君は自分の"血管年齢"を知っているか? 不健康な生活を続けていると実年齢を10歳も20歳も超える数値になっている。そして血管が老化し、30代でも突然死を招くことがあるのだ。そうならないための10ヵ条。始めるなら今だ!
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■30代、40代から動脈硬化は始まっている
あなたの血管は、今何歳? 最近は「血管年齢」を取り上げるテレビ番組や書籍が多くなってきた。血管年齢とは、加齢とともにしなやかさを失う血管の壁の「硬さ」を測って、何歳相当かを表したもの。
「しかし、血管年齢だけでは、本当の血管のコンディションはわかりません」
そう語るのは『1日5分!血管ケアだけで20歳若返る!』(青春出版社)や『血管を強くする1分正座』(小学館集英社プロダクション)などの著書がある池谷敏郎(いけたに・としろう)医学博士だ。
「血管内腔のコブは脂を含みブヨブヨしているため、必ずしも血管壁の硬さを表す血管年齢に反映されません。コブは頸動脈(けいどうみゃく)エコー法で評価できますが、大切なのは、悪い生活習慣や生活習慣病を持つ人は、血管年齢に一喜一憂せず、血管を老化させない生き方を実践することです」
では、血管全体を若返らせる方法とは何か?を教えてもらう前に、なぜ、血管ケアが必要なのか?
「それは、日本人の死因に大きく関わっているからです。今、日本では年間約10万の人が"突然死"で亡くなっています。突然死とは、数時間前までは元気でピンピンしていたのに突然倒れ、24時間以内に亡くなることです」
記憶に新しいところでは、俳優の故・大杉 漣さんの例がある。大杉さんはドラマの撮影後に共演者と食事を取り、その後ホテルの部屋に戻ったところで腹痛を訴えた。そして、病院に行ったものの4時間後に息を引き取った。死因は心不全だった。
「突然死の約6割が心臓病です。なかでも一番多いのが『心筋梗塞(こうそく)』。心臓を養う冠動脈が詰まってしまう病気です。また、約3割が『脳卒中』。脳卒中は脳内の血管が詰まる『脳梗塞』や、脳内の血管が切れる『脳出血』、脳のくも膜下腔の動脈瘤などから出血する『くも膜下出血』の総称です。
残りの約1割が、体の中心を走る動脈の中でも一番太い大動脈の疾患。大動脈の壁がコブのように膨らみ、破裂して大出血を起こす『大動脈瘤破裂』や、大動脈の壁に亀裂が入り引き裂かれてしまう『大動脈乖離(かいり)』など。
突然死を起こす原因のほとんどが、血管の老化が原因となる『血管事故』なのです」
でも、こうした病気は高齢者がかかるものでは?
「かつては、65歳以上の病気といわれていましたが、今では30代、40代で発症する人も少なくありません。しかも、血管病の原因となる動脈硬化は、血管事故発生の10~20年も前からジワジワと進行していくのです。つまり、血管のケアは20代から必要なんです」
血管を若返らせるにはどうすればいいのか?
「今からお教えする方法を実践していただければ、血管年齢なら20歳の若返りも不可能ではありませんよ」
■少し気をつけるだけで血管はすぐに若返る!
では早速、教えてください!
【1】白い炭水化物より、茶色い炭水化物を選ぶ!
「今の日本人は糖質を取りすぎていて、そのために血糖値が上がって血管を老化させている人が多いんです。そこで、炭水化物の総量を減らすことが重要です。
でも『今日からご飯を半分にする』というのも、今までご飯大盛りが基本だった人にはキツイでしょう。そこで、同じ量を食べるなら『GI値』の低いものを選ぶようにしましょう。GI値とは食後の血糖値の上がり具合を示す数値です。GI値が低い食品ほど血糖値が上がりにくいのです。
GI値を調べるのが面倒な人は、精製度の低い穀物を選びましょう。白米よりも玄米や胚芽(はいが)米。食パンよりもライ麦パンや全粒粉パン。わかりやすく言うと『白い炭水化物』より『茶色い炭水化物』を選ぶということです」
【2】温かい炭水化物より、冷たい炭水化物を食べる!
「糖質のひとつであるデンプンは、熱を加えた後で冷やされると一部がレジスタントスターチという『消化されないデンプン』に変わります。すると食物繊維と同じように糖の吸収を緩やかにしてくれる。ですから、炊きたてのご飯よりも冷えたご飯。温かいかけそばよりも冷たいざるそば。パスタよりも冷製パスタを食べるようにしましょう」
【3】水溶性食物繊維を多く取る!
「食物繊維には『水溶性食物繊維』と『不溶性食物繊維』がありますが、血管ケアのためには水溶性食物繊維をたくさん取ってください。水溶性食物繊維は『糖や脂肪の吸収を遅らせる』『食後の血糖値の急上昇を防ぐ』『高血圧を予防する』という効果があります。
また、腸壁からGLP-1というホルモンを分泌させ、満腹中枢に働いて満腹感を与えてくれます。さらに善玉菌の餌となり短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)をつくり、脂肪の蓄積を抑え、脂肪の燃焼を促します。
水溶性食物繊維が多い食品はオクラ、長イモ、ナメコ、納豆などのネバネバ食品。昆布やワカメなどの海藻です」
【4】オメガ3系脂肪酸を取る!
