「タピる」なる造語もできるタピオカブーム

「日本全国で毎日、10店舗がオープンしている」ともいわれるほど大ブームが続いているタピオカ。「タピる」なる造語もできるほどだが、オッサンがうっかりタピろうものなら、女子の冷たい視線が......。

それでも飲みたいオッサンはどうタピればいいの?

* * *

■オッサンはタピっちゃダメ!?

タピオカが止まらない。今や東京には300を超えるタピオカ店が軒を連ね、今なお増殖中。名古屋では人気店のオープンで6時間待ちの行列ができたという(正気か!)。

ネットではタピオカ店経営者による「原価が安くてボロ儲け」といった手記から、「実は暴力団の資金源になっている」といった告発まで、もはやこの黒玉のニュースを目にしない日はないほど。

そんななか、SNS上ではちょっとした事件が起こった。"若い女性"とされるユーザーからのこんなつぶやきがネットの海に放流されたのだ。

「近所に最近できたTapistaってタピオカ屋さん、美味しいけどなんか厨房におじさん居てちょっと...割と...嫌だった(略)」

このつぶやきは即座に「おじさん差別だ」と大炎上騒ぎに発展した。実際に人気店の行列を見ても、男性の単独客などはまれ。実際に並ぶと、脱臼しそうなほど肩身は狭い。やっぱりオッサンはタピっちゃダメなの!?

「いや、別にぃー、アタシ的にはおじさんがタピオカ屋さんにいても全~然、いいと思うんですよぉ。でもぉ、行列が長くなるのは単純にイヤ。このおじさん、本当にタピ好きなの?って、顔ガン見しちゃうんですよぉ」(人気店で並んでいた女子大学生)

......圧倒的な疎外感なのである。それでも飲みたいオッサンはどうタピるべきなのか? 人気店から、こんなところに「ポツンと一軒」まで、死力を尽くしてタピ活リポートをお届けする。

■娘に土産を頼まれた父のフリして正気を保つ

最初に向かったのはタピオカミルクティーの発祥店といわれる「春水堂(チュンスイタン)」。1987年に「中国茶をより現代風に」とタピオカ入りのミルクティーを考案し、90年代に台湾で国民的人気を得た後、13年に東京・代官山に初上陸。現在までに13店舗を展開している。

始祖の風格を醸し出す「タピオカ鉄観音ミルクティー」に「タピオカほうじ茶ミルク」「タピオカ豆乳紅茶」、そして季節限定の「タピオカマンゴーミルクティー」と種類も豊富。

店内は台湾のレストランを思わせる落ち着いたたたずまいなのでオッサンへの敷居は低く、気恥ずかしさも少ない。テイクアウト専門のスタンド店「TP TEA」も含め、初心者でも「とりあえず行って大丈夫」な店だ。

この春水堂が上陸した後、台湾の人気タピオカ店が続々と日本に上陸。インスタ映えとの相乗効果をもたらして、今日の第3次タピオカブームが始まったといわれる。その現ブームを引っ張るタピオカ界のエース的存在が「貢茶Gong cha(ゴンチャ)」。現在、8都府県36店舗を展開する最大規模の有名店だ。

女子であふれる渋谷スペイン坂店に向かったが、回転は意外にも速く20分ほどでレジへ。ここではベースのお茶の種類(ブラックティー、ジャスミングリーンティー、ウーロンティーなど4種)に甘さ、氷の量、そしてトッピング(タピオカもここで注文)を選ぶのだが、最初は戸惑い「じ...自分はタピオカミルクティーを......」と高倉健ばりに不器用になってしまう。

組み合わせは無限、がウリだが、慣れないオッサンにはちょっと大変。でも、三温糖を絡めた独特の大粒黒タピオカはうまかった。

ポップなデザインとカラフルな看板が渋谷センター街でも目立つ「CoCo都可(ココトカ)」は、場所柄、低年齢層の女子率が高く、並ぶにはそれなりに勇気が必要。常に誰かに二度見されてる気分にもなる。

