アメリカンSUV専門ブランドの最もハードコアなモデル、ジープ「ラングラー・アンリミテッド・ルビコン」

悪路走破性で男心をくすぐるジープ。そしてオサレSUVとして一世を風靡したイヴォークの新型が登場。気になる実力は!?

ということで、自動車ジャーナリストの竹花寿実(たけはな・としみ)ががっつり試乗した!

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■世界中でSUVが人気のワケ

もう何年も前から「SUVはかつてのセダンに代わる存在」といわれ、実際今や世の中はSUVだらけ。コンパクトクラスからラグジュアリークラスまで、国産、輸入車ともSUV人気は勢いを増すばかりである。

これほどまでにSUVの人気が高まった最大の理由は「デザイン」だ。かつてのSUVは、もともとピックアップトラックをベースに生まれたクルマだっただけに、商用車的な印象が強かったが、初代トヨタRAV4や初代メルセデス・ベンツMクラスなどの影響で、世界中の自動車メーカーがスタイリッシュなSUVを次々に投入した。

また、アイポイントの高さによる運転のしやすさも、一度経験してしまうとやめられない。ミニバンを買ってみたものの、3列目をほとんど使わなかった経験からSUVに乗り換える人も多い。今やSUVを用意していないブランドを探すのが難しいほど。

これほど猫もしゃくしもSUVという状況になると、いざ自分がクルマを選ぶとき、あまりに多い選択肢が頭を悩ませる。経済性を考えれば売れ線の国産モデルだが、それじゃあ、つまらない。せっかく大枚はたいて手に入れるのだから、個性的でカッコいいほうがいい。今回はそんな最新SUV2台を紹介したい。

まずはジープ・ラングラーだ。「4WDといえばジープ」と思い込んでいる人もいるほどその名を知られているアメリカンSUV専門ブランドの最もハードコアなモデルがラングラーだ。

第2次世界大戦中にアメリカ陸軍の要請でウィリス・オーバーランド社が開発した小型4WD車をルーツに持つラングラーは、1987年に初代がデビュー。現行モデルは4代目で、2017年11月にLAオートショーで発表。日本市場には昨年10月に導入。

ボディタイプは、2ドアのショートボディと4ドアの「アンリミテッド」の2種類。今回はそのアンリミテッドの最強グレードである「ルビコン」の実力を、富士山麓のオフロードコースで体験した。

ラングラー・アンリミテッド・ルビコンは圧倒的な悪路走破性能を備えている。価格は588万6000円

オフロードコースで対面したラングラー・アンリミテッドは、その威風堂々としたルックスが、いかにもジープらしくてカッコいい。往年のジープCJシリーズを継承したデザインは、先代から変わっていないように見えるが、この機能美とアメリカンテイストにあふれたネオクラシックなデザインこそが最大の魅力だ。

だが中身は最新テクノロジーが満載だ。メーターパネルに7インチのフルカラーインフォメーションディスプレイが備わるほか、インフォテインメントシステムには最新世代の「Uconnect(ユーコネクト)」を搭載し、Bluetooth機能に加えてApple CarPlayやAndroid Autoにも対応。USBポートも前後シートに用意され、552W、12チャンネルのアルパイン製プレミアムオーディオスピーカーも装備するなど、至れり尽くせりだ。

走りのほうも格段に進化している。284PSと347Nmを発揮する改良型3.6リットルV6DOHCには、8速ATが組み合わされる。また、最終減速比4.100のローレンジを持つ副変速機を備えた、ルビコン専用の「ロックトラックフルタイム4×4システム」で4輪に駆動力が配分される。

加えて後輪のみ、または前後輪のディファレンシャルを任意で直結状態にできる前後輪ディファレンシャルロックを装備。さらにはフロントスタビライザーを任意に解除することで、フロントアクスルをより柔軟にストロークさせることが可能になる「電子制御式フロントスエウィバーディスコネクトシステム」まで搭載。もちろんボディ・オン・フレームの車体構造や前後リジッド式サスペンションなどは、伝統を踏襲している。

強力な4WDシステムや前後デフロックなどを駆使すれば、どんな悪路でも走破できそうな気になる

その走りは、えも言われぬ濃厚さだ。4×4ローレンジに入れてしまえば、BFグッドリッチのマッド&テレインタイヤが地面をガッチリとつかみ、まるで壁のような登坂路でも、何事もなかったかのように登り切ってしまう。低速であれば低速であるほど、4WDシステムの機械としての働きぶりが感じられるのが面白い。速さが命のスポーツカーの対極にある、極めてマッチョな運転感覚だ。

