。

私はまず、旅人の間で「ロシアのスタバタンブラーはマトリョーシカ柄でかわいいからゲットすべき!」と言われているそれをチェックして(買わない)、街歩きを始めた。

運河の流れる街中。奥に見えるのは「血の上の救世主教会」ライトアップされた夜の「聖イサアク大聖堂」旅人に話題のロシアのスタバタンブラー

たくさんの見所の中でも、マストなのは「エルミタージュ美術館」だろう。

長い行列の後ろに並ぶとあいにくの雨が降ってきた。傘を持っていない私は、寒いし濡れるし困ったなと、ふと後ろを振り向くと、珍しく小柄な、152cmの私より少し高いくらいの身長のロシア人男子がひとりポツンと立っていた。

「......。(傘に入れてもらってもいいですか?)」

なんだか目でナンパしてしまったようだが、大雨という理由があるのだから仕方がない。せっかくなので入口までおしゃべりしましょうか。

彼の名前はアレクセイ。全くのロシア語なので、スマホの翻訳機能でなんとか話す程度だったが、モスクワから一人旅に来ているそうだ。

日本でたとえると、モスクワが東京でサンクトペテルブルグは京都......、と言いたいところだが、サンクトペテルブルクは戦争の歴史が残る場所で、広島長崎にたとえられたりする。

アレクセイとは言葉の壁で会話は円滑ではないが、お互い一人旅だし、結局一緒に美術鑑賞することになった。

エルミタージュ美術館は、18世紀頃、女帝エカテリーナ2世が美術品を買い取り、自分専用の美術品展示室を作ったのが始まりで、現在の総収蔵品は約300万点と超巨大。

冬宮、小エルミタージュ、旧エルミタージュ、新エルミタージュ、劇場エルミタージュと5つの建物で構成された館内は広すぎて迷子になりそうだ。

建物自体が世界遺産のエルミタージュ美術館

美しい調度品などを写真に撮りながら、館内の天井から床まで360度の角度で見まわしていると、ガシャン!

ドアの取っ手が思い切り私のアバラに直撃! それはドラゴンの爪先が赤いルビーのような大玉を掴んでいる、高級そうなデザインだった。するとすかさず、

「ちょっと! アンタこれいくらするかわかってるの!?」

超お怒りモードの警備員に叱られたが、その時また私の後ろから来た別の客がガシャン! 警備員が今度はその人を叱っていたが、きっとこの取っ手みんなぶつかりやすいのだろう。

実は私は2周目でもう一度ぶつかったし(ごめんなさい)、いつかもぎ取れるんじゃないだろうか。

天井から床まで豪華絢爛な館内ドラゴンの爪先のようなドアの取っ手

私たちはふたりとも芸術に疎かったので、館内を流し見しつつ、パンフレットでクローズアップされている作品だけチェックすることにした。

迷路のような部屋を巡っては、「はい! クリア!」とスタンプラリーのような感じで、ダ・ヴィンチのような有名作品の前では

「アレクセイ! 写真撮って!」

まるでAmazonのスマートスピーカーに呼びかけるようにして、彼に写真を撮ってもらった。

『レオナルド・ダ・ヴィンチ ブノアの聖母』1478年中央アジアを思い出す展示物もあり、なんだか懐かしいパンフレットに載っているのに展示されてないものもあった。ルパンに盗まれたのかなぁ......
ところで、エルミタージュ美術館にはネズミ退治のために60匹の猫が飼われているそうだが、1匹も見かけない。

どうやら普段は美術館の地下にいるそうでなかなか会えないらしく、さらに雨だから隠れてたのかな。美術館で暮らす猫を見てみたかったのだが、非常に残念だにゃあ。

同じ猫耳ヘアのコは発見

さて、散々アレクセイに写真をお願いしたかわりに、今度は彼からのお願い。

「行きたいところがあるんだ。付き合ってくれない?」

彼に連れていかれたのは「Big funny」と書かれたアミューズメント施設。

巨大なキッチンやソファ、ハイヒールや歯磨き粉などのオブジェが置いてあり、自分たちがまるで小人のようになって遊んだり写真を撮ったりするところ。

偉大なるエルミタージュ美術館とは、また違う意味での"大きさ"を味わえる場所だった。わざわざサンクトペテルブルクまで来て行くようなところでもない気がするが、インスタのご時世だしまぁいいだろう。

元々小さい私とアレクセイは、『不思議の国のアリス』になったような気分で、キッチンやテーブルによじ登った。

「アレクセイ! 写真撮って!」

旅をしていると毎日が新しい出会いで違和感がないけれども、気付けば初対面のアレクセイとプチデートだよなぁ。(言葉の問題で)会話はあまりないけど、ロシア人男子とアートを巡るプチデート、まあよろしいか。

私たちはSNSを交換し、あとで写真を送り合おうと約束をして別れた。

巨大ソファでリラックス巨大キッチンによじのぼる。右がアレクセイ

雨の上がったサンクトペテルブルクは清々しくて気持ちが良い。

目抜き通りのネフスキー通りでは、どこの観光地にもいそうな全身を金色の塗料で塗りたくった女性パフォーマーや、バルコニーで逆立ちをする男などが周囲を賑わしている。

カザン大聖堂の前にある街一番の本屋さんでは、いろんなパターンのプーチンカレンダーが人気土産なのが印象的だった。日本でも総理大臣カレンダーって売ってるのだろうか。

路上に面したキャンディー屋はガラス越しに金太郎飴を作るパフォーマンスが面白かったが、どちらかと言えば作り手がイケメンすぎて、そちらに目が行ってしまう"飴より男子"な乙女心。お土産屋台には何種類ものマトリョーシカが並び、記念にひとつ欲しかったのだが、たくさんありすぎて優柔不断な私は購入を決断できず断念した。

歩き回ってそして大きな公園のベンチに腰掛け私は思った。サンクトペテルブルク、楽しめる街だ。

ネフスキー大通りの逆立ちパフォーマー迫力のある「カザン大聖堂」気になるプーチンカレンダー

【This week's BLUE】
マトリョーシカ。種類豊富でピンキリだけど、気に入ったやつに限ってなかなか高価(笑)。

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第221回「世界一猫好きの国! ロシアの猫共和国に暮らす"塩対応"の英雄たち」

●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】

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