天神駅で、左右非対称な顔が魅力な6050形と。時刻表以外にポケットサイズのダイヤグラムが駅で受け取れるのも西鉄ならでは 天神駅で、左右非対称な顔が魅力な6050形と。時刻表以外にポケットサイズのダイヤグラムが駅で受け取れるのも西鉄ならでは

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、鉄道マニアの彼女が「西鉄」の魅力について語る。

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今回のテーマは「西鉄」こと西日本鉄道です。福岡県を基盤にする私鉄で、通勤や通学に欠かせない存在でありながら、沿線に太宰府や柳川といった強力な観光資源を抱える大手。私も大好きな鉄道会社のひとつです。

ただ、私鉄の中でも京急や近鉄、阪急などはファンが多いんですが、西鉄はいまいち存在感が薄いんです。バス路線が存在感を発揮していることから「西鉄はバス会社」と揶揄(やゆ)されることも。でも、西鉄には面白いところがたくさんあるんですよ。

特に車両に関してはかなり先進的な取り組みをしてきました。0系新幹線の開発の参考にされたといわれている、日本で初めてモノコック構造を採用した西鉄313形や、小田急のロマンスカーなどの原点になった連接構造を持つ西鉄500形、かつて日本一の大きさの窓を持っていた西鉄8000形など、全国の鉄道の発展を支えてきた名車がたくさん。

私が好きだった西鉄2000形は運転席が車両の真ん中にあり、日本の高速鉄道では非常に珍しい配置でした。

私が一番好きなのは、今も現役で多く走っている西鉄5000形。車両の顔は、よく見ると運転席側の窓だけ曲面ガラスになっていて、正面の顔が微妙に左右非対称なんです。変なバランスなんですが、まるで手描きのイラストをそのまま具現化したような緩い感じがあります。

独特な顔に加えて、「これぞ西鉄」ともいえる、歯磨き粉のようなアイスグリーン×マルーン(えび茶色)という独創的なカラーリングは一度見たら忘れません。小ぶりなサイズ感も西鉄の特徴で、車両の長さはたった19.5mで幅も狭め。

時代に合わせて地方鉄道の各社は車両限界を広くしていきましたが、西鉄は昔のままだといわれています。なのに、最高速度110キロも出す区間もあるので、迫力は満点です。

そんな西鉄ですが、他社同様、近年は観光列車にも力を入れています。太宰府へ向かう「旅人(たびと)」、柳川を通る「水都(すいと)」はすっかり定着し、特別料金は必要ないので移動ついでに乗れます。

そんななか、今年満を持して登場した西鉄初の本格的な観光列車が、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」です。筑後地方の食材を使ったグルメを味わえる列車で、車内にある窯(かま)で焼いたピザやフレッシュな野菜を提供するなど、食に力を入れています。

外装も、キッチンクロスを思わせる赤いチェック柄になっていて、女子ウケしそうなおしゃれな雰囲気は、他社の観光列車と一線を画してます。通勤用の6050形を5億円かけて改造したもので、先ほど話した5000形と同じアンバランスの顔をしているので、洗練された外装のデザインとの対比がツボです。

ちなみに、この外装をデザインしたのは、グラフィックデザイナーの福岡南央子(なおこ)さん。福岡を代表する西鉄の車両をデザインしたのが福岡さんだなんて。さらに、車内の壁面を彩るブリキパネルをデザインしたのはアーティストの鹿児島睦(まこと)さん! シェフやアテンダントさんまで調べれば、佐賀さんや大分さん、宮崎さんも関わっているんじゃないかと夢が膨らみます。

どなたか、内情をご存じの方がいたら教えてください。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、JーWAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21時~)などにレギュラー出演中。「西鉄久留米駅のミスタードーナツは、売り上げが日本一になったことがある」と、久留米市民3人に自慢された

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!