販売終了記念モデルの「ザ・ビートル Designマイスター」

今年、日本での販売を終了する「ザ・ビートル」。これまで人気の高かったオプションを標準装備した、販売終了記念モデル「Designマイスター」に試乗。愛され続けたビートルの魅力に迫った!

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■世界で愛されたビートルの理由

自動車史に残る名車がまたひとつ消える。カブトムシのような形で知られるVW(フォルクスワーゲン)の小型車「ビートル」のことだ。初代から現行モデルまでの累計は3400万台超だが、今年7月で生産は打ち切りとなる。

ビートルはナチス時代のドイツで誕生したクルマだ。アドルフ・ヒトラーによる大衆車政策の下、開発が進み、ビートルのオリジナルモデル「タイプⅠ」は1938年に登場。本格的な生産は第2次世界大戦後で、ご存じのようにVWが世界に誇るベストセラーカーとなっている。

今回試乗したのは、2012年にニュービートルの後継車として日本に導入されたザ・ビートルで、世界累計は50万台以上だ。

丸目のヘッドライトはニュービートルのデザインを継承するが、サイドのシルエットはタイプⅠがモチーフだという。

試乗グレードはDesignマイスター。純正ナビ、リアカメラ、バイキセノンヘッドライト、オートエアコン、パドルシフトなどが標準装備となっているのに、価格は303万円。ベースモデルとの価格差はたった25万円で、まさに大盤振る舞い価格の特別モデルだ。

搭載エンジンは直列4気筒1.2リットルの直噴SOHCターボで、7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせる。コイツのベースはざっくり言うと先代の6代目ゴルフだ。

ちなみに今回の試乗取材は、今年2月、神奈川県大磯町の大磯プリンスホテルを拠点に開催されたJAIA(日本自動車輸入組合)主催の第39回輸入車試乗会で行なった。

ボディサイズは全長4285mm×全幅1815mm×全高1495mm。ホイールベースは2535mm

驚いたのは、ザ・ビートルのシートに滑り込みハンドルを握った瞬間。たったそれだけのことで不思議とハッピーな気持ちになり、ワクワクするのだ。

アクセルを踏む。乗り心地は実に穏やかで、走りだしてすぐにボディのしっかり感が伝わってくる。エンジンは1.2リットルターボエンジンで、わずか105PSしかないので、正直、絶対的な速さはない。

そもそも速さを求めるクルマではない。むしろ恋人を乗せてユルユル走ることを楽しむクルマだ。

若干、高回転域は息切れに近い感覚がなくはないが、このクルマでそこまでブン回すことはまずないだろう。

速度を上げると、多少なりともロードノイズは入り込むが、遮音性は高い。音楽や会話を楽しみながら走りも楽しむ。それこそが世界中で愛され続けた理由のひとつかも。

今、VWは、例のディーゼル車排ガス不正問題発覚から経営改革を進めており、2025年までに20種以上の電気自動車(EV)を発売する。具体的なスケジュールも示されており、

今年の年末からEVの新型コンパクト「I.D.」の生産をスタートさせ、SUVの「I.D.CROZZ」、バンの「I.D.BUZZ」、セダンの「I.D.VIZZION」が順次市場投入される。

VWは2030年には世界販売の40%をEVにする方針で、今後、10年間のEV販売台数は2200万台を想定しているという。

今年、ビートルは約80年の歴史に幕を閉じる。だが、近い将来、EV化されたビートルの復活を期待しよう!