木々がうっそうと茂る中に隠れたバジャワの天然温泉にやってきた 木々がうっそうと茂る中に隠れたバジャワの天然温泉にやってきた

インドネシア・フローレス島の秘境バジャワで、さっそく少数民族の村を訪れた私たち。

空港で偶然に知り合ったルイーザ(オランダ人)とマーク(イギリス人)と私(日本人)の3人は、現地人ヨハン(インドネシア人)の運転で今度は天然温泉へと連れていってもらうことにした。

有名なのは空港近くのムンゲルダ温泉で、てっきりそこへ行くのかと思っていたが私たちが向かったのは少数派民族の村からほど近いマラナゲ温泉というところ。

山の中いきなり現れた売店の前に車を停め、生い茂る木々の間を進んで行くと、その隙間からモヤモヤと白い湯気が見えた。

「おお、あったぞ! あれだ! 予想はしていたけど、ワイルドだなぁ......(笑)

そこはただただ自然の中といった感じで、ゴツゴツした岩の間を流れる小さな滝や川に人々が浸かっていた。

一見ただの川だけど、これが温泉! 一見ただの川だけど、これが温泉!

現地人らしき人が大人から子供まで10人程度だろうか、それから観光客と思わしき欧米人がビキニ姿で写真を撮っている。

岩の上には服が脱ぎ散らかしてあり、家から持ってきたであろう洗面器のようなものが置かれ、その中に石鹸やら歯ブラシやらが入っていた。

子供ははだかんぼうで、大人は水着や下着、服のまま入っている者もいる。周りには更衣室と思わしき小屋があり、奥にはここを管理しているの人の家だろうか、家屋があった。

「お金はひとり10000ルピア(約80円)ね! 後払いで良いから、さぁ、行っておいで! 僕は奥で待ってるね」

ヨハンにそう言われ、服の下に水着を仕込んできた私たちはおもむろに服を脱ぎ岩の上に置いた。

貴重品を置くような場所はもちろんなく一応洋服の下に隠してみたが、なかなか気が気ではない。足場も悪いので万が一の時も追いかけることはできないが、一応目が届く範囲に置き、川べりへと近付いた。

お湯に触れると、「アチチ! けっこう熱いじゃん!」体感では45度くらいあるだろうか、いざお湯に片足を入れるが熱くて動けない。

服のまま入っている現地の女性や半裸の男性 服のまま入っている現地の女性や半裸の男性

天然温泉を管理しているらしき家屋 天然温泉を管理しているらしき家屋

「マリー! こっちこっち! この辺はお湯と水が両方湧き出てて熱くないよ!」

岩の足場を注意深く進みルイーザとマークのいる方へ向かうと、そこには冷たい水も流れてきて、ちょうどよくお湯と混ざり合っていた。

マークとルイーザの間の木がまるで男湯と女湯を分けているようだけど、混浴です(笑) マークとルイーザの間の木がまるで男湯と女湯を分けているようだけど、混浴です(笑)

「ふぁぁぁ~。イイ湯だなぁ♪」

久々お湯に浸かるのは気持ちが良く、やっぱり日本人だからかなぁなんて思ったりする瞬間だ。全身の毛穴が開いた体をこすると、旅のアカが川に流れていくのがわかる(なんだか汚くてごめんなさい。でもワイルドな状況下なので許してください)。

それにしても、さっき会ったばかりの人達と一緒にお風呂に入っているなんてなんか変な感じ......。

というわけでここで、今さらの自己紹介ターイム。オランダ人のルイーズは「今回はトータル5ヵ月の旅。専門学校に4年通ってからナースのお仕事をしていたのよ。今後の進路に迷っているけど、きっとまた看護師に戻るかな」

イギリス人のマークは「半年くらいかけて南インド、インドネシア、あとニュージーランドを周る予定。バックパックは18kgでスタートしたけど荷物増えちゃって......」

