高度経済成長が終わり、日本が豊かになった時代。そんな時代の食生活は、ダイエットにもアンチエイジングにも最も効果的だったという!

その理由と絶大な効果を食品機能学者が解説する。

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■100歳まで生きることも可能

昭和50年(1975年)の食事が、驚くべき栄養バランスと効果を持っていた!

「昭和50年の男性は、現在の男性と比べてスリムでした。例えば40代は今より約6kgも痩せていたのです。

その理由を『今より食料事情が悪かったからだろう』と思う人がいるかもしれませんが違います。当時は戦後、最もカロリーを取っていた時期で、摂取総カロリーは平成17年(2005年)の約1.2倍になります」

そう話すのは、昭和35年(1960年)から平成17年までの日本人の食事を比較・研究してきた東北大学大学院農学研究科の都築 毅(つづき・つよし)准教授だ。

「マウスを使った実験でも、昭和35年、昭和50年、平成2年(1990年)、平成17年の食事を再現して4週間与えたら、昭和50年の食事を与えたマウスが最も代謝が活発で、内臓脂肪が少ないことがわかりました。

このことから、昭和50年食は代謝を良くし、肥満を抑える効果があるといえます」

昭和50年食はダイエットに大きな効果があるのだ。それだけではない。薄毛予防にもなるという。

「私たちは脱毛や毛のツヤの評価もしました。すると、平成17年食を与えたマウスは、昭和50年食を与えたマウスに比べて、明らかに被毛が劣化していました」

毛髪は主にタンパク質でできている。特に育毛効果があるといわれる豆類などの植物性タンパク質を多く取る昭和50年食が薄毛予防になっているらしい。

「被毛と皮膚を総合すると、昭和50年食は平成17年食に比べて、約2倍老化速度が遅いことがわかりました」

老化が遅くなるということは、当然、寿命も延びる。

「実験では、マウスの平均寿命が、平成17年食群で49.0週齢だったのに対し、昭和50年食群では58.7週齢。およそ2割延びました。これを人間に当てはめると、日本人の平均寿命(現在約83歳)が約100歳まで延びる計算になります」

昭和50年食は、人生100年も夢じゃないし、さまざまな病気の発症リスクも下げてくれるというのだ。

「実験で肝がんを発症したマウスは、平成17年食群で80%だったのに対し、昭和50年食群は20%でした。4分の1に抑えられています。

糖尿病の発生リスクも大きく下げています。糖尿病のかかりやすさを示すインスリン抵抗性指標が、平成17年食群に対して、昭和50年食群は約5分の1でした。

認知症の発生リスクも4分の1になりました。

学習・記憶力の実験をすると、平成17年食群は昭和50年食群に対して4倍も速く学習・記憶力が衰えていたのです」

日本人のふたりにひとりが罹患するというがん。患者数が1000万人を超え国民病といわれる糖尿病。65歳以上の3人にひとりが発症または予備軍だという認知症。どれも怖い病気だが、そのリスクが少しでも減るのはありがたい。

昭和50年食は、本当に驚くほど効果がある食事なのだ。

■おにぎり2個より、おにぎりとサンドイッチ

では、昭和50年食とは具体的にはどんなものだったのか。一般家庭の例を挙げよう。

【朝食】ご飯、白菜とモヤシのみそ汁、サケの塩焼き、納豆

【昼食】きつねうどん、果物

【夜食】ご飯、クリームシチュー、白菜と干しエビのおひたし、キュウリとヒジキのあえ物

「昭和50年食が素晴らしいのは、栄養バランスがとても優れていることです。一汁一菜の粗食でもなく、現在のように偏った洋食でもない。少しだけ欧米化した食事です」

昭和50年食のポイントとなるのが、(1)豆類(豆腐、納豆なども含む)を多く取っていること、(2)魚を毎日食べていること(肉は1日おきか、3日に一度の割合)、(3)卵を一日に1、2個食べていること、(4)みそ汁を一日に2杯飲んでいること、(5)海藻やキノコ類を多く取っていること、(6)デザートに果物を食べていること、(7)野菜も魚も煮物が多いことだ。

「昭和50年食の特徴は、食材が多いこと。少しずつたくさんのものを食べることで、内臓にかかるストレスが少なくなります」

では、現代のコンビニ頼りの食生活で、少しでも昭和50年食に近づける方法はないか。最後に聞いた。

「例えば、コンビニで昼食を買うとき、おにぎりを2個買うのではなく、おにぎりとサンドイッチにしてみる。また、おにぎりとサンドイッチよりも、おにぎりとサラダとカップスープのほうがさらにいい。

そうすることで食材の種類が増え、内臓にかかるストレスが減るからです。そして、毎日メニューを変えること。これが昭和50年食の基本です」

最強の栄養バランス食をぜひ試してほしい。