ミルクティーやチョコレート、乳酸菌シリーズやフルーツなどのドリンクが40種類以上。トッピングではプリンや塩クリームなどもあるが、オッサンにはちょっとポップすぎる感も。

同じく、日本発のタピオカ屋として03年にオープンした「Pearl Lady(パールレディ)」も『ポップ"パール"カルチャー』を標語に「女のコに愛される文化をつくっていく」というノリ。カラータピオカやチョコ入りのチョコタピも正直、少し難易度が高かった。

そして新鋭の"若年層ポップの雄"といえば「おじさんが居て嫌だった」で話題になった前出の「Tapista(タピスタ)」

愛らしい店内にグラデーションの美しいドリンク、そしてSNS撮影用のフォトスポットなど、かわいらしさ全開で"バエ"を求める女子にはうってつけ。だが、オッサンにとってはまさに女性専用車両でのハンズアップ状態。「娘に土産を頼まれた父」を演じて正気を保った。

「東季17(トキセブンティー)」もネコのイラストのロングボトルに色鮮やかなタピオカティーのラインナップが豊富で、こちらもまさに"バエ"向きではあるが、本店の上野・アメ横店を皮切りに、巣鴨はとげぬき地蔵尊の前、大塚はピンサロ通りに。さらに新小岩、船橋と飾らない出店攻勢には個人的に好感。

そして今、最も行列のできるタピオカ店のひとつといわれるのが「THE ALLEY(ジ アレイ)」。名古屋で6時間待ちの行列ができたのはここ。シカのイラストを前面に出したシックな店構えはジビエ好きのオッサン的にも親近感ありだが、ほぼほぼ女性の長すぎる行列は意識が遠のく感あり。

今、最も行列のできる人気店のひとつ、THEALLEY。灼熱の太陽の下、意識が遠のきながらも女子に交じって行列に並ぶ。30分後に手にした黒糖タピオカ抹茶ラテは、それはそれはおいしゅうございました

こうした人気店には必ず行列の整備をしているおじさん警備員がいるのだが、目が合うと会釈された。まるで敵国で遭遇した捕虜同士のようだった。

だが、看板商品の「ロイヤル No.9 タピオカミルクティー」や「黒糖タピオカ抹茶ラテ」はさすがににうまい! その上、ココアチップとミントで土と樹を表現した「盆栽タピオカミルクティー」や氷が解けて文字どおりの世界をつくる「オーロラドリンク」などは、オッサンでもうっかり写メしたくなるほど見事な"バエ"だ。

ちなみにタピオカミルクティー1杯のカロリーはラーメン1杯分にも匹敵するほど超高カロリーという噂もささやかれているが、これは店によって大きく変わる。

例えばファミリーマートの至ってノーマルなタピオカミルクティーであれば1杯132kcal。もちろんここに黒蜜だ、ホイップだ、プリンだと加えていけば500kcalだ700kcalだと増えていくのは必定。砂糖の量を調整するなり自分の血糖値は自分で守るしかない。

そういう記者も、連日の「タピ活」のせいか、疲労で免疫力が著しく落ち、数日間、入院することになってしまった。毎日、女子高生と共に行列に並び続けた精神的ストレスも原因なのか。

点滴を受けながら、管の中をタピオカがゴロゴロ転がってくる悪夢にうなされる。「タピ」という字が「死」に見えてきたので、いったん、休憩。

■ラーメン、カレー、すし屋もタピってる!

