左から初代~5代目、レヴォーグ。どのモデルに乗れるかは試乗会に参加した媒体のクジ引きによって決まる。残念ながら週プレは5代目に乗ることができなかった。無念! 左から初代~5代目、レヴォーグ。どのモデルに乗れるかは試乗会に参加した媒体のクジ引きによって決まる。残念ながら週プレは5代目に乗ることができなかった。無念!

日本が世界に誇る最強ツーリングマシンはなぜ男を魅了してきたのか。元レガシィオーナーであり、日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の小沢コージが、歴代レガシィをがっつり試乗し、その人気の秘密に迫ってきた!

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■歴代レガシィを往復600km試乗!

いったいなんなんだこの味は? ひっさびさの衝撃だ。淡泊なプロセスチーズだらけの冷蔵庫で、ひとつだけクサくてウマすぎる、濃厚青カビチーズを食ったような気分だったぜ!

それは9月に行なわれた「SUBARU GT EXPERIENCE」という名の歴代レガシィ一気乗り試乗会でのこと。今月下旬の東京モーターショーで発表された2代目レヴォーグ・プロトタイプを記念し、現行初代レヴォーグと同時に、その元祖たる歴代レガシィワゴンをかき集めて味わうっつう珍しい歴史振り返りイベントだ。

聞けば広報担当者が「ヤフオク!」で上玉中古レガシィを厳選。最高1台170万円もかけて初代、2代目、3代目、4代目、5代目をレストア。結果当時の味がリアルに再現され、期せずしてスバルのヘンタイ性、もとい宗教的なまでの味の個性派戦略を白日の下に晒(さら)したのである。

ちなみに今回のスケジュールは東京・恵比寿のスバル本社から長野県昼神温泉までの往復約600km! 片道ほぼ4時間の高速&山道をオザワは、初代~4代目のレガシィ4台と現行レヴォーグを心ゆくまで味わったのだが、まずビックリしたのは初代のあまりの濃厚さ。マジで30年前はこんな味だったっけと。われながら若いときのロン毛写真を見て衝撃を受けたような感じよ(笑)。

初代レガシィツーリングワゴン GT Type S2(4AT) 1989年登場。今回試乗したのは93年モデル。91年に内外装を大改良している 初代レガシィツーリングワゴン GT Type S2(4AT) 1989年登場。今回試乗したのは93年モデル。91年に内外装を大改良している

グレードはツーリングワゴンGT Type S2。ギアボックスはしょぼい4速AT。エンジンは2リットルターボでわずか200PSだがこれが超面白い! まずはスタイルでボンネットが薄くてペキペキなノーズと、やたらバカデカいお尻がたまらない。

真横から見るとアンバランスで、ある意味カッコよさとダサさのギリギリオンザエッジ。初代デビューの1989年は、日本にステーションワゴン文化がなかった時代。よくあの時代にこんな攻めのデザインが受けたもんだなぁと思う。スバルってバカかも?

乗り込むと見た目のおっとりさを裏切る繊細な造りにビックリ。今とは安全基準が違うからか、インパネ、ドアの距離が近く、ダッシュボードが低くて上半身むき出し。クルマに「乗る」より「着る」ような感じだった。

視認性と操作性に優れたスイッチ類のレイアウトにスバルはこだわったという 視認性と操作性に優れたスイッチ類のレイアウトにスバルはこだわったという

一方、走りだすと「アレレ?」と思うほどステアリングが軽い。手応えがスカスカで走りだし直後は怖く感じるくらい。でもこれがすぐに楽しさにつながるのだ。

さらなるキモはスバル伝統の水平対向4気筒、フラット4エンジン。普通の直4エンジンのようにヒュンヒュン軽くは回らない。アクセルを踏んだ途端、半歩遅れて「ドロロ~ン」という音が発生。もっさり系のトルクが立ち上がる。最初は「何この洗濯機のようなサウンドは?」とも思う。

だが、次第に心臓の鼓動のごとくキモチよく感じ始める。バイクのハーレーのVツインエンジンとどこか似ている。キレがよすぎない人間的なメカの味にハマるわけよ。

世の男を夢中にさせた水平対向エンジン。MTモデルは220PSを発揮した 世の男を夢中にさせた水平対向エンジン。MTモデルは220PSを発揮した

そしてレガシィ中毒者行きにトドメを刺すのが高速&ワインディングだ。ご存じドイツのポルシェもビックリの低重心フラット4とアウディ顔負けの乗用車用フルタイム4WDシステムを持つ初代レガシィ!

