ドラマ『のの湯』主演の女優・奈緒さん(左)と銭湯・小杉湯の番頭兼イラストレーター・塩谷歩波さんが、東京・荒川区の梅の湯にて銭湯女子対談!

仕事帰りにサクッと銭湯に通う"銭湯女子"の増加など、今、若い世代に銭湯ブームが到来。その魅力を、現在、放送中の銭湯ドラマ『のの湯』で主演を務める奈緒(なお)さんと、『銭湯図解』の著者である塩谷歩波(えんや・ほなみ)さんが語ります。

■「泣きに行く銭湯」に「ビールがうまい銭湯」

奈緒 『銭湯図解』、読ませていただきました。塩谷さんのイラストはもちろん、「春に行く銭湯」「ご飯がおいしくなる銭湯」など、テーマ別に紹介されているのもすごく楽しいなって。今、一番気になっているのは「泣きに行く銭湯」です(笑)。

塩谷 東京・武蔵野市の境南(きょうなん)浴場ですね。あそこのサウナ室は静かなピアノのBGMが流れていていいんですよ。奈緒さんはプライベートでも銭湯、行かれますか?

奈緒 はい。ひとりでふらっと行くこともあるんですけど、

ドラマをやってから、すごく女友達を連れていきたくて。あの気持ちよさは仲のいいコと共有したいなって思うんです。「銭湯行かない?」っていう誘い方ってすてきですよね。

塩谷 私、家にある風呂は一切、使っていなくて、週7で銭湯に通っているんです。その日の気分で「今日は、どこに行こうかな」って決めているので、まさにドラマ『のの湯』の主人公・野乃みたいな感じなんですよ。

奈緒 こんな近くに"リアル野乃"がいたなんて(笑)。

塩谷 銭湯って、同世代の女子と一緒に行くと一気に距離が縮まりますよね。言いたいけど言えなかったモヤモヤした気持ちを湯船に漬かりながらコソッと話すとスッキリします。相手もそういう秘密めいた話をしてくれたりもして、ちょっと懺悔(ざんげ)室みたいな感じ(笑)。

カフェだと周りの人が気になってしまうけど、銭湯は常にジェット風呂だったりシャワーの音があるからその心配もない。そういう場所って、ありそうでなかなかないんですよね。

奈緒 裸の付き合いができる上に、温かいお湯に漬かってふやけちゃってるからか身構えることもないし。そう考えると銭湯ってすごくレアな場所ですよね。値段も安くて、サクッと行けて体もきれいになるし、元気にもなる。

塩谷 あとはやっぱり、出た後のビールがおいしい。

奈緒 小さいときは銭湯後の牛乳が格別でしたけど、今はビールですよね。本当に大人になってよかったなと(笑)。

塩谷 最近ではワインや生ビールが飲める銭湯もあるんです。私が勤める東京・杉並区の小杉湯でもクラフトビールを何種類か置いていますし、生ビールだったら東京・荒川区の斉藤湯がオススメです。アサヒビールのビアマイスターの認定をもらっているから本当においしいですし、いろいろなサイズから選べるのもうれしいんですよ。

奈緒 銭湯ごとに、こんなにも違った特色、楽しみ方があるんだって最近、知りました。カフェ巡りと同じ感覚で「銭湯巡り」にハマりそうです。

■銭湯の数は減っても利用者は増えている?

最近では仕事帰りに銭湯に通う「銭湯女子」など、若い世代を中心に銭湯に注目が集まっているようです。

塩谷 銭湯の数自体は減ってきてはいるんですが、若い世代の利用者は増えているように感じます。

奈緒 塩谷さんが働く小杉湯はどうですか?

塩谷 平日でだいたい200~300人、休日は500~600人お客さんがいらっしゃるんですが、その半数が若い方ですね。女性はふたり連れ、男性は5、6人のグループで来られる方も多いですよ。

奈緒 みんなで銭湯に入って、その後に女子会なんて、絶対、楽しいですもんね。そこまでがひとつのコースというか。

塩谷 スーパー銭湯と違って、銭湯にはお風呂しかないんですけど、だからこそ帰りにご飯を食べたり買い物をしたりと、地域と交流できるのが強みなんです。

地元の八百屋さんとコラボして生姜(しょうが)風呂のイベントをやったこともありますし、「この辺りで一杯、引っかけたいんですけど」とか「近くにおいしいカレー屋さんはありますか?」とかって聞かれたら、喜んでご紹介しています。

