年末年始に暴飲暴食しすぎて、生活習慣を見直さなくては!と思っている人も多いはず。そんなときに気をつけたいのが「プリン体」の摂取。そもそも何が体に悪いのか。注意したい食品は? あらゆるプリン体の疑問を徹底研究!
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■今こそ気をつけたい「プリン体」とは何か!?
新年会の飲み会ラッシュもようやく一段落。そんな場でよく聞いたのが「これうまそうだけど、プリン体多そうだからやめとく」「ビールはプリン体多いからハイボールで」といった言葉。30代になると健康診断でプリン体を控えるよう指摘されることも。
また、こうした風潮から"プリン体0"をうたったアルコール飲料も最近増えているけど......。そもそもこの「プリン体」っていったいなんなの!?
痛風専門外来で月1800人以上を診察している両国東口クリニック大山博司先生に話を聞いた。
「プリン体はエネルギーや遺伝物質の原料。もともと体内にも存在していて、代謝で最終的に『尿酸』に変化します。食事で取り込まれたプリン体も肝臓でエネルギーに分解され、その際に尿酸に変化します。
尿酸が体内に蓄積されすぎると尿酸値が高くなり『高尿酸血症』という病気になります。ちなみに『プリン』は化合物質の名前で、お菓子のプリンとはまったく関係がありません」
高尿酸血症になるとどうなるの?
「尿酸値が7.0mg/デシリットルを超えた状態が『高尿酸血症』。この病気自体は自覚症状があまりありませんが、放っておくと、よく聞く『痛風』になります。関節内にたまった尿酸の結晶が剥がれ落ち、異物や細菌が関節内に侵入したと勘違いした白血球が攻撃をしかけ、激しい痛みや腫れを引き起こします」
というわけで、このような苦痛を味わう前に尿酸の敵、プリン体について詳しく知っておこう!
【Part1】プリン体とは何かの基礎知識
まずはプリン体の基礎知識から。
Q.健康な成人男性の1日のプリン体摂取量の目安はどれくらい?
A.「高尿酸血症・痛風のガイドラインでは、1日400mg程度が推奨されています。参考の量として、お茶碗1杯のご飯にはおよそ40mg含まれています」
Q.プリン体を取りすぎない理想的な食生活って?
A.「プリン体量は基本的にタンパク質量に比例します。プリン体が少ない野菜、果物、ナッツ、低脂肪乳製品、全粒穀類を多く取り、塩分、糖分、肉類を減らした食事を心がけましょう。飲酒は1日に日本酒1合程度で、ビールも控えること。
また一般的に肥満傾向にあると痛風リスクが30%アップするとも言われているので、BMIの数値を23以下に保つことも痛風予防につながります」
【Part2】肉とプリン体の関係
それではまず、好きな人が多い"肉"とプリン体に関する疑問から!
Q.肉を食べるときに避けるべき部位は?
A.「肉類はプリン体を100~200mg/100g以上含むものがほとんどで、全般として食べすぎないことに注意です。特に気をつける部位はプリン体を産生する場所である肝臓(レバー)。100gあたりのプリン体が鶏312mg、豚285mg、牛220mgと極めて多いです」
Q.ヘルシーなイメージの鶏ささみにも多く含まれるのはなぜ?
A.「確かに鶏ささみ肉にはプリン体が154mg/100gと意外に多く含まれるので注意。明確な理由はまだ解明されていませんが、脂肪組織よりも筋組織のほうがプリン体含有量は多くなります。同じ理由で牛や豚でもバラやロースよりヒレのほうがプリン体は多いです」
Q.調理方法によってプリン体の摂取量を抑えることはできない?
A.「食品に含まれるプリン体は水に溶けやすい性質なので、煮る、茹(ゆ)でるなどの調理法がオススメ。ただし煮汁やゆで汁には溶けたプリン体が含まれているので、スープまで飲むのはアウトです。鍋の後の雑炊、ビーフシチューなどは溶けたプリン体をそのまま食べることになってしまうので避けましょう」
【Part3】魚介類とプリン体の関係
続いては魚に関するポイントも。
Q.プリン体が多く含まれる魚の共通点はあるの?
A.「回遊魚と呼ばれる魚は筋肉が発達しているので、プリン体が多いと考えられます。例えばカツオは211mg、いわしは210mg、マグロは157mgのプリン体が含まれています。
Q.干物にするとプリン体が多くなるのはなぜ?
A.「干物にすると水分量が減るため、相対的に100gあたりのプリン体含有量が多くなります」
Q.よく甲殻類はプリン体が多いと言われているけど、なぜ?