そんなわけで退院後は「バエない、さえない。されど、おじさんのメンタルにも無理なく楽しめるタピオカ店」を探すことにした。何も原宿の人気店に並ばずとも、今やタピオカの手はタピタピとわれわれに近づいてきているのだ。その象徴がチェーン店だ。

デニーズが「クリーミーパールミルクティ」ならば、ジョナサンも「もっちりつるん!タピオカミルク抹茶/コーヒー」で応戦。ロッテリアはミルクティーだけじゃなくシェーキにもタピオカを投入した。

さらにはウェンディーズ、フレッシュネスバーガー、ミスド、タリーズ、プロントなどでも手軽な"ノープレッシャー系タピオカドリンク"が増殖中なのだ。あぁ、なんか落ち着くなぁ。

その一方、昨今では「こんなところにタピオカ!?」な店に遭遇することも少なくない。高田馬場の「旨辛ラーメン表裏」では、ラーメンを注文した人に限り「450円でタピオカミルクティーおかわり自由」をこの3月から開始。二郎インスパイア系のラーメンとタピオカの夢の競演が実現したのだ。

高田馬場の旨辛ラーメン表裏では、二郎インスパイア系のラーメンとタピオカの夢の競演が! しかも、ラーメンを注文すれば、タピオカミルクティーは450円でおかわり自由!

「うちはもともと、麺にタピオカを練り込んでいたことに加え、最近、高田馬場がタピオカ激戦区になったことでニーズがあるのかなと思い切ってタピってみました。男女共に評判はすごくいいです。持ち帰りは女性が多いですが、店内では男性がよく飲まれてますね」(同店・松下道則店長)

辛さを中和するには水よりも乳製品や甘味が効果的とされるが、実際に味わってみると表裏の旨辛ラーメンとタピオカミルクティーの相性は世界最高峰ではないか、とすら感じられた。その上、お代わり自由だなんて(涙)。

辛いといえばカレーも忘れちゃいけない。「インドだってタピオカの本場よ」というのは、東京都内に28店舗を展開するインドカレーの「ターリー屋」のインド人店員さん。

こちらでは10年以上も前からタピオカドリンクを提供しており、一番人気のマンゴーラッシータピオカは、辛いカレーほどよく映えるという鉄板のご相伴。350円(税込)と安価で飲めるのもうれしい。

ラーメン、カレーとくれば、すしだって黙っちゃいない。なんと回転ずしの「かっぱ寿司」もタピオカ台湾ミルクティーを提供しているのだ。ご飯との相性をどう感じるかは人それぞれだろうが、タピオカをイクラの代わりに軍艦巻きにのせれば、酢飯とタピオカの新世界が広がる......かもしれない。

さて、原宿、表参道、渋谷と並んで日本有数のタピオカ店が集まりながら、オッサンでも堂々とタピれる場所がある。それは神奈川・横浜だ。

現在、中華街にも数多くの新店ができているが、オススメしたいのは「QQ屋台屋」。約20年前から販売しているタピオカミルクティーの気取らない味は、まさにタピオカドリンクの原風景ともいえる。

さらに注目したいのは「ららぽーと横浜」にあるすかいらーくグループの新たな食べ放題店「ザ ブッフェ 包包點心(ポウポウテンシン)」。台湾小籠包などの点心ほか、ドリンクバーではミルクティー、抹茶ラテやほうじ茶ラテなどに、大皿に置かれたタピオカが入れ放題。そう、ここでは誰に遠慮することなく、溺死するまでタピれるのだ。

横浜スタジアムも穴場だ。今年、ライトスタンド3階に新設された「BAYSIDE ALLEY」ではタピオカのミルクティーとボールパークコーヒーの販売を開始。「黒星は縁起悪い」といわれつつも、女子をはじめ、タピオカと縁のなかった中高年にも好評を得ているとか。

以上、オッサンによるさまざまな「タピ活」の可能性を探り、週プレ編集部で報告を終えた今、筆者の前にはコーヒーではなく、タピオカドリンクが置かれている。聞けば集英社内の喫茶室でも今年からラインナップに加わったのだとか。

ひょっとしたら「おじさんがタピ活なんて恥ずかしい」なんて感覚は今だけで、じきに平和で平等なタピオカ社会が到来するのかもしれない。新元号を「タピオカ」と予想したJKたちの感覚もまんざらでなかったのかも。