奈緒 確かに番頭さんともなれば地元のお店の情報もお詳しいですよね。

塩谷 そういう入浴後のあれこれも含めて、銭湯を「街を楽しむ場所」として使っていただけるとうれしいですね。

奈緒 常連さんになってくると、銭湯コミュニティみたいなものもできてくるじゃないですか。ああいうの、ちょっと憧れるんですよね。

塩谷 私も小杉湯の常連のおばちゃんたちとよくローカルな話で盛り上がりますよ。以前、結膜炎になって目を真っ赤にしていたら「早く、○○医院に行きなっ」って言われて、行ったらすぐに治ったりとか(笑)。

■ワイン、日本酒風呂にりんご、みかん、ぶどうも

奈緒 この前、5月5日のこどもの日に実家でしょうぶ湯をやったんですけど、ひとり暮らしだとなかなかできないですよね。銭湯ではそういうのも楽しめて、すごくいいなって思うんです。

塩谷 しょうぶ湯と冬至のゆず湯は多くの銭湯で楽しめますね。

奈緒 解禁のタイミングでボージョレ・ヌーボー湯をやっている銭湯があってビックリしました。

塩谷 こちらの梅の湯さんも本物のワインを入れていたみたいです。小杉湯で日本酒風呂をやるときは2時間おきに一升瓶を入れてます。

奈緒 お肌によさそう。

塩谷 そうなんです。あとはチャイのスパイスを入れたり、シークワサー、りんご、みかん、ぶどう、たいていのものは入れたことがあります(笑)。そういうことができるのも、大きい濾過(ろか)器がある銭湯ならではですね。

奈緒 塩谷さんは実際に番頭さんをされていて、いろいろとご苦労もあると思うのですが。

塩谷 やっぱり重労働ですし、夏は暑くて冬は寒い。夜の掃除も大変です。地方の銭湯に取材に行くと、腰が折れ曲がったおじいちゃん、おばあちゃんがひとりで頑張っている所もあって。それを見て「頑張ってなくさないでください」とはなかなか言いづらい状況です。

でも、私が絵を描いて発信することで「銭湯に行ってみたいな」と思ってくれる人が少しでも増えたらうれしいですね。

奈緒 塩谷さんの銭湯のイラストは本当に温かみがあって、楽しくて、今にも銭湯に入りたくなってきます。

塩谷 私も『のの湯』で奈緒さんがいつも必ず最初に銭湯の香りを気持ちよさげに吸い込むシーンが好きです。あれを見て、銭湯に入りたくなる人は多いと思います。

奈緒 今日もこちらに来て、靴箱の所から銭湯の香りがしてテンションが上がりました(笑)。ドラマはもうすぐ最終回なんですが、銭湯とセットでお気に入りにしてもらえるとうれしいです。

塩谷 おそらく私たちは、銭湯を家にある風呂の代わりではなく、新しい価値観としてとらえられる世代だと思うんです。そういう世代に銭湯のよさをアピールしていきたいですね。

奈緒 ところで、こちらの梅の湯さん、お隣で焼き鳥屋さんもやっているんですよね。

塩谷 そうなんです。梅の湯の若旦那のお母さんが営業されていて、湯上がりにそのまま一杯やれるんです。

奈緒 今からお風呂に入って、そのまま焼き鳥もいいですね。

塩谷 じゃあ、行ってみましょう(笑)。

■撮影協力/梅の湯(東京・荒川区)

●塩谷歩波(えんや・ほなみ)
1990年生まれ、東京都出身。早稲田大学大学院修了後、設計事務所に勤める。16年末より銭湯の建物内部を俯瞰で描く「銭湯図解」シリーズをSNS上で発表している

●奈緒(なお)
1995年生まれ、福岡県出身。数多くのドラマ、映画、CMに出演。昨年、放送されたNHK連続テレビ小説『半分、青い。』でヒロインの親友役として出演し、注目を集める

■『銭湯図解』塩谷歩波・著
(中央公論新社、定価1500円+税)
建築の図法を用い、銭湯の建物内部を精密な俯瞰図で描く「銭湯図解」。Twitter上で発表されて話題となり、今年、中央公論新社より書籍化された。

■ドラマ『のの湯』は絶賛放送中!!
全国無料放送のBS12 トゥエルビにて、毎週日曜よる7時より放送中。dTVチャンネル、ひかりTVで先行独占配信中!


©「のの湯」製作委員会