『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は鉄道マニアの彼女が、小田急線・南新宿駅の魅力について語ってくれた。

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大都会東京を代表する巨大ターミナル、新宿駅。1日平均乗降客数347万人(2016年)は、ギネス世界記録にも認定されています。

そんな新宿駅のたったひと駅先ながら、"都会の過疎駅"と呼ばれているのが小田急線の「南新宿駅」です。約4000人という乗降客数は、小田急全駅の中でもかなり少なく、神奈川県の小田原の手前にある足柄駅と最下位を争っています。

都内の鉄道各社の全駅の中でも最少クラスで、日暮里・舎人(とねり)ライナーの足立小台(あだちおだい)駅と同程度です。

しかし、私の実感としては「4000人もいるのか?」というのが正直なところ。ここで乗り降りしている人を見た記憶がありません(笑)。

この南新宿駅は、新宿を出発して1分くらいで着くほど近い場所にあります。山手線の代々木駅からも500m程度しか離れていません。

つまり、ここが最寄りになる地域が非常に狭いんです。しかも、南新宿駅には各停しか止まりませんから、わざわざ新宿からひと駅乗って来るより歩いちゃう人が多いんでしょうね。

そんな過疎駅なので、常に廃止論がささやかれています。駅を取り壊して、そのスペースを各駅停車と急行列車の分岐のために使おうという案や、留置線(鉄道の車両を一時的に止めておくための線路)を新たに造ろうという案、商業施設を建てようという案も聞いたことがあります。

個人的には、所在地の渋谷区代々木に合わせて「西代々木駅」に改名し、代々木周辺へのアクセスを強調したら利用者も増えるんじゃないかと妄想していましたが、最近は「このまま残してほしい」と強く思うようになりました。

昨年、小田急線の複々線化(上り用と下り用の線路を2本ずつ=計4本敷設すること)工事が完了しました。着工から30年かかった大事業で、代々木上原から登戸までが複々線化され、その間のすべての駅が高架化か地下化されました。そんな激変する小田急の風景の中でも、地上駅のままの南新宿駅は昔の雰囲気を残しているんです。

駅前には広場や商店街もありませんが、高層ビルと昭和の香りがする一軒家が混在する面白い土地です。狭い道が迷路みたいに入り組んでいて、私が好きな街中の階段もたくさんあります。そんな駅周辺をうろうろしてみると、楽しいですよ。

この辺りの踏切は待ち時間がかなり長く、"開かずの踏切"といわれることもあります。この間、そのなかのひとつである「新宿2号踏切」で面白いものを見つけました。踏切の手前には黄色い警戒標識がありますが、なんと絵柄が蒸気機関車のシルエットのものでした。

今はほとんど電車や気動車のシルエットになっているので、すごく古い可能性があります。鉄道好きにはぜひチェックしてほしいですね。ただでさえ珍しくなった「SLマーク」を都市部で見られるのは、テンションが上がるはずです。

ちなみに、都心のはずなのに踏切の「カーンカーン」という警報音は住宅地向けの小さい音量だったのも、不思議な感じがしました(笑)。

都内には"新宿"という地名がつく駅が10ありますが、そのなかでもほかにない個性を持つ南新宿駅。ぜひ一度は降りてあげてください。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J‐WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21:00~)、MBSラジオ『市川紗椰のKYOTO NOTE』(毎週日曜17:10~)などにレギュラー出演中。駅前の「ICON」というハンバーガー屋で、皿いっぱいに流れ出るマカロニチーズを使った"ジャンクバーガー"に出会った

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!

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