牛丼チェーン吉野家が、時短ながら1080円と安価な飲み放題店舗を導入。さらに、あまり飲みのイメージのないうどんチェーン丸亀製麺も30分飲み放題を実施するなど、"時短飲み放題"が広がりを見せている。その実態を調査してみた!
■ファストフードチェーンで"時短飲み放題"急増中
牛丼チェーン「吉野家」が5月、都心の一部店舗限定で「60分ハイボール飲み放題」のサービスを試験的に開始! 調べてみると、ほかにも「丸亀製麺」「餃子の王将」「フレッシュネスバーガー」「ケンタッキーフライドチキン」などのファストフードチェーンが、すでに一部店舗で時短飲み放題を実施していることがわかった。
なぜファストフードチェーンで増えているの? 店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏はこう解説する。
「ここ数年、ファストフードチェーンは『ちょい飲み』により、夜の時間帯の集客&新規顧客獲得を行なってきました。結果、『ファストフード店でもお酒を楽しめる』という考えは定着してきましたが、一方で、『ちょい飲み』では大きな売り上げの伸びが期待できないという問題点も。そこで次の一手として時短飲み放題を始める企業が増えてきたと考えられます」
店側の採算は取れるの?
「ファストフード店の飲み放題は、別途料金のかかるフードと合わせて利益を出せればいいという考え方が主流。そのため看板商品にマッチする酒にしぼって提供しているケースが多いのも特徴で、それが楽しめるポイントでもあるといえます」
ということで、各店に行って実態を調査してみよう!!
■吉野家は60分ハイボール飲み放題!
まず記者が訪れたのは「吉野家 JR神田駅店」。入り口には「吉呑み」と書かれた提灯があり、2階は17時以降、飲酒客専用フロアとなる。
記者「1階はカウンターで黙々と牛丼を食べる感じですが、2階はテーブル席メイン! カウンター席も窓側にあり、店内に背を向ける形で座れるので、ひとりでも落ち着いて酒を楽しめそうです」
気になる飲み放題のメニューはハイボール+おつまみ一品で1時間1080円! おつまみは「から揚げ皿」と「牛皿」から選べる。通常だとハイボールは350円、牛皿は330円なので、3杯飲めば元が取れる計算だ。
記者「ハイボールは炭酸もしっかり効いていてウマい! 安居酒屋にある気の抜けたハイボールじゃなくて安心」
グラス交換制ですぐにおかわりを提供してくれて、ドリンク待ちストレスもなし。満足度の高いサービスなだけに、仕事帰りのサラリーマンでほぼ満席! ここで、上司(40代)と部下(20代)と思われるサラリーマンふたり組に話を聞いてみると。
上司「仕事のちょっとした打ち合わせなんだけど、1時間っていうライトさがいいなと。最近の若者(こいつ)は長い飲み会をいやがるし、こっちも安くすんでありがたい」
部下「絶妙な時間設定で助かります!(笑)」
どちらの立場からも好評! 「ファストフード店の時短飲み放題はビジネスマンにとって人間関係構築ツールとなりえる」と話すのは、『気配りの正解』の著者でビジネスコラムニストの後田良輔氏だ。
「酒を飲むと人間関係が親密になることはわかりつつも、時間的にも予算的にもその機会をつくることが困難になっている昨今、"ランチ以上、飲み会未満"という絶妙な感じで、時間も予算もコンパクトにまとめてくれる非常に頼れる存在といえます」
だが、注意点も。
「良くも悪くも"お手軽"な印象なので、相手に『自分は適当な扱いをされている』と思われる危険性もあります。誘う際は『今日はサクッと行こう』『ニュースで見て気になったんだけど』などの理由を添えましょう」
ぜひうまく活用したいサービスだが......現在この飲み放題を注文できるのは都心の2店舗のみ。今後増えていく可能性は? 吉野家ホールディングスの広報に聞いてみると。
「『閑散とする夜の時間帯を活性化したい』『サブスクリプション(定額制サービス)が世の中的にはやっている』という2点から実験的に開始したばかりのため、今後の展開はまだ未定です」
酒飲みとしては、展開が広がるとうれしいなぁ。
■丸亀製麺は超時短30分飲み放題!
