バリ島のクタといえば日本人にもわりと知られたビーチリゾートですが、ロンボク島のクタを知っていますか?
そこはバリ島から飛行機で40分程度の場所にある、別名「シークレット・パラダイス」と呼ばれる楽園。元々はサーファーの聖地と言われてきたこの町ですが、安宿も豊富にあり、近年はバックパッカー旅行者に人気を集めているそう。
少しずつ開発されつつあるものの、まだまだ自然が残りのどかな田舎の雰囲気。私がクタに来た理由は、ラブアンバジョで出会ったエストニア人女子のアナタに勧められたからであったが、ナイスリコメンド! 来てすぐにその心地良さを感じた。
藁ぶき屋根のお店が並ぶ中、感じの良いドミトリー宿やモダンな小規模ホテルなどがあり、ATMやスーパーマーケットも目の届く範囲で安心。
両替のレートは空港より良いし、離島や島内の各エリアへ行くシャトルサービスも一律と思われる常識的な金額が看板に書かれている。ヘルシー志向や雰囲気の良いインテリアのカフェが数軒並び、ピザ窯のあるレストランもあった。
「FREE WI-FI」や「HAPPY HOUR」など私の好きな言葉が目に入り好感度が高いし、ちょっとした夜遊び向きのバーもある。スパやマッサージにタトゥー屋やサーフ系のアパレルなど、コンパクトなエリアに必要最低限のものがまとまっていた。
しかし観光地とまではなっておらず、旅行者は観光客というよりも旅人やサーファー、"知る人ぞ知る穴場"といった感じで、全てが"多すぎない"のが良いのだ。(だから本当はこのままの感じを残したいし、秘密にしておきたいんだけど!)
ロンボク島はイスラム教が9割で、私が訪れた時は絶賛ラマダン断食中。私はコンビニで赤紫に黒いゴマのような種が入ったドラゴンフルーツを買って、断食中の彼らの目を盗むようにひとりビーチで食べた。
そんな時期なこともあってビーチは閑散としていたが、たまにひとりで本を読むビキニ姿の欧米人美女がポツリ。そこにミサンガ売りの子供が登場した。
「学校で本を買うからブレスレット(ミサンガ)を買って! トーキョーってキャピタルでしょ? シンジカガワ! ブレスレット買って!」
モノを売りに来るのはまだマシだが、その後「金をくれ」とだけ言ってくるおねだりキッズが連続で現れ、少しだけ疲弊。
「バリ島のクタビーチみたいにならなきゃいいけど......」
宿に戻ると、ローカルスタッフはもちろんイスラム教徒だ。コーヒーを入れてくれたスバルがかぶっていた帽子は、メンズはご存じかもしれないが「イスラムワッチ」「イスラムキャップ」というニット帽やビーニータイプの帽子。
映画『レオン』のジャン・レノや俳優の黒沢年雄がかぶっているようなオシャレ上級者のアイテムといった感じであるが、カジュアルなTシャツファッションにも似合っている。
3年程前にはユニクロが英国出身デザイナーによるモスリム女性のファッションを展開しているが、近年イスラムファッションはジワジワと世界に流行しているように思う。
夕方にはロミという男がこれからモスクにお祈りに行くからと、手際良くサロン(布)を腰に巻いていた。彼は22歳で彼女は16歳だという。
「結婚するまで手しか握れないから、みんな次のステップに進むために(?)早く結婚するんだよね。僕は25歳までに結婚する予定だよ!」
それが全てのイスラム教のルールであるのかと聞くと、
「さあね、とりあえずロンボクルールだよ! そしてその人と添い遂げるんだ......!」
晩婚化や未婚化(と離婚と不倫)が進む日本に比べたらカルチャーショックすら感じるが、これが島のスタンダードなのだろう。
そこに宿泊客であるオランダ人女子サネが、キャミソールから真っ赤に日に焼けた肩を出した姿で帰ってきた。
高身長女子が世界一多いのはオランダだとこの旅で散々聞いてきたが、サネは152cmの私よりちょっと高いくらいで親近感が湧く。私は彼女とBAT CAVEにコウモリを見に行ったり、丘にサンセットを見に行ったりと島内を巡り、夜はほかの宿泊者たちも一緒に夕飯へ行くこととなった。
トルコ人のヤム、オランダ人のサネ、イタリア人のサラ、ドイツ人のレナ、フィンランド人のロサ、そして私と見事に一人旅女子が勢揃い。同室にひとりフランス人男子がいて「女子ばっかりだ」と苦笑いしていたが、ここは一人旅に出るような少しワイルド目な女子を引き付ける何かがあるようだった。
「インドネシアってマジでダッチ(オランダ)女子多くない? 大学行く前に海外一人旅するコが多いんだってね。イタリア人は国内旅行が多いかな。あとイタリア人男子は旅どころか一人暮らしもしないしマザコン多いよね~」(サラ)
イタリアは国内に見所が豊富だから国内旅行で済むもんなぁという個人的感想は置いといて、世界は違えど女子トークっぽい会話が繰り広げられた。
翌日はガールズでインドネシアのベストビーチにもなったタンジュアンビーチまで原チャ旅。まずはガソリンを入れようと、私も初めて1万ルピア(約80円)のボトル入りのガソリンを購入した。
あまり運転の上手ではない女子たちが縦に連なってアクセルをふかし、島の風を切る。タンジュアンビーチに着くと、そこには白い砂浜と透明度の高いターコイズブルーが美しい最高の海があった。
そこへまたミザンガ売りのキッズがくるとサラはこう言った。
「買ってあげるけど、海にペットボトルを捨てないって約束できる? 絶対よ!」
無条件で買うのではなく教育をする方法はナイスだなと私もマネしようと思ったが、その度に1本買ってあげていたらサラの腕はミサンガだらけになったという。
そんな彼女のミサンガには夢が込められている。
「私はいつかここにホステルを作りたいんだ。名前はまだ決めてないけど、多分クリシュナかな。ヒンドゥー教の神様のひとり」
いつか彼女の夢が叶ったら、私はそこに泊まりに行くと約束をした。
そしてこの日もサンセットを見に、クタの絶景を見渡せるという小高いエリアにあるレストランへ行く。そこはヨガスペースもある人気の癒しスポットで、どうやらここにはヨガ好き女子も集まってきているようだ。
ここが女子に人気の理由は、小さな田舎ながらなんでも揃っているバランスの良さだろう。治安の良さ、物価の安さ、きれいなビーチ、絶景サンセット、ちょっとしたアドベンチャー、おしゃれカフェ、時々ヨガ、程良い田舎加減で自分に向き合えること。
そして最も重要なのはどこにでもある安定のピザ。サンセット時のハッピーアワーで、人気の食べ放題ピザに女子たちが貪りつくのを見ていたら、世界を旅する女子はとにかくピザがあれば大丈夫なんだ......と確信した。
【This week's BLUE】
タンジュアンビーチのサロン売りと原付を運転する小学生くらいの子供たち
●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】