小沢コージが今年のびんびんカー10台を独断と偏見で決定!

今年も世界中のクルマをがっつり試乗。もちろん、メーカーの人間もねっちねち取材した、日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員のモーター・ジャーナリスト小沢コージが、ガチでびんびんになったクルマを独断と偏見で勝手に決定。今年の10台はどれだ!?

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■軽とコンパクトに半自動運転機能!

【第1位】ホンダ N‐WGN 先進安全「ホンダセンシング」を全車標準装備。ターボモデルの走りは軽のレベルを超越。価格129万8000円~182万7100円

――さぁ、始まりました、今年最も衝撃的かつ刺激的だった新車を選ぶ、第1回「びんびんカー・オブ・ザ・イヤー」。ページの都合もありますので、小沢選考委員長、とっとと1位から発表のほうをお願いします。令和初の1位、忖度(そんたく)のない1位グルマは?

小沢 これはもうホンダ「N-WGN」しかありません!

――えっと......いきなり軽スか? しかも新型N-WGNって、今年7月発売直後の8月は月7000台と絶好調でしたが、9月以降は電動パーキングブレーキの供給不足で販売休止。12月からはその部分はリコールとなりましたが......。

小沢 だからこそあえてよ! というのもN-WGNの衝撃って、マジでスゴかったじゃん。今や新国民車となった2代目「N-BOX」のプラットフォームを使ったセミトールワゴンで、高級車もビックリの乗り心地!

ハンドリングも兄貴分のフィットが必要ないって出来で。特に64馬力のターボがスゴい。今までの軽は下道中心の走りだったけど高速も全然イケる。今年コイツを1位にしなきゃ、どれを1位にするんだと。

――しかし、電動パーキングブレーキは結局リコールになり、信頼性に疑問が残ります。

小沢 電動パーキングブレーキ装着も、先進性と安さを攻めまくった結果なんだよ。なぜ軽に電動パーキングブレーキをつけたかったのか。半自動運転たるオートクルーズ時、あれがないと渋滞時に完全停止してもそれを保持できない。夢の高速ラクチン運転ができないわけ。

しかも今までの電動ディスクブレーキだと高くつくから、電動ドラムブレーキを新規開発し、安くするためにサプライヤーを一社限定にした。完全停止ホンダセンシング付きで129万8000円って価格は正直破格だよ。 

――要するに、攻めた結果のリコールであると。

小沢 そう! N-WGNに乗ってオザワはびんびんになったし、乗れば誰でもびんびんになれる。ホント、いいクルマなんだって!

【第2位】マツダ マツダ3 「アクセラ」から海外名「マツダ3」へ名前を統一して5月に登場。ファストバックの価格は222万1389円~368万8463円

――では、どんどんイキましょう。2位はマツダの「マツダ3」です!

小沢 残念ながら「日本カー・オブ・ザ・イヤー」での戴冠はなかったけど、今、マツダは攻めに攻めている。

――具体的には?

小沢 この斬新なデザインを見よ。超カッコいいだろ? 具体的には、かつてないプレスラインなしの太刀魚みたいな煌(きら)めきの鉄板デザインで、ハッチバックなんて後ろから見ると富士山シルエットだよ。これぞまさに新ジャパネスクデザイン! 

――エンジンも話題です。

小沢 新希薄燃焼エンジン「スカイアクティブX」は、導入の遅れと実際走ったときのノーマルエンジンとの違いが現時点では"希薄"だけど、超サムライ技術であるのは間違いない。

来年、ピュアEVは出すけど、マツダは内燃エンジンでも勝負! 時代の流れに抗(あらが)うその姿がたまらない。時代遅れっぽさに、個別に「おバカー・オブ・ザ・イヤー」の1位も差し上げます。

【第3位】日産 プロパイロット2.0 7月にマイナーチェンジしたスカイラインに搭載された。搭載モデルの価格は557万5900円~644万4900円

――3位は日産の半自動運転機能「プロパイロット2.0」。びんびんカーを選ぶのに、新型スカイラインではなく、なぜ搭載機能推しなんスか?

