スズキが世界に誇る怪物マシン・隼が生産終了になったというウワサをキャッチ。マジか!
というワケで、その背景と今後どうなるのかを気鋭のジャーナリスト・青木タカオに解説してもらった!
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■現行モデルの隼は、すでに店頭在庫のみ!
――スズキの隼が生産終了ってマジ!?
青木 残念ながらマジです!スズキ関係者に取材したら、国内仕様はもう店頭在庫だけだそうです。
――生産終了の理由は?
青木 世界的な環境規制に対応できないんです。ただし、2代目となる現行モデルは2008年に登場し、そろそろフルモデルチェンジにちょうどいい頃合いでもある。
――ということは消滅ではなく、3代目登場もありえる?
青木 そのウワサは私の耳に届いています。それにスズキは2015年の東京ショーで「繭(まゆ)」と名づけた新型をぎんぎんににおわすコンセプトモデルを展示しています。しかも昨年、スズキ二輪の社長が隼の新型を開発中と明かしています。
――来年はスズキ創業100周年だし、そこに合わせての登場もあるんスかね?
青木 毎年秋に欧州で世界最大級のバイク見本市が開かれていて、そこで発表かなと期待していたんですが、海外のジャーナリストから「北米仕様の隼に新色が出た」という情報があり、オールニューの3代目・隼のデビューはもう少し先だとにらんでいます。
もし2代目を新車で買うなら今しかありません。国内仕様だとリミッターが利いて出ませんが、輸出仕様は長い直線のあるサーキットなら軽~く300キロ出ちゃう怪物です。
――300キロって男がたぎりまくりですが、正直、羽をつけたら飛ぶレベルじゃ?
青木 国内屈指の超ハイスピードコースを有するスズキが、風洞実験を重ね開発した空力特性に優れたエアロフォルムと、197馬力を発揮する排気量1340ccの水冷DOHC4バルブエンジンのおかげでマジ300キロ出ます。もちろんそんなスピードが出せるのはサーキットだけですが。
――なんでまた、そんな超高速バイクをスズキは開発したんスか?
青木 実は90年代に各バイクメーカーは世界最速の座をかけて凌(しの)ぎを削っていました。隼はスズキの切り札でした。
初めて披露されたのは、98年にドイツ・ミュンヘンで開催された二輪車見本市でのこと。その流麗でボリューム感あふれるスタイリングだけでも、センセーショナルなデビューでしたが、翌年2月、スペイン・カタルニアサーキットでのプレス向け試乗会で圧倒的な高性能を証明! ターボなど特殊な装置を搭載せずに、市販車初となる時速300キロ超を実現しました。
当時、270~280キロをマークするモデルは存在したんですが、隼は前人未踏の300キロという領域へ突き進んで大きな話題を呼びました。
――世界最速だったと。
青木 ええ。ですから、99年春の発売開始とともに世界中のライダーがびんびんに! ちなみに初代が最も過激で速度計の目盛りは350キロまで刻まれていましたからね!
――実際、そこまでのスピードって必要なんスか?
青木 2年ほどで各社が「もう最速争いは終わりにしよう」という話になり、要は自主規制したわけです。で、300キロオーバーの速度計は消えてしまった。
――一般道で乗るとどんな感じの乗り味なんスか?
青木 超がつくほどのハイスペックを持つのに、扱いやすさも共存しているから驚きますよ。速いバイクって、トップエンドの伸びが重視されがちで、街乗りで使う常用回転域のトルクが細かったりするんですが、隼は開発段階から「究極のバイクをつくろう」ってことで低中速トルクをぶっとく味つけしている。その結果、乗り手の技量を問わない一台になっています。
――今回試乗した2代目は?
青木 スズキドライブモードセレクターを搭載し、状況や好みに応じてスロットルレスポンスをマイルドにすることもできるようにしています。
――獰猛(どうもう)な隼を調教できる!
青木 だから旅の相棒としても使われています。それが証拠にツーリングに出かけると、ホントに隼をよく見かける。あらゆる場面を想定し、リアシートに荷物が載せられるよう、ちゃんと荷かけフックが初代にも2代目にも標準装備している、とても懐が深いモデルなのです。
――そりゃ人気になるわ!
青木 世界最速という称号に疑いの余地はありませんが、スピードだけで隼は語り尽くせません。登場以来、世界中のバイクファンが隼に熱狂したのは、動力性能だけじゃなく、ハンドリングが軽快で旋回力も高く、乗り心地も良好でしかも扱いやすい。
――なるほど。
青木 要はすべてにおいて最高水準にある究極のスーパースポーツバイクなんです! モデル末期の今乗ってもパワーは強烈ですし、グラマラスな見た目からは想像できないほどにキビキビよく走る。デザインにも古さは感じない。
――隼を買う際の注意点は?
青木 ボリューミーな車体は小柄な人だと取り回しに苦労する可能性があります。購入を検討している方は、必ず自分で押し引きできるかをちゃんと確かめましょう。
――では最後に青木さん、隼のびんびん度は?
青木 120%びんびんです!
●青木タカオ
1973年生まれ、東京都出身。法政大学卒業。バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。バイク専門誌を筆頭に執筆媒体多数。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。バイク専門誌編集長の経験もある