見た目は正直荷物車だし、ステアリングも軽すぎ。だが、高速ではビックリするほど安定し、雨の滑りやすい路面でも超安心。重心が低い上、4WDが4つのタイヤを使って驚異のトラクション性能を発揮するからだ。

そう、実はダサカッコいい見た目とはウラハラに、想像以上に広いラゲッジとGTカー顔負けの安定性、スポーツカーはだしのコーナリング性能を持つ濃厚実用カーなのである。それがそもそも「レガシィ」の原点! そのギャップがまさに青カビチーズであり、クサヤの干物なのよ。

荷室の広さと使いやすさを達成しつつも、スポーツカー顔負けの走りを披露 荷室の広さと使いやすさを達成しつつも、スポーツカー顔負けの走りを披露

同時に初代レガシィがスゴいのはスバルを救った神風カーでもあること。スバルのベテランスタッフは言う。

「デビューした89年にはホンダNSXやユーノス・ロードスターも世に出ているんですが、ウチとは生い立ちが逆なんです。アチラはバブル期の余裕から生まれたようなクルマですが、ウチは630億円の赤字で潰(つぶ)れそうっていわれてて、このレガシィが最後のバッターボックスみたいなクルマだったんです(笑)」

まさにスバルにとってのイッパツ大逆転ホームランがレガシィだったのだ。

■どんなに洗練されてもレガシィはレガシィ

2代目レガシィツーリングワゴン GT‐B(4AT) 2代目は93年に登場。試乗車は97年モデル。開発コンセプトは「レガシィの熟成を極める」だった 2代目レガシィツーリングワゴン GT‐B(4AT) 2代目は93年に登場。試乗車は97年モデル。開発コンセプトは「レガシィの熟成を極める」だった

その後のレガシィは初代の洗練&ネガ消しの歴史である。次に乗った2代目ツーリングワゴンのGT-Bで、改良版の2リットルフラット4ツインターボを搭載。5MT車で280PS、4AT車で260PSを発揮! 足回りにビルシュタインダンパーを奢(おご)った当時最速のワゴンであった。

まずは見た目がガラリと変わりエクステリアデザインを元メルセデスのオリビエ・ブーレイが担当。明らかに上品かつ洗練化されている。

ただ、乗ったときの一体感はやっぱり初代譲り。ボディサイズは全長4.6m台で横幅も5ナンバー枠をキープ。レガシィならではの扱いやすさと使い勝手を見事に保っている。

同時にビルシュタインダンパーにより軽すぎるステアリングが改善され、コーナリング時のロールも収まって操縦性は歴代最高レベル! 改良エンジンもバカっ速いだけでなく、自慢のドロロ~ンサウンドが濃厚化。欠点を減らしつつ、長所を伸ばす。ある意味、フルモデルチェンジのお手本のようなモデルがこの2代目レガシィなのである。

3代目レガシィツーリングワゴン 250S(4AT) 1998年登場。外観、性能、質感を進化させた。エンジンやサスを改良。歴代最強の声も 3代目レガシィツーリングワゴン 250S(4AT) 1998年登場。外観、性能、質感を進化させた。エンジンやサスを改良。歴代最強の声も

