年間4000万人以上の旅客数を誇る成田空港が先月運用時間を深夜0時まで延長したのに合わせて、10月26日に京成電鉄がダイヤ改正を実施。東京・上野と成田空港を結ぶ特急「スカイライナー」の運行本数を1.4倍に大増発した。以前は40分ほど時間が空くこともあったが、これで日中は20分間隔で運転されるようになった。
これは明らかに、同じく都心から成田空港まで乗り入れているライバル、JR東日本の特急「成田エクスプレス」(およそ30分間隔で運転)を意識してのものだ。
「京成のスカイライナーは京成上野駅から成田空港駅(第1ターミナル)まで最短43分で2520円、JR東の成田エクスプレスは東京駅から成田空港駅(第1ターミナル)まで最短53分で3070円。もともと値段も所要時間も京成が優勢だった上、ダイヤ改正で運転間隔でも上回った形です」(鉄道ライター)
今年3月に発表された「成田国際空港アクセス交通実態調査」によると、空港へのアクセスシェアは成田エクスプレスが14%、スカイライナーが13%と拮抗(きっこう)。しかし、詳しく数字を見ると日本人が成田エクスプレス10%、スカイライナー12%なのに対し、外国人は成田エクスプレス18%、スカイライナー14%と傾向が分かれている。なぜ?
「外国人観光客には『ジャパン・レール・パス』(7日間有効、2万9650円~)という、日本国内のJR線に乗り放題(一部列車を除く)の切符が人気。この切符を使って乗れる成田エクスプレスが優位に立っています」(鉄道ライター)
一方で、訪日外国人の旅行事情に詳しいインバウンド専門家の小野秀一郎氏はこう解説する。
「初めて日本に来る外国人はどこでも行けるジャパン・レール・パスを使いますが、リピーターは『都内だけに行く』など目的がはっきりしていることが多い。そういった人はレールパスではなく、値段が安いスカイライナーを使う傾向があると思います」
つまり、リピーター観光客の獲得がスカイライナー躍進のカギになりそうなのだ。
「改善すべき点もあって、現在スカイライナーは全車指定席。決められた発車時刻に乗り、長旅の疲れのなか重い荷物を持って自分の席を探すのは大変なので、自由席を導入してもいいと思います。ライバルの成田エクスプレスも全車指定席なので、すぐ座れる自由席はアピールポイントになります」(小野氏)
一方で、昨今はより値段の安い「LCCバス」も人気だ。東京駅から成田空港までなら時間は70分ほどかかるものの、1000円ポッキリで予約不要の全席自由も台頭。前出の調査によれば、シェアの5%を獲得している。しかし、京成電鉄にはLCCバスと戦える選択肢もあるという。
「LCCバスは確かに安いですが、定員が四十数名と少なく、渋滞にハマると時間も読めない。それなら京成の『アクセス特急』もオススメです。
座席は通勤列車と同じ横並びのロングシートですが、京成上野駅から成田空港まで1時間程度で1270円。今回のダイヤ改正に合わせて新車の3100形を導入し、スーツケース置き場やフリーWi-Fiを導入するなど、空港利用客への対応もばっちりです」(前出・鉄道ライター)
攻めまくる京成はアクセスバトルに勝てるか?