岩がゴツゴツと露出したモーグル路や、泥でぬかるんだ道でも、その感覚は変わらない。必要に応じてヒルディセントコントロールや前後ディファレンシャルのロック/アンロックを使い分ければ、世界中のどこでも走れるんじゃないかと錯覚を覚えるほど、ラングラー・ルビコンの悪路走破性は圧倒的だ。

実際にはアンリミテッドではなくショートボディのルビコン(日本未導入)のほうが、さらに悪路走破性に優れているのだが、それこそ「ルビコントレイル(米カリフォルニア州にある、世界で最も過酷といわれるオフロード)」でも走らない限り必要ない。

ジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコンは、男なら一度は手に入れたいと思わせる、フロンティア魂を奮い立たせる貴重な一台だ!

■2代目イヴォークの実力に迫る!

ランドローバー イヴォーク 日本上陸を果たしたばかりの2代目イヴォーク。キレ味抜群のデザインが秀逸。ちなみに価格は801万円だ!

お次はランドローバーのレンジローバー・イヴォークの新型である。英国の4WDメーカーであるランドローバーには、軍用車両にも用いられている本格オフロード4WDのディフェンダーと、優れた悪路走破性と多用途性を兼ね備えたディスカバリー・シリーズ、そしてヨーロッパにおけるラグジュアリーSUVの雄であるレンジローバー・シリーズの3本柱があるが、イヴォークはレンジローバー・シリーズの末っ子という位置づけだ。

初代は2011年7月にデビュー。2008年にデトロイト・モーターショーで公開されたコンセプトカー「LRX」のデザインを、ほぼそのまま市販モデルに落とし込んだ、抜群にスタイリッシュなルックスが話題となり、累計80万台以上を販売するヒット作となる。日本でも、2012年の導入から昨年までに1万台以上が販売され、ランドローバー・ブランドにとって重要なモデルとなった。

今回登場した2代目は、昨年11月にロンドンで発表され、日本市場では今年6月に受注開始となったばかり。先代は3ドアと5ドア、そしてコンバーチブルが用意されていたが、新型は5ドアのみ。

今回は、300PSと430Nmを発揮する2リットルガソリンターボに48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたP300の最上級グレード、R-DYNAMIC HSE P300 MEHVを、神奈川県の宮ヶ瀬ダム周辺で試乗した。

新型イヴォークは、新開発プラットフォームのPTA(プレミアム・トランスバース・アーキテクチャー)を採用し、ホイールベースが先代から20mm伸びているが、従来どおりのウェッジシェイプでスタイリッシュなルックスはしっかり継承されている。しかもディテールの繊細な造形により高級感がグッと高まり、レンジローバー・ファミリーにふさわしい仕上がりである。

本格4WDではないが、先進的な電子制御技術により優れたオフロード走行性能を確保。モーグルもラクラク!

インテリアも、上級モデルであるレンジローバーやレンジローバー・スポーツ、昨年登場したレンジローバー・ヴェラールに通じる上品なデザインを実現。光学ミラーより広角な視野を実現するクリアーサイト・インテリア・リアビューミラーや、AIの学習機能を用いたスマートセッティングや、最新のコネクティビティも搭載し、ハイテク感あふれる空間となっている。

走りのほうもハッキリと進化が感じられた。走りだしてすぐに乗り心地が明らかに滑らかになっていると感じ、静粛性もワンランク向上していると実感。発進時に加速をアシストし、車速が17キロ以下になるとエンジンが停止するマイルドハイブリッドシステムの制御も、とても緻密で極めてスムーズである。

しかもオフロード性能も抜かりない。7つの走行モードを持つテレイン・レスポンス2を搭載するほか、車体の下側の映像をシミュレートするクリアーサイト・グラウンドビューを装備。ランドローバーの名に恥じないモデルとなっている。

どこまでもワイルドでアメリカン・テイストが詰まったジープ・ラングラーと、先進的で英国風スタイリッシュなレンジローバー・イヴォークは、まったくキャラクターが異なるが、どちらも毎日を非日常に変えてくれるクルマであることは間違いない!

●竹花寿実(たけはな・としみ) 
1973年生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。自動車雑誌や自動車情報サイトのスタッフを経てドイツへ渡る。昨年まで8年間、ドイツ語を駆使して、現地で自動車ジャーナリストとして活躍。輸入車のスペシャリスト