一方、その反動なのか、3代目は初代のダサカッコよさが復活! しかし、広さ、走り、質感は向上しまくりで歴代最高傑作といわれている。

実際この2.5リットルモデルを一時、オザワも中古で持っていて、今回の試乗車もたまたま2.5リットルエンジンのツーリングワゴン250Sだった。エンジンはノンターボで170PSと大したことはないが、低速トルクが太くて乗りやすい。

3代目が特にイイのはボディサイズで、全長4.6m台を保ったまま拡大。横幅も5ナンバー枠をキープし、取り回しを落とさずにラゲッジは歴代で最も使いやすいレベル。カーゴネットなども充実し、シートをフラットにしたときの邪魔な段差も減っている。

オザワ的には、何より初代のトンガリノーズを程よく彷彿(ほうふつ)させるデザインがいい。衝突安全性を確保するためか、全体フォルムはちと太めだが程よくダサカッコいい。乗り心地もまあまあ。

4代目レガシィツーリングワゴン 2.0GT(5AT) 2003年デビュー。このモデルからグローバル化。ボディ構造を刷新、軽量化と剛性化を両立 4代目レガシィツーリングワゴン 2.0GT(5AT) 2003年デビュー。このモデルからグローバル化。ボディ構造を刷新、軽量化と剛性化を両立

そして今回最後に乗った歴代レガシィが、4代目ツーリングワゴンの2.0GT。熟成の2リットルフラット4ターボは程よいパワーで、ギアボックスは4ATから5ATに進化。走りもかなり進化した。

だがこの世代からいよいよグローバル化。ボディ横幅が拡大し、ついに3ナンバー化してしまった上、オザワ的に残念なのが美しすぎるデザイン。レガシィらしいダサカッコよさが消えてしまったのだ。

もっともこれは非常にワガママなハナシで、実はこのモデルからレガシィは本格的に世界に羽ばたき、北米で大成功を収めてゆく。そのためのグローバルデザイン化であり、拡大化だったのである。

実際、これまでレガシィは現行6代目までで国内累計約100万台を売っているが、初代が累計18万台で最初のヒットを飛ばした後、2代目が34万台で歴代で一番売れ、その後3代目、4代目共に22万台前後で盤石な人気を発揮。それ以降は国内より海外で人気びんびんに!

■レガシィは焼き鳥のタレ。スバルは宗教法人!?

初代から4代目まで乗ってつくづく痛感したのがレガシィの変わらなさだ。どのモデルもフラット4独特のサウンド、ネッチョリしたトルク感が醍醐味(だいごみ)で、ステアリングは常に軽くて正確。味わいは徐々に洗練されていくが、味の骨格は変わらない。

ついでに平べったいフラット4エンジンがゆえ、衝突時にパワーユニットが床下に潜り、キャビンスペースを保てる安全性も常に確保。つまりレガシィとは、つぎ足しつぎ足しで味を守りつつも進化する焼き鳥のタレのようなものであり、グローバル化し、いまやニューヨークでも人気のトンコツラーメンのような存在なのだ。

レヴォーグ 2.0STI Sport EyeSight(CVT) 来年にもフルモデルチェンジがウワサされているレヴォーグ。新型は東京モーターショーでお披露目された レヴォーグ 2.0STI Sport EyeSight(CVT) 来年にもフルモデルチェンジがウワサされているレヴォーグ。新型は東京モーターショーでお披露目された

そして2014年、レガシィに代わって国内専用ワゴンとして誕生したのがレヴォーグだ。4.6m台のボディ、フラット4、フルタイム4WDの走りはぎんぎん。正直、剛性感はレガシィの比じゃなく、完璧に筋肉ムキムキのマッチョマンテイストだ。しかし、エンジンフィール、ステアリングフィールはまごうことなき歴代レガシィの後継者である!

そもそもフラット4は熱効率的に直4エンジンより不利で、売りは重量バランスの良さと個性的回転フィール。こんなスポーツカー向けの心臓を市場価値の中心に据える量産ブランドなど世界中でスバルしかありえない! オザワ的に言うと、ほとんど走る宗教法人みたいなメーカーなんだってば!