続いて訪れたのは「丸亀製麺 渋谷メトロプラザ店」。ここではなんと、吉野家の半分の時間、30分飲み放題を実施中! 1000円で生ビール、ハイボール、レモンチューハイ、焼酎(麦・芋)飲み放題に加え、「うどん」or「親子とじ」、さらに惣菜&天ぷらから好きな2品が選べる(ほかにも1200円の油淋鶏セット、1300円の塩焼鳥セットなど、より酒のつまみに特化したメニューもあった)。
記者「うどんにえび天を乗せて枝豆もつけて、生ビール飲み放題で1000円!! かなりお得だけど、さすがに30分は短すぎる気が......試してみましょう!」
店内に入ると、客たちがセルフで次々とお酒のおかわりをしており、多くが飲み放題を注文しているようだ。
記者「自動サーバーで注がれる生ビール、泡がいい感じですね」
席につくと店員がテーブルにタイマー付きの立て札を設置。ボタンが押され、30分のカウントダウンスタート! 一杯、二杯と酒が進み......。
記者「残り10秒!! ここで最後の一杯!」
結局生ビールを4杯飲み、十分満足。店のあちこちからタイマーの鳴る音が聞こえるが、みんな程よく酔い、満足げな表情を浮かべていた。
独特な高揚感のある30分飲み放題だが、今後の展開は? 丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスの広報に聞くと。
「現状は車利用のない都心部の約10店舗で試験的に運用中です。一番の売りはこの価格で生ビールが飲み放題であること。多くのお客さまにご好評いただいておりますが、今後の展開は未定です」
異例の安さと時短の試みだけに先行きは不透明だが、定着にぜひ期待!
■餃子の王将は60分サワー飲み放題!
続いては「餃子の王将」。店舗によってサービスはさまざまで、食べ飲み放題を実施している店舗などもあるが、東京・戸越(とごし)銀座店では、サワーに特化した60分飲み放題を754円で提供している。
ウーロンハイやレモンサワーはもちろん、巨峰サワー、グレープフルーツサワー、さらにシークワーサーサワーまで飲み放題の充実っぷり。
記者「ビールやハイボールを飲めない人も増えている今、若者にウケそうですね!」
店内を見渡すと、ひとりでハイペースなおかわりを続けている20代サラリーマンを発見! 話を聞くと。
「いつもひとりで来ています。満足するまで飲んで、ラーメンでシメ......これを1時間でやるスピード感がクセになっちゃいまして」
店を変えず、安価にシメのラーメンまで楽しめるのはたしかに効率的だ!
■フレッシュネスは60分ワイン飲み放題!
ワインに特化した60分飲み放題を1060円で提供しているのは「フレッシュネスバーガー 神田須田町店」。赤・白ワインともに樽(たる)からセルフで注ぐシステム。ハンバーガーといえばビールの印象だが。
記者「生ハム60分食べ放題540円(皿交換制)もあるんですね! セットで注文すればワイン&生ハムが1時間食べ飲み放題......これは今まで夜の時間帯にハンバーガーチェーンに来なかった客も獲得できそう!」
実際、ワインを飲んでいるデート客や女子会グループが多数。また、この店舗では大人数でワイン飲み放題を注文するほど、おつまみや飲み放題時間延長などのサービスが受けられる仕組み。オシャレな雰囲気なので、女性社員を含む大人数の飲み会などでも使えるかも。
■ケンタッキーは90分飲み放題!
最後に訪れたのは、90分飲み放題を1600円で提供している「ケンタッキーフライドチキン 高田馬場店」。店内にはサラリーマングループはもちろん、ファミリー客もちらほら。
記者「90分はお酒を飲まない子供たちも我慢できる絶妙な時間設定ですね!」
気になるメニューは?
記者「ビールだけでもプレモル、プレモル香るエール、アサヒ生、ハートランドと4種類で、各種サーバーがあります!! さらに、ハイボールも通常のハイボールのほか『カーネルハイ』(コークハイ)、『今月のカーネルハイ』(フルーツのフレーバー付きコークハイ)の3種類が。ワインも赤白ありますね!」
チキンとの相性を全種類比較したくなるお酒の種類の多さ! 90分間存分にチキンと酒を楽しんだ記者は。
記者「ファストフードチェーンにいることを忘れるクオリティでした! あと30分長かったらベロベロでしたね」
時短のおかげで酒の失敗も減るかも!? 皆さんもぜひ一度足を運んでみては。
*紹介したサービスは店舗限定メニューです。また、店舗により価格が異なる場合もあります