私は「世界一周を日本と行ったり来たりしながら5年以上、120国以上行ったかな。日本帰った時はいっぱい仕事して、旅資金がたまったら出発、の繰り返し!」

そんな話をしながら20分くらい浸かっただろうか、だいぶ体が温まったところで、ずっと荷物を遠くから見張っているのも気疲れするので私は先に上がった。

マークとルイーザはその後も随分と長く浸かっていて、プールのようなもんだと言っていたが、お風呂という感覚ではないんだろうな......。

旅友や現地の人々と天然温泉を楽しむ 旅友や現地の人々と天然温泉を楽しむ

バジャワで特にやるべきことふたつ(少数派民族の村と天然温泉)を終えて、誰もいなかった宿へ戻ると、やっと宿主とご対面。

「あ、初めまして。あの、さっき誰もいなくて、でもドアが開いていたので勝手に荷物だけ置かせてもらい、今帰ってきました。そして明日この村を出ます......」

バジャワにはホームステイタイプの宿が多く、私はマルセリーノという人のお家に宿泊する。奥さんと子供と3人+1匹の犬と暮らしていて、宿泊客用の部屋はふたつ、自分たちはリビングの横にあるスペースで寝ていた。

マルセリーノはドレッドヘアで、ミュージシャンをやっていることもあり見た目はレゲエ風の一見派手な感じであったが、あまりしゃべらず静かで優しそうな男性だった。

近くのレストランでライブをするからと誘ってくれたが、私はルイーザとマークと夕飯に行く約束をしていたので、残念ながら彼の音楽を聴く機会は逃してしまった。

マルセリーノ一家。どう見ても優しくて温かい家族って感じ マルセリーノ一家。どう見ても優しくて温かい家族って感じ 猫のような動きをして甘えてくる犬 猫のような動きをして甘えてくる犬

再びルイーザとマークと合流すると、肉に飢えていた私とマークはポークカツレツを、ルイーザはベジタリアンなのでガドガドを注文。

インドネシアはイスラム教90%だが、ここフローレス島に関してはカトリック90%なので私は遠慮なく豚にかぶりついた。うん、お肉はそんなにおいしくないけど、まぁ良しとするか。

ちょっと揚げすぎた感じのポークカツレツ ちょっと揚げすぎた感じのポークカツレツ

ガドガドとは温野菜に甘辛いピーナッツソースをかけたインドネシア料理で、「寄せ集め、ごちゃ混ぜ」と言った意味がある。ベジタリアンメニューと聞くとなんだかヘルシーそうに聞こえるけれど、さすが寄せ集めただけあってけっこうボリューミー。

茹でたキャベツとにんじんの上にドカンとゆでたまごが丸々乗っていて、トマトやキュウリの生野菜に、揚げたエビせんべいのクルプック、それからテンペが乗っていた。

テンペは大豆を発酵させたものでブロック状になっている。"インドネシアの納豆"と言われていて、たしかにほんのり納豆のような味がするが、日本の納豆のようにネバネバしていないので外国人にも食べやすい。

食生活が偏りがちな旅先で、安くて栄養価の高い現地の食べ物があるのはとてもありがたいものだ。

ガドガド。温野菜に甘辛いピーナッツソースをかけたインドネシア料理 ガドガド。温野菜に甘辛いピーナッツソースをかけたインドネシア料理

テンペ。大豆を発酵させた テンペ。大豆を発酵させた"インドネシアの納豆"と言われる食べ物

それから「混ぜる」と言えば、インドネシアにはナシチャンプルというご飯にいろいろな食材が添えられた食べ物があるが、このチャンプルも「混ぜる」と言う意味。どうしたって沖縄を思い出さないワケにはいかないけれど、まさにインドネシア語が海を渡って来たんだとか。世界はつながってるね。

他にもインドネシアにはタフという豆腐を揚げた食材、つまり日本でいう厚揚げ豆腐のようなものがあり、インドネシアは日本人の食べやすいものが多いと感じる。バジャワのような秘境に来ても、日本人は食生活で困らないだろう。

お腹を満たし宿に帰ると、

「今なら"温かいお湯"が出るから! シャワーどうそ!」

この辺りはさすが秘境といった感じ。さっき温泉に浸かったばかりだが、せっかくの"温かいお湯"だというので、浴びさせていただくことにした。

「ふはぁぁぁ~。長い1日だったなぁ」

なんだかやっとリラックス。普段シャワー派だし貴重品も持ち込める安心感で、私にとっては温泉よりもホッとするバスタイムかもしれない。

......と思ったのもつかの間、シャワー室の壁に蛾がとまっているのを発見し、再び緊張するハメに。

忙しない秘境の旅であった。

シャワーヘッドはなかなかナイス シャワーヘッドはなかなかナイス

【This week's BLUE】
秘境バジャワの夜空。ヤシの木があると絵になるのはなんでだろう。

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第234回「死者の魂が帰る3色の神秘の湖でモヤモヤ」

●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】

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