「脂質には常温で固まる『飽和脂肪酸』と常温では液体の『不飽和脂肪酸』があります。
そして、不飽和脂肪酸には(1)『オメガ3系脂肪酸』(アマニ油、エゴマ油、魚の脂など)、(2)『オメガ6系脂肪酸』(大豆油、コーン油、ベニバナ油、ひまわり油など)、(3)『オメガ9系脂肪酸』(オリーブ油など)に分かれます。
オメガ3系脂肪酸は体内の炎症を抑える働きをするため、血管を若返らせます。逆にオメガ6系脂肪酸は取りすぎると炎症を起こします。現代人はオメガ6系脂肪酸を多く取りすぎているので、できるだけオメガ3系脂肪酸を取るようにしましょう」
【5】生魚やサバ缶、イワシ缶を食べる!
「実は、オメガ3系脂肪酸は熱に弱く、加熱調理に向きません。そのためサラダにかけて食べるとか、ジュースに混ぜて取ることになります。でも、それだけだと不足しがちです。そこでオメガ3系脂肪酸を多く含む魚を食べて補っていただきたいのです。オススメは刺し身かカルパッチョなど生のままの調理法。これだとオメガ3系脂肪酸が失われません。
また、サバ缶やイワシ缶などの缶詰もオススメです。缶詰は、生の魚を入れてから加熱するので、オメガ3系脂肪酸が流れ出ていかないのです」
【6】減塩を意識する!
「肉は大事なタンパク源で、筋肉を作り血管を丈夫にします。ただ、味つけには注意が必要です。具体的には減塩を心がけてください。塩分の取りすぎは高血圧や動脈硬化の原因になります。ハムやベーコンなどの加工肉は塩分が多いものがある。
また、外食チェーンのステーキなどは、塩がたくさんかけられているものもあります。糖質制限食として活躍するサラダチキンも塩分が多いものがある。しっかりと成分を確認しましょう」
ちなみに、WHO(世界保健機関)の一日の食塩摂取目標は5gだ。
【7】野菜はブロッコリーとタマネギを積極的に食べる!
「野菜を食べるなら、ブロッコリーとタマネギを積極的に取ってください。ブロッコリーには、強力な抗酸化作用と抗炎症作用を持つスルフォラファンが含まれています。さらにブロッコリーの新芽であるブロッコリースプラウトは、ブロッコリー以上にスルフォラファンがある。
タマネギには抗酸化作用や血圧を下げる効果のあるケルセチンが多く含まれています。ただし、ケルセチンは水溶性なので、水にさらすと漏れ出てしまいます。できるだけ水にさらさず食べたほうがいいでしょう」
【8】晩酌のつまみにはキノコ!
「お酒を飲む人は、キノコをつまみにするといいでしょう。キノコはそのものが低糖質であるとともに、糖の吸収を抑える『βグルカン』が豊富に含まれています。エリンギをサッと焼いて晩酌のお供にしてみてください」
【9】1分正座をする!
「血管の内側の壁(血管内皮細胞)からNO(一酸化窒素)が分泌されると、血管が広がり、血流が良くなります。また、傷ついた血管を修復します。では、どうしたらNOが出るのでしょうか。最も効果的なのがウオーキングです。筋肉の運動が血管内皮からのNO分泌を促します。
NOを出す方法は、運動だけではありません。最も簡単で効率的なのが正座です。正座をすると下肢の屈曲と体重による圧迫によって、下半身の血流が停滞します。この状態をしばらく維持した後、下肢を伸ばして圧迫解除すると、一気に血液が流れ始めます。この血流が血管内皮を刺激して、NOの分泌を促すのです。
正座をする時間の目安は1分間。できる人は2、3分やっても構いません。重要なのは足が軽くジンジンするまでやること。ジンジンしてきたら正座をやめましょう。短時間ですが、日々正座習慣を繰り返すことで、NOが分泌され、血管の若返りが期待できます。
1分正座の上級編が『手クロス正座』です。両手を交差させて手のひらをワキの下に挟み、上半身にも圧を加えます。下肢のみならず、上肢の血管内皮からもNOが分泌されるので効果的です」
【10】4cm枕で寝る!
「枕の高さが合わず寝返りが打てないと、寝ている間に血圧の急上昇や急降下が起こります。また、喉が狭くなるので睡眠時無呼吸のような症状も出てきます。さらに眠りが浅いと満腹中枢が刺激されにくくなって、過食になりやすい。ですから、寝返りが楽に打てる枕で寝てください。
自宅にあるもので簡単に作れるのは『4cmマクラ』です。一番下にバスマットなどを敷き、その上にタオルを重ねていく。個人差があるので4cmはあくまで目安です。重要なのは横を向いたときに体の中心線が一直線になり、寝返りが打ちやすいこと。
睡眠の質が良くなると、翌日の食行動が正常になり、血圧が安定します」
"食欲の秋"が近づいているが、少しでも血管を若返らせたいなら、この10の方法を試してみてはどうだろう。血管が若返れば突然死を防げるだけでなく、全身にパワーがみなぎって、どんな試練にも立ち向かえる体になっているはずだ。