小沢 断然、プロパイロット2.0だよ。コイツはマジでスゴい技術なんだって。

――具体的には?

小沢 制限速度内だけど、高速道路での"両手放し運転OK"なんだよ。ほとんどマンガの世界だよ、これ。スカイラインじゃなく、価格の安い軽の日産デイズにプロパイロット2.0がついたら即買い間違いナシ!

――なるほど。

小沢 ステアリング操作は俺よりうまい。ミリ波レーダー5個にカメラ7個、高精度3D地図データ初完備で、コイツはもう走るカメラロボットなんだって!

■EV、スポーツ、元国民車も登場!

【第4位】テスラ モデル3 今年、日本でも受注を開始したテスラのエントリーモデル。世界中で人気の電気自動車だ。価格は511万円~717万3000円

――4位はテスラ「モデル3」。国内では今年9月から納車で価格は511万円スタートと、けっこうなお値段ですが。

小沢 確かにお安くないし、日本であまり知られてないけど、今年の全テスラ車の世界販売は、30万台を突破しそうな勢いなの。この数字ってあのポルシェ以上だから。

――新興ピュアEVブランドが、台数でポルシェ超えと。

小沢 特に注目はモデル3。年間20万台突破は、日産リーフが年10万台前後ということを考えると本当にスゴい。実際、モデル3に乗れば未来感ハンパない。加速は兄貴分のモデルSには負けるけど、運転感覚は新しいし、エアコンなんて風向きまでタッチパネルで制御できちゃうからね!

【第5位】トヨタ スープラ BMWとのコラボで誕生した、トヨタが世界に誇るフラグシップスポーツ。価格は499万741円~702万7778円

――なるほど。で、5位は5月発売のトヨタ「スープラ」。

小沢 価格は500万円スタートで、開発生産はBMWにお任せで工場はオーストリア。国内登録は7月が39台、9月156台とマジで少ない。というのも、欧米と日本で生産の少ないスープラを奪い合うの。だから台数が少ないのは仕方ない。

――走りは?

小沢 走ると公道のレーシングカートって感じで異次元のコーナリング性能を見せる。価格は700万円以上に上がるけど3リットル直6ターボは爽快。何よりコイツをトヨタがBMWに造らせたって事実がスゴい。それも世界的には異端な、2470mmのショートホイールベースの2ドアスポーツを実現させた手腕だよね。

あの世界のリオネル・メッシに無理やり右足シュートをやらせるようなモンだから、相当なご苦労があったかと。その部分はMVP!

【第6位】トヨタ カローラ 9月にフルモデルチェンジ。グローバルモデルと共通の骨格を採用した。価格は193万6000円~294万8000円

――6位はスープラに続いてトヨタの新型「カローラ」。

小沢 スープラとは意味合いが違い、カローラって要するに20年前の国民車。その後、ホンダ・フィットやトヨタ・プリウスにその座を明け渡すわけだけど、もしかすると王座に返り咲くかもしれない。

――そのワケは?

小沢 新グローバルプラットフォームと新ハイブリッドシステムを使った走り味の向上と、コネクティッドに代表されるクルマのスマホ化にある。乗ったときの乗り心地、ステアリングフィール、ハイテクにはもうビックリで、牛丼の肉質が格段に上がったというか、国産車の品質アベレージが上がった感アリ。

【第7位】ダイハツ タント 7月のフルモデルチェンジで超絶進化。N-BOXを蹴散らし、販売トップに! 価格は124万3000円~190万8500円

――で、7位はダイハツ「タント」です。

小沢 元祖軽スーパーハイトワゴン4代目タントは、11月に2万台を突破して軽販売トップに立ちバカ売れ! 総合力ではまだまだホンダN-BOXの壁は越えていないと思うが、今後10年のダイハツを支える新型プラットフォームはマジでスゴい。走りのしっかり感、ステアリングの切れでは、ホンダ以上の部分もある!

■クロカン、ベンツ......次点は光岡!

