「月1000~1300人が訪れ、月の半分ほどがリピーターで埋まっている」というメンズ美容総合サロン『粋華男製作所』。その人気の秘密とは――? 「月1000~1300人が訪れ、月の半分ほどがリピーターで埋まっている」というメンズ美容総合サロン『粋華男製作所』。その人気の秘密とは――?

ドラッグストアには当たり前のように男性用化粧水が並び、気がつけばオトコがスキンケアに気を遣うことは普通の時代になった。

そんななか、メンズメイクが人気を呼んでいる。平成から令和に変わろうとしている今、メンズメイクすら当然の身だしなみになるのかもしれない――。

オトコのメイクといえば、かつてはビジュアル系、少し前ならジェンダーレス男子の特徴だった。しかし、今、「どこにでもいる普通のサラリーマンがメイクをしに訪れる」というのは、東京・銀座にある『粋華男(イケメン)製作所』手塚拓海代表だ。

月1000~1300人が来ますが、土日はもう予約がパンパンで1カ月先が埋まることも珍しくありません。就活や面接、客先でのプレゼンテーションなど仕事関係で利用する方は、およそ4割。あとは彼女とのデートやプロボーズする際など、プライベート利用が6割です」

粋華男製作所は男性のヘアカットからメイクまで手掛ける、日本初のメンズ美容総合サロンだ。2017年の9月にオープンして以来、ユーザーは右肩上がり。美容意識の高い20代だけでなく、30~50代まで利用者の年齢層は幅広い。

女性の上司に清潔感を指摘されて来た人という例もあったが、ビジネス面において「海外のエグゼクティブ層はメイクをするのが普通。むしろなぜメイクしないのか不思議がられる」(手塚代表)そうだ。

『粋華男製作所』の手塚拓海代表 『粋華男製作所』の手塚拓海代表

一方で、意外なところにもニーズはある。メイクを担当する"クラフター"の鈴木智加子さんはこう話す。

「最近カウンセリングをしていて若い世代で一番多いのは、マッチングアプリ就職活動に使う写真用ですね。男性は写真で盛るってことをしない。メイクをして加工なしの写真を撮る方が多いです」

■予想に反する高いリピート率

粋華男製作所のコンセプトは「毎日誰かの特別な日」。つまり、毎日メイクするのではなく、特別な時にメイクをして少しルックスレベルをあげることの普及を目指したはずだった。

「男性のメイクは特別な日にスイッチを入れるためのもの。とはいえ、そんなに特別な日はないので、皆、一生で一度きりしか来ないことも覚悟していました。

しかし、意外にも年に1回、月に1回から、だんだん毎日でもいいっていう方が増えてきたのも事実です。3割ほどがリピーターになり、月の半分ほどがリピーターで埋まっています

しかし、手塚代表も指摘するように「男性はメイクに対して抵抗感や拒絶感を持ってることが多い」。それでもなぜリピートするようになるのか。そこにはイメージとのギャップがある。

「僕達がやっているのはあくまで『身だしなみメンズメイク』。男性の場合は女性と違って元の顔からかなり変わるのは嫌うんですよね。なので女性のある種"整形メイク"を男性にやることはほぼありません。

今日職場に行って『何その顔!』って言われるのは嫌なんですよ。『何か雰囲気が違うよね』程度の変化を意識しています

男性のメイクといえば、冒頭であげたように極端なイメージが強い。メイクしていることが一発でわかり、なんなら白浮きして悪目立ちしている印象も。しかし、「身だしなみメンズメイク」では、むしろ目立たないようにすることを心がけているため、満足度も高いのだ。

プライバシーに配慮した個室なので、初めてでも気兼ねなくメイク体験できる プライバシーに配慮した個室なので、初めてでも気兼ねなくメイク体験できる

ちなみに初めて来る利用者はどう注文したらいいかわからず、オーダーの多くは「とりあえずイケメンに」だ。しかし、何度も通うようになると注文が具体的になり、いろいろと試していく。そして、そのうち自分でもメイクを始める。粋華男製作所の『メンズメイク・レッスン』には月間300人ほどが通っているそう。

「まずメンズメイクのやり方が周知されていません。それからメイクで一番重要なのは色合わせ。色の濃さが合ってなかったら浮く、浮くと化粧をしていることが当然バレてしまう。

また、男性が化粧品を買いにいくことも抵抗が大きい。だからこそ、最初から正解を見つけるためにレッスンに通っていただいたほうがいいと思います」

人の肌は、大きくイエローベースとブルーベースに分けられる。男性はイエローベースの肌が多いが、日本国内の化粧品はブルーベースがほとんどだそう。そのため海外製品も含めて「化粧品選びに1年以上かけた」ほど、厳選したそうだ。

厳選された化粧品の数々。メイク初心者の記者はどこに何を使うのかわからない 厳選された化粧品の数々。メイク初心者の記者はどこに何を使うのかわからない

最後に手塚代表はメンズメイクの可能性について、こう話す。

「第一印象が悪くていいことはありません。経営者や営業マンなど印象ひとつで商談の行方や仕事に影響するなら、考えた上でやれるすべての手立てをやって欲しい。

そこに気づいている人が『身だしなみメンズメイク』を求めているんではないでしょうか。僕はそう思っているのでメンズメイクに可能性を感じています」

かつて『人は見た目が9割』という本がベストセラーになったように、第一印象は重要なもの。メンズメイクは第一印象をよくするための最先端なのかも。

★4月17日(水)予定の後編では、実際にアラサー記者がメンズメイクを体験。周囲の反応も調べた

■粋華男(イケメン)製作所 https://ikemen.works/

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