■VRで視力回復の噂に迫る!
発端は去年8月、VRで視力が回復したというツイートが大きな話題となった。
〈VRゴーグルを毎日のように被るようになって5ヶ月程になりますが、何故か視力が回復してきたみたい。検査でも0.3→1.0など。ずっと掛けてきたメガネなしで不安なく車を運転できる事に気づいて驚いてます。ゴーグルの焦点距離が2mくらいの所にあるという話と関係あるのかな。〉(お休みさん氏のツイートより)
なんと! VRを見て視力が回復したって!? しかも、0.3から1.0に!!
そして今年に入ると、さらにネット上のあちこちで「VRで視力が回復した」という話を見かけるようになった。週プレでもおなじみのAVライター、東風克智(こち・かつとも)さんもそのひとりだ。
「実は僕も運転免許の更新に行ったら、なぜか視力がアップしていて眼鏡をかけなくてもよくなったんです。ただ、それがアダルトVRを見まくっているおかげなのかどうかはわかりませんけど(笑)」
むむむっ。これはちゃんと検証しなくては! というわけで、まずは最初にツイートをしたお休みさん氏に話を聞いてみた。
――一日どれくらいVRを見ていたんですか。
「4、5時間程度ですね。ほとんどはVRChat(ソーシャルVRアプリ)で、ほかのプレイヤーとの会話や情報交換を行なっていました」
――一日4、5時間! ちなみに、お休みさん氏が使っていたVRゴーグルは、パソコン向けのVRヘッドセット「Oculus Rift」で、裸眼でプレイしていたとのこと。元の視力はどんな感じでした?
「2017年の春に視力検査をしたときは、左0.3、右0.5でした。子供の頃は左右とも1.5~2.0程度でしたが、中学生の頃から徐々に悪くなり、以来10年以上は0.3~0.5のあたりを行ったり来たりしていたんです」
――ふむふむ。
「ところが、VRを見るようになって3ヵ月たったあたりから、なんとなく裸眼での見づらさが軽減されている感じがしていました。ただその頃はさほど意識してはいなかったです。
そして、約5ヵ月がたった去年の8月の朝のこと。車の運転前に眼鏡を外してみたところ、周りがクッキリと見えていたことで、あらためて視力の変化を実感しました。検査でも視力が1.0になっており、それをツイートしたというわけです」
■眼科医が考えるVRのポイント
ここで専門家に話を伺ってみよう。話題の視力回復法「ガボール・アイ」(後述)を日本に広めた眼科医の平松 類先生、まずは近視のメカニズムから教えてください!
「いくつかの説があるのですが、よくいわれるのは、近くを見すぎてしまうと、毛様体筋(もうようたいきん/目のピントを調節する筋肉)が緊張状態になって『仮性近視』(仮の近視状態)になります。これはきちんと目を休めれば元に戻るのですが、その緊張状態を継続してしまうことで本物の近視になってしまう―というのが有力な説です」
――ほぉほぉ。では、今日の本題に入ります。VRで視力が回復したという話をたびたび見聞きするんですが、そんなことってありえるのでしょうか。
「ひとつポイントとなるのは、ゴーグルの焦点距離が2mだったということです。遠くを見たほうが目にいいという話はよく聞くと思いますが、それって実は何十mである必要はなくて、基本的に2mあれば遠くを見ているのと同じ効果になります」
――へぇ~。
「ですから焦点距離が2mだったことで、遠くを見るのと同じように目を休めることができた。それで物が見やすくなった可能性が考えられます。ただし、このケースは仮性近視だった場合ですね」
――仮性近視って小学生くらいの子供がなるイメージがありますが、目が悪くなってから10年以上たっている大人でも仮性近視の可能性はあるんですか。
「あります、あります。目がずっと緊張状態にあるために視力が落ちているけど、真性ではない仮性近視というケースもありますので。とはいえ、視力が0.1以下になると、仮性近視の可能性は非常に低くなりますね」
――ほかにVRで視力回復した理由として考えられることはありますか。
「もうひとつは、VRで脳の処理能力が上がったために、視力が回復したかもしれないということが考えられます」
――脳の処理能力、ですか?
「はい。物を見るという行為は、眼球でとらえた情報を目で処理するのではなく、最終的には脳で処理することで見えたものを認識しています。その脳の処理能力が上がると、視力が上がるというのは学術的にも証明されているんですね」
――なんと! いわば、カメラレンズの性能が悪くても、フォトショップの技術で画像がクリアになるようなものですか?
「そのとおりです。そもそもVRというのは、右目と左目で別のものを見て、それを脳で統合しています。その繰り返しで脳の処理能力が上がったという可能性は考えられます」
――逆に眼科医から見て、VRの注意点はありますか。
「子供がVRを見るのはオススメできません。最低でも12歳まではやめたほうがいいです。なぜかというと、人間の目にも成長期があって、物を立体的に見る機能は12歳まで成長するといわれているんです。そういう目が成長しているときにVRに慣れてしまうと、現実の立体が把握しづらくなるという危険性があります」
■平松先生が推奨するガボール・アイとは?
そもそも近年は、近視の低年齢化や近視人口の増加が問題になっている。では、最新の近視治療にはどんなものがあるのか。引き続き平松先生に話を伺った。
「今はいろいろな近視の治療法があります。ひとつは、アトロピンという目薬をさして近視が進むのを抑制する方法。また、オルソケラトロジーという就寝時に装着するコンタクトレンズは、角膜の形状を矯正(きょうせい)する治療法です。
年齢が若いほど効果が表れやすく、子供の近視には最適でしょう。そして、私が今最も推奨しているのは『ガボール・アイ』なんです」
ガボール・アイとは、「ガボールパッチ」という白黒の縞(しま)模様&背景を使った視力回復法のこと。なんとこのガボールパッチを一日3分間見るだけで視力が上がるのだとか。
「ガボールパッチは、ホログラフィーを発明して1971年にノーベル物理学賞を受賞したデニス・ガボール博士が考案した特殊な縞模様です。このガボールパッチは脳の視覚野(しかくや)に強く作用して、脳の処理能力を上げる効果があります。
平均で0.2ほど視力が改善していますね。これはカリフォルニア大学をはじめとする世界トップクラスの研究機関で、科学的に証明されている視力回復法なんです」
このガボール・アイは副作用が一切ないだけではなく、近視と老眼のどちらにも効果があるそうだ。
「ただし、私もそうなのですが、残念ながら視力が0.1以下の方にはあまり効果が期待できません。その一方で、私がやってみて実感したのは、読書スピードが格段に上がったことです。研究では50%程度上がるといわれています」
ガボール・アイ、すごすぎます!
最後に、モデルとして協力してくれたグラドルの小日向結衣ちゃん、ひと言どうぞ。
「VRで視力が回復するかもしれないって、すてきなお話ですね。私はこれまで5本のイメージVRを出させていただきましたが、細かいところまで目を凝らして見てくださったら......別の意味で目が良くなるかもしれませんよ♪」
●平松 類(ひらまつ・るい)
二本松眼科病院勤務。歯切れのよい解説が好評で、メディアにも多数出演。『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』(SBクリエイティブ)は現在15万部を超えるベストセラー!
●小日向結衣(こひなた・ゆい)
正統派美人グラドル。『フィットネスで光る汗、濡れた下着で水遊び。小日向結衣が僕の視線を占領してる、そんな世界。』(ファンタスティカ)など8月に2本のVRをリリース