【第8位】ジープ ラングラー ラングラーらしいデザインを踏襲しながらも、11年ぶりにフルモデルチェンジ。価格は490万円~612万円

――8位は元祖アメリカンクロカン4WDの4代目「ジープ・ラングラー」です。

小沢 「なぜジープ?」と思うかもしれないが、今、オザワ的に一番欲しいクルマ! 今年、画期的な改革を断行したのが大きい。ドア、ボンネット、フェンダー、フロント窓枠がアルミ合金化され、リアドアはマグネシウム化されて軽量化されたけど、見た目はやっぱり超カッコいいジープのまま。外づけドアヒンジなんて普通残さないのをちゃんと残している。

――肝心の悪路走破性は?

小沢 ほかの4WDと違い、悪路に強いリジットアクスルを踏襲しつつ、エコな2リットル直4ダウンサイジングターボを入れてモダン化。乗り心地を向上させつつ、悪路走破性は落としていない! 見た目は古くさいけど、中身はモダンなトランスフォーマーみたいな理想的ワイルド4WD!

【第9位】メルセデス・ベンツ Aクラス 4代目となる新型は、新世代インフォテインメントシステム「MBUX」を搭載して話題に。価格は334万円~919万円

――9位は新型メルセデス・ベンツ「Aクラス」です。

小沢 メルセデスらしい本物のクオリティは今や500万円近いCクラスを買わなきゃだけど、新型AクラスはCクラスに近い品質を得たわけ。

――乗り心地もですか?

小沢 乗り心地はもちろん、ボディ剛性、ステアリングフィールは格段に上がっていて、マジCクラス級! 価格が334万円スタートなのもいい。本物のメルセデスクオリティがこのお値段から味わえるってのはスゴい!

【第10位】三菱 ekクロス 4月に5年ぶりのフルモデルチェンジ。電動パーキングブレーキを採用。価格は144万1000円~179万8500円

――10位は軽ハイトワゴンの三菱「eKクロス」です。このクルマは日産デイズとの共同開発で、今回から開発は日産がリードしたって話ですね?

小沢 そのとおり。中身はほぼ日産設計で、その分、軽っぽい走りや質感が減った部分は確実にある。ただし、オザワ的にインパクトがあるのは、断然三菱デザインのeKクロス。

かつてマニアックすぎた三菱デザインが日産傘下に入って逆ギレ気味にショーアップしたのが超面白い! 何よりあのマントヒヒ顔がスゴい! 完全に一線を越えている(笑)。今、メーカーが吸収合併されまくってて残念な面もあるけど、逆にデザインが個性化する部分もあるってことよ。

――どういうことスか?

小沢 eKクロスのデザイナーいわく、「三菱が日産と同じデザインだったら、そりゃ日産の軽を買うでしょ! だったら日産がやらないことをやるしかない」と。実際に、かつて9対1で日産ブランドが売れてた共同開発軽が、今回から7対3ぐらいに変化しているって話を聞いた。デザインの力ってスゴい!

光岡 ロックスター 光岡自動車の創業50周年記念モデルであるロックスターは、限定200台(完売)。価格は516万100円~618万5740円

――最後に次点の発表をお願いします!

小沢 次点は一般人とはまるで関係のない玄人筋がうなる光岡の「ロックスター」です!

――中身はマツダのロードスターですよね?

小沢 そのとおり! たったの200台限定で、価格もベースより約250万円高い510万円強だけど、とにかくデザインのコルベット感がハンパない! 

――コルベット感(笑)。

小沢 (無視して)まさにアメ車好きのオッサンの心をワシづかみってクルマなんだよ! この自動化&電動化の時代に、弱小メーカーでもやれることはある!って証明がこのクルマなんだ。

●小沢コージ 
1966年生まれ、神奈川県出身。青山学院大学卒業後、本田技研工業に就職。90年、自動車誌に転職。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、ボルボ・カー・ジャパン社長の木村隆之氏との共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)ほか。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』レギュラー出演中。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員