【天丼...AGE量3725】vs【カツ丼...AGE量8984】。天丼は低AGEの野菜や魚が多く、カツ丼は高AGEの豚肉を使用

「なんか最近、白髪が目立ってきたなぁ」「シミが増えたような気がする」......。

そう感じたことはないか? 同じ年齢でも老けて見られる人もいるし、若々しいままの人もいる。なぜ、老化のスピードに差があるのだろうか?

昭和大学医学部の山岸昌一(やまぎし・しょういち)教授が老化のメカニズムについて解説する。

「人間の体は、ほとんどがタンパク質でできています。このタンパク質に糖がつくと、本来のタンパク質の形がどんどんゆがんできて、機能が劣化する。そして、最終的にAGE(終末糖化産物/Advanced Glycation End Products)になり、全身の老化やさまざまな病気につながっていきます」

AGEが皮膚にたまれば、肌はハリを失って、シミやシワ、たるみの原因になる。また、髪の毛の根元にある毛乳頭細胞にたまれば、薄毛の原因になる。ほかにもAGEはED(勃起不全)、動脈硬化やアルツハイマー病、がん、骨粗しょう症など老年病の発症につながっていくという。

糖が老化の原因なら、糖を取らなければいいのでは?

「もしも血糖値がゼロになると、脳は働かなくなって約5分で死んでしまいます。糖は人間が生きるために必要なエネルギー源なんです。

しかし、それゆえに糖がタンパク質を劣化させる糖化反応は、健康な人でも普段から起こっている。その結果、AGEがだんだん体にたまっていきます。20歳のときよりも、30歳。30歳のときよりも40歳のほうが、確実にAGEが多いんです」

では、なぜ人によって老化のスピードが違うのか?

「体にたまるAGEには、ふたつの経路があります。ひとつは、食事によって血糖値が上がり、高血糖状態が長く続くことで体の至る所で糖がタンパク質と結びつく場合。もうひとつは、AGEがたくさん含まれている食べ物を知らず知らずに食べ続けることでたまってしまう場合です。

このふたつに適切なアプローチを取らないとAGEがたくさんたまり老化が進むことになります」

最近流行の「糖質制限」は血糖値の上昇を抑えるという点で、AGEに対しても一定の効果がありそうだ。しかし、AGEがたくさん含まれている食べ物を控えろと言われても、いまいちピンとこない。いったい、どんな食べ物にAGEが多いのか?

「まず、食べ物の糖の含有量とAGEの含有量には相関関係はありません。糖質が高いからといってAGE量が多いとは限らないのです」

糖質の量で判断してはいけないのだ。

「一方で、AGE量と調理法には密接な関係があります。

AGEは、糖とタンパク質のメイラード反応によってつくられます。メイラード反応とは、加熱による褐変化(焦げ目がつくこと)で、食べ物がキツネ色になることを言います。わかりやすく言うと揚げ物の色です。ですから、基本的に揚げ物はAGE量が多いわけです。

調理法によるAGE量の違いは『生』→『蒸す・ゆでる』→『煮る』→『炒める』→『焼く』→『揚げる』の順に高くなっていきます。同じ食材でも、高温で調理時間が長いほどAGEは増えます」

例えば、卵(全卵50g)の場合。生卵のAGE量は59だが、ゆで卵になると135に上がり、目玉焼きにすると1988と跳ね上がる。

鶏もも肉(100g、皮なし)は、生だと777だが、煮ると1787になり、焼くと3418で、揚げると5544とかなり高くなる。

「できれば、一日のAGEの摂取量を1万5000以下に抑えてほしいです。この量に抑えることで、健康寿命をのばせるのではないでしょうか」

【焼き餃子(6個)...AGE量4190】vs【ポテトコロッケ...AGE量7861】餃子は焼いているが、ポテトコロッケは揚げている

ちなみに、揚げ物がAGEを特に多く増やす調理法とのことだが、電子レンジでの温めはどうなのか?

「電子レンジは焼き色がつかないので大丈夫だと思いそうですが、マイクロ波で食品の分子を振動させて高温にするため、焼き色がつかなくてもメイラード反応と同じ状態をつくっています。もともと調理してあるものを再加熱すると、AGE量をさらに増やすことになります。

電子レンジによる温め直しは控えたほうがいいでしょう」

揚げ物を電子レンジで加熱すると、AGE量がかなり増えると知っておいたほうがいいだろう。

【シーザーサラダ...AGE量3105】vs【ポテトサラダ...AGE量245】シーザーサラダには高AGEのベーコンが入っている

では今、自分の体の中にAGEがどれくらいたまっているのかを判断する方法はあるのだろうか?

「血液を特殊な方法で分析すれば血液中のAGE量を測れますが、健康診断時の血液検査のデータでもたまっているかどうかの目安はつけられます。

注目してほしいのはヘモグロビンA1c。これはヘモグロビン(タンパク質)がどれくらい糖化されているかの数値です。高い数値がずっと続いている人は、AGEがたまっている可能性が高いでしょう。

また、高血圧の人で上が140以上あって、上下の差が60以上ある人はAGEがたまっていると考えていいと思います」

AGEを気にして食べ物を選べば、5年後、10年後に同年齢の人と比べて若々しく見えるはずだ。

*資料提供・引用元/『AGEデータブック 数字でわかる老けない食事』(AGE研究協会)*数値はあくまでも目安としてください。料理写真はイメージです