「欲しい度は95%だが、自腹で買う度は50%」と話す塩見。45ポイントの差に関して、「自宅に充電環境がない」「私は長距離走行の機会が多いのでまだ不安」とのこと

バッテリーとモーターを大幅に強化した日産リーフの高性能モデル「リーフe+」が登場。その実力を自動車ジャーナリストの塩見サトシがズバリ解説する。

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世界初の量産電気自動車(EV)、日産リーフの9年弱の歴史は、航続距離(1充電で走行可能な距離)向上の歴史といえる。世間は渡辺謙のようにこう言い続けた。

「航続距離が短すぎて使えないっ!」

2010年末に初代がバッテリー容量24kWh、航続距離200kmで登場し、約2年後に制御変更によって航続距離を228kmに向上させた。さらに15年末には容量を30kWh、航続距離を280kmに向上させた。

それでも満足に売れない。ならばと17年秋のフルモデルチェンジを機に容量を40kWhに増加した。航続距離は400kmに達した。7年で倍増させたことになる。

EVの航続距離はカタログ値の7掛け程度と考えるべきだ。つまりカタログ値が400kmということは、実際には280km程度走行可能。日本の乗用車ユーザーの一日の平均走行距離は20km~30kmといわれるため、280km走行できるとなれば1週間から10日に一度充電する程度でよく、十分なように思える。

それでも市場はリーフにさらなる航続距離を求めた。もしかするといくら長い距離を走行できるようになっても、EVである限りユーザーは満足しないのではないか......。そんなふうに分析する人も出てきた19年の年始、日産はリーフにさらなるロングラン性能を盛り込んだ。

基本、内装は標準車と共通だが、Gグレードのシート地は本革を採用している

総電力量62kWhのバッテリーを搭載して航続距離を570kmに延ばしたほか、最高出力を150PSから218PSに、最大トルクを320Nmから340Nmに高めたのだ。距離も速さも向上させた(航続距離はいずれもJC08モード)。日産はこの62kWh仕様のリーフに「e+」というサブネームをつけて差別化を図った。

40kWh版と比べ、見た目の違いはほとんどないが、走りは相当異なる。発進加速は40kWh版でも十分に鋭いが、時速60キロから80キロへの中間加速は明らかにe+が上回る。

子供っぽく速さだけを比較して評価するつもりはない。幅広い速度域でより力強いということは、これまでどおりの加速がより造作もないことになるわけで、要するに余裕が生まれ、動的質感の向上につながるのだ。またe+はバッテリーをより多く積んで重くなったが、車体底部が重くなってむしろ重心は下がった。このことも動的質感の向上につながっている。

日産によれば、e+の航続距離は国内の99.5%の乗用車ユーザーの一日の走行距離をカバーする。航続距離に関する不満は減るはずだ。将来の急速充電器の性能向上を見据え、これまでよりも速い急速充電にも対応した。

一方で上級のe+Gで472万9320円、簡素なe+Xで416万2320円という価格は、乗員の目に入り、手に触れる仕立ての部分はいいとこ200万円台後半のクルマであることや、メルセデス・ベンツCクラスの価格が455万円からと考えると高い。

ちなみに併売される40kWh版リーフのそれぞれ同じグレードが399万9240円、366万1200円だから、性能向上代はざっと50万~70万円だ。性能向上と引き換えに400万円を突破したことを市場はどう評価するか。武井 咲(えみ)のように市場から「e+だーい好き」と言ってもらえるのかどうか、見ものだ。