「自己肯定感の弱い女性って、男性にむやみに下から来られると『こんな私にヘコヘコするような男』と見限ってしまうものです」と語るいつまちゃん 「自己肯定感の弱い女性って、男性にむやみに下から来られると『こんな私にヘコヘコするような男』と見限ってしまうものです」と語るいつまちゃん

性をこじらせた男女の生態を描いた漫画『来世ではちゃんとします』が、恋に悩む現代女性たちから「共感できる」と話題沸騰中。作者のいつまちゃんはTwitterで14万人近くのフォロワーを持ち、恋の悩みを募集すると一日で300件以上の相談が女性のみならず、男性からも殺到するという人気ぶり。

性の乱れを描いた作品が多くの人の心をつかんでいるのはいったいなぜ? ファンとの交流をリアルとウェブ上の両方で積極的に行なう彼女に、悩める現代女性たちの恋愛・セックス事情、そんな時代に男性がモテるための方法を聞いてみた。

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──作品中には性に問題を抱える人物がたくさん登場しますが、実話をもとに描かれているのでしょうか?

いつま 登場人物や出来事はフィクションです。ただ、登場人物は全員自分の感情の一部だとも思っています。性に奔放な桃ちゃん(大森桃江)も、異性に対して達観した視点を持つクールな松田(松田健)も、過去に彼女を奪われたトラウマから処女しか愛せなくなった林(林勝)も、みんな人生で味わった感情の一部から成り立っています。

あ、桃ちゃんの6人のセフレ、「Aくん~Fくん」は、過去に私が片思いしていた人や元カレをアレンジしたキャラだったりするような、しないような(笑)。

──青年漫画誌『グランドジャンプ』で連載されていますが、女性は作品のどこに惹(ひ)かれていると感じますか?

いつま ファンの女性たちからよく聞こえてくるのは、セフレに恋愛感情を持つ桃ちゃんへの共感の声。「もろ私だ......」という方もいれば、セフレはひとりもいないけど気持ちはよくわかりますという方も。

登場してくる桃ちゃんのセフレは"大本命""駆け引きを楽しむ相手""性欲用""かわいがりたい子""同じコンプレックスを持つ同士"......とそれぞれ感情の向け方が異なっているので、セフレに限らず意中の男性がいる女性は誰かしらとの関係性に共感してくださるのだと思います。

作品を読んで「やっとセフレと別れる決心ができました」と報告してくれた方もいて、セフレの男性との関係を客観的に考える手助けができたかな......と感じました。

私は作中でセフレの存在を含め、善しあしについて一切語るつもりはありませんが、嘘のない男女の心を描くことで「こんな生き方もあり」とこじらせた現代人を肯定していきたいです。

──自分の周りにはそんなにセフレを抱えている女性が多い印象はないのですが......。

いつま まぁ男性に面と向かって言うものではないですからね(笑)。いつか本命になりたくてセフレになってしまう女性や、単純に性欲が強くてセックスを楽しんでいる女性は、今と変わらず昔から当然いると思います。

ただ、今はSNSの登場によって、そういったセフレ経験を「悲しいネタ」や「夜のあるあるネタ」として赤裸々に打ち明ける人が急増したので、結果として、そんな投稿を普段から目にしている女性たちがセフレを持つことに抵抗が少なくなっていると感じます。

──確かにマッチングアプリの登場などで出会いの場も昔より圧倒的に増えています。ではそんな今、女性からモテる男性像は?

いつま ファンの方たちからは「私のセフレは松田に似ている」という声が非常に多いので、彼は今の時代にセフレをつくれる男性の象徴かもしれません。

ガツガツした男性や明るいお祭り男が昔はモテていたと思いますが、現在は草食系でも根暗でもいいので、女性に寄り添うコミュニケーションが取れる男性がモテています。マメに褒めたり、黙って抱き締めたり、女性が求めている言葉や行動をサラッと的確に選べる男性です。

もうひとつポイントがあって、決して下手(したて)に出ないことも重要です。主に自己肯定感の弱い女性って、男性にむやみに下から来られると「こんな私にヘコヘコするような男」と見限ってしまうんです。情報の多いこの時代、女性も男性も自己肯定感が下がりがちです。

そんななかで堂々とした人ってそれだけでより魅力的に感じられて得なんです。"優しくしてくれるのに、手の届かない彼"が、現代においてたくさんの女性を悩ませています。

──なるほど。ではセフレより、まずは恋人や結婚相手が欲しいという男性はどうすれば評価を上げることができますか?

いつま 同じく自信を持つことです。そのために自分に付加価値をつける努力をすること。例えば、高収入男性はモテます。お金がどうこうより、それだけの経済力を持てる甲斐性(かいしょう)が魅力的なんです。

お金に限らず、今の時代、SNSやYouTubeで多くのフォロワーを獲得できると世界が変わるかもしれませんね。昔だったら絶対モテないような男性が、配信を通してフォロワーを集めて、彼女をつくりまくったりしているのを実際に見ています。

「注目を集められる」ということはいつの時代も恋愛において大きな付加価値となります。もちろんフォロワーを獲得するのも簡単ではありませんが"一芸"や"ユーモア"を隠し持っている男性は、ぜひチャレンジしてみるべきだと思います!

──先生も現在Twitterで14万人近くのフォロワーを抱えています。

いつま 私はTwitter上で書いていた漫画がたまたま編集者の目に留まって連載をスタートできたので、フォロワーの皆さんにはとても感謝しています。賞レースや持ち込みでうまくいかない人も、フォロワーが3万人を超えれば出版社からどんどん声がかかる。

チャンスの多い時代ですよね。ビジネスでも恋愛でも、フォロワーが増えれば逆転できる。もちろん、出るくいは打たれる。目立つことで匿名の中傷を受けやすくなるデメリットもありますけどね。

──これからも"男女の性"を扱う作品を描き続けるのでしょうか?

いつま 私、冗談でなく、本当はスピルバーグ監督作品のようなスケールの大きな作品を描きたいんです。でも、きっとこれからも半径5m以内の人間関係や性にまつわる話を描き続けることになると思います。

それが私の得意分野なので。やっぱり「やりたいこと」と「できること」って違う。これを理解したから私はプロの漫画家になれたし、自分の長所を見つけて肯定し続けていくことで人生は好転するものだと思います!

●いつまちゃん(ITSUMACHAN)
『来世ではちゃんとします』のほか『東京ウォーカー』にて『都合のいい私の生活』を連載中。初めての漫画執筆は、多摩美術大学の卒業制作にて。きっかけは当時付き合っていた彼氏に、自分でない本命の彼女がいると発覚したこと。その悲しみをデトックスするため、自分の恋愛を40枚の漫画に落とし込んだ。その後、社会人になってからもTwitterで漫画を発表し続け、2017年商業誌デビューを果たす

■『来世ではちゃんとします』
(集英社 既刊2巻 各880円+税)
承認欲求と好奇心と寂しさのはざまで、6人のセフレと愛を営む桃ちゃん。彼氏いない歴=年齢のボーイズラブ大好きギャル梅ちゃん。女たらしのクールなイケメン松田くん。トラウマから処女しか愛せなくなった林くん。風俗の女性にガチ恋中の檜山くん。同じ会社内で性をこじらせた男女たちの生態を赤裸々に描写! 現世は諦めた社畜たちの性生活ぶちまけコメディ! 『グランドジャンプ』にて好評連載中で、最新第2巻が絶賛発売中!

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