逆輸入的に日本でも販売されることになった新型「RAV4」

4月10日から日本でも発売中の5代目RAV4。よりいっそうゴツさが増した、新型のパフォーマンスはいかに? 

公道、雪道、オフロードで走り込んだ小沢コージがリポートする!

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■迫力のブルドッグ顔に3種のこだわり4WD

参ったぜ! こんなにガチでチャレンジングな硬派SUVに生まれ変わっていたとは。これは昨今の「お便利ミニバン大国」ニッポンへの挑戦状でもあるんじゃないのか!? そう、4月10日に発売された新型トヨタ・RAV4のことだ。

そもそもRAV4は、今から25年前にデビューした都会派RV(レクリエーショナル・ヴィークル)で、SUVの中でもライトな存在だった。最初はナンパな3ドアモデルから始まり、CMには当時ドラマに出たてのキムタクを起用し話題にもなった。

しかしその後、日本でRVブームは下火になり、2016年には国内販売が終了。一方、欧米ではボディを拡大し、トヨタの新ワイルド顔を投入した4代目が世界のSUVブームに乗って人気爆発! 17年は世界販売台数約78万台、18年には約83万台と世界ランク3位レベルになり、このほど再び5代目から逆輸入的に日本でも売られることになったってワケだ。

そしていよいよ、真冬の北海道、春の富士山麓での試乗チャンスが到来。今や世界中のトヨタ車でカローラの次に売れているRAV4だけあって、売れるグローバルカーのオーラがハンパない! かつてのような軟弱さは影を潜め、硬派に雄々しく、かつスタイリッシュになっていた。

インパネは基本に忠実な配置で扱いやすい。また、寒冷地での手袋を着けた操作も想定し、ノブスイッチの手応えまで考えられている

まずビックリなのは、グローバルなサイズ感。全長4.6mに全幅1.85m強の雄々しき体格は、ライバルのホンダ・CR-Vとも似通っていて、横幅こそ広めだが長さはちょうどいい。

しかし、顔つきはCR-Vより全然チャレンジング。特に口元を「へ」の字に曲げたようなブルドッグ顔は迫力満点! 担当デザイナーいわく「何年も同じ場所(デザイン)にい続けるほうが危険」と危機感たっぷりに新デザインを模索したそうだ。

その結果生まれたのが、アメフトの防具をイメージした、このクロスオクタゴン(交差八角形)フォルム。フロントからリアまで角張ったプロテクター感満点だ。特にサイドのマッチョ感、前後アンダーガードのメタリック感はなかなかのもの。

トランクは広々としていて使い勝手に優れており、容量も580Lと十分。2列目シートをフラットに倒して拡張することも可能だ

そして、室内の使い勝手もスゴい! 身長176cmの小沢が前後シートにゆったり座れる上、ラゲッジは580Lと広大。この使い勝手の良さは、現行SUVの中でもトップクラスだ!

このゴツさとは裏腹なのが、上質な乗り心地。一昨年に、FFセダンのカムリに初投入した新世代のGA-Kプラットフォームを採用。ボディや足回りのしっかり感、全体の静粛性はカムリ譲りで、さらにSUVに必要なフロント回りのボディ剛性、SUVらしからぬフロア下の空力パーツまで追加。結果、見た目のゴツさを裏切る快適性で、サルーンに匹敵する上質な走り味が堪能できるのだ。

試乗日はアイスバーンが目立ったが、ストレートでは安心してアクセルを踏み込めた。コーナー前のブレーキングでも挙動は乱れない

まず小沢が衝撃を受けたのは、真冬の北海道でゴツゴツの氷結路を走ったときだ。今までのSUVだったら、完璧に振動過多でアゴを出すような路面でもスムーズかつ滑らか。ステアリングフィールの上質感も驚きでしかない。

これは富士山麓の一般道を走ったときも同様で、乗るとSUVっぽいゴワゴワ感は微塵もない。強いて言えば、171PSの2Lダイナミックフォースエンジンを搭載するモデルを走らせた際、ギアボックスがCVTでエンジンがブンブン回ったときにうるさくなるけど、気になったのはそれくらい。ちなみに、パワートレインはこのほかにもシステム出力218PSを発生する2.5Lハイブリッドが用意されている。

そして特筆すべきポイントは、今回初投入された、マジ?と言いたくなるほど凝りすぎの4WDシステムだ。それも3種類もあるからたまらない。

ひとつ目は、従来の2Lガソリン車に搭載可能な電子制御カップリングをセンターデフに使ったダイナミックトルクコントロール4WD。前後輪へトルクを最適配分する。

ふたつ目は、ハイブリッドモデルのリアに電動モーターを使った「E-Four」と呼ばれる4WDシステム。プリウスなどでもおなじみだ。

そして3つ目が、ガソリン車の上位グレードに搭載される、世界初の「ダイナミックトルクベクタリングAWD」。リア左右の車軸にそれぞれ別の電子制御カップリングをつけることで、コーナリング時の外側タイヤを増速。結果、クルマが微妙に曲がりやすくなり、滑りやすい路面で効果を発揮! 

特に雪道やダートじゃなかなかのもので、正直2Lガソリンのノーマル4WDでも十分走りやすかったが、トルクベクタリングAWDがつくグレードだと、コーナリング後半からスイスイ曲がっていく。カウンターステアを当てるほどではなかったが、単純に走りがより楽しくなった。ちなみに、ガソリン4WD車には「マッド&サンド」「ノーマル」「ロック&ダート」から選べる走行支援システムも装備される。

だが正直な話、RAV4は日本じゃ都会向けのファッショナブルSUVとして使われる可能性大。雪や氷結が当たり前の地域ならいざ知らず、「この性能とアグレッシブなデザイン、日本じゃちと過剰では?」とチーフエンジニアの佐伯禎一氏に問いかけたところ、気合いの入った答えが返ってきた。

土と砂利が交ざったダートコーナーをノンブレーキで抜ける。こうした、危うく外にはらみかねない路面状況でも、四輪制御が安定した挙動を実現!

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佐伯 別にいいんです。売れる売れないの問題じゃないんです。

――え、マジですか!? RAV4が売れなくてもいい?

佐伯 販売台数はあくまでも結果で、大切なのは、このクルマを通して、そのお客さまの時間の使い方とか、人生の過ごし方がどう変わるのかということ。そこを最初に考えないから製品もダメになります。

――でも、効率重視の軽やミニバンが売れる日本で、四駆やSUVのスタイルはなかなか伝わらない気も。

佐伯 確かに一部の人には好かれないかもしれませんが、トヨタには「もっと興味を持ってもらい、愛されるクルマにするためにはどうすればいいんだろう」という観点がいつも最初にあります。

――なるほど。売るための計算ずくめのクルマ作りではなく、まずは興味を持ってもらい、面白そう、カッコいいと思ってもらうことが大事だと。その意味では、新型RAV4は好きになってもらうために過剰な味つけをしたと。

佐伯 そうなんです。気に入ってくれる人はメチャクチャ好きになると思います。そういう部分が大切なんです。

――そのためのゴツいデザインであり3種の4WD。

佐伯 そのとおりです。