A.「残念ながら理由はまだ解明されていませんが、種類にかかわらず海老には確かにプリン体が多く含まれます。大正海老には100gあたり273mg、くるま海老には195mgと多いので注意が必要です」
Q.魚卵はプリン体が多いイメージだけど、タラコのプリン体は多くて、イクラのプリン体が少ないのはなぜ?
A.「プリン体は細胞数の多い部分ほど多く含まれます。卵類は卵ひとつ=細胞ひとつです。よって100gあたりで粒の少ないイクラは細胞数が少なくなり、3.7mgとプリン体も少ない。ちなみにイクラよりも同一量での卵の数が多くなるタラコは121mg、キャビアは95mgとプリン体が多くなります」
【Part4】野菜や乳製品とプリン体の関係
タンパク質を多く含まない食品にも、肉や魚ほどではないがプリン体が含まれている。その疑問も見ていこう!
Q.野菜にもプリン体は存在するの?
A.「存在しますが、野菜に含まれるプリン体は肉や魚などの動物性のものに比べて体内に吸収されにくく、尿酸になりにくいと言われています。野菜に関してはプリン体量よりもバランスや栄養価を優先で考えて積極的に摂取してください」
Q.気をつけなければならない高プリン体野菜はない?
A.「強いて言えば、『芽』に注意。例えば、ほうれん草は葉が100gあたり51mgに対し、芽は171mgと多いです。ブロッコリーの新芽のブロッコリースプラウトも多い。芽は細胞分裂が盛んなためプリン体が他のものより多いと考えられています。湯通ししてプリン体を水に溶かしてから食べましょう」
Q.プリン体がゼロのオススメ食品はある?
A.「牛乳にはプリン体が存在しません。それどころか、牛乳に入っているタンパク質『カゼイン』には尿酸の排泄(はいせつ)を促進する働きがあり、尿酸値低下に効果があります。ただ、尿酸値の高い方の半数近くが中性脂肪やコレステロールなどの脂質も高い傾向にあるため、低脂肪牛乳を1日1杯飲むことを推奨しています」
Q.摂取しすぎたプリン体を打ち消してくれるサプリメントはある?
A.「『キトサン』には、食事から摂取したプリン体の吸収を阻害する働きがあります。また『アンペロプシン』にもプリン体から尿酸への分解を防ぎ、さらに尿酸を排出しやすくする効果も。この成分が含まれる市販のサプリメントを服用すれば一定の効果が期待できます。
ただし、サプリメントで期待できる尿酸降下作用はせいぜい0.5mg/デシリットル前後。7.0mg/デシリットルを少し超える程度ならサプリメントで改善が可能ですが、高すぎる場合は生活習慣の改善が前提です」
【Part5】アルコールとプリン体の関係
「アルコール=プリン体が多い」というイメージはあるけど、実は酒自体に含まれるプリン体は最も多いビールで100ミリリットルあたり3~16mgと意外にも少ないのだ! それでも尿酸値のために控えなければいけない理由を聞いた!
Q.アルコールが尿酸値に及ぼす影響って?
A.「プリン体の摂取から少し話はそれますが、アルコールには尿酸値を高めてしまう3つの作用があります。
ひとつ目は肝臓で分解されるときに老廃物と一緒に尿酸を作り出す作用。アルコールを分解する際、肝臓ではエネルギー源であるATPを消費し、ATPの原料となるプリン体分解も促進するので、尿酸を作り出してしまうのです。
ふたつ目は尿酸を排出する働きを弱める作用。アルコールを摂取すると、尿酸の排出を阻害する『乳酸』が増加してしまいます。
3つ目は利尿作用。飲酒時の尿には尿酸が含まれにくく、さらに利尿作用により体内の水分量が減少し、尿酸濃度が高くなります。特にビールは利尿作用が高いので注意。飲む量は1日1本(500ミリリットル)以内に抑えましょう。
焼酎、ウイスキーなどは蒸留することでプリン体が少なくなっていますが、焼酎は1/2合、ウイスキーはダブル1杯、日本酒は1合、ワインはグラス2杯以内が一日の目安です」
Q.地ビールはプリン体が多く、普通のビールは少ないなど差が見られるのはなぜ?
A.「ビールのプリン体は麦芽由来なのですが、地ビールでは麦芽が多く含まれていたり、焙煎方法によってプリン体が多くなっているものがあります。どうしても飲みたい場合はプリン体0表記のビール系飲料やビールならアルコール度数が5%以下のものがいいでしょう」
Q.酒のシメにラーメンかスイーツ。選ぶならどっち?
A.「どちらも良いとは言えませんが......。もしどうしてもラーメンを食べるならスープを残してください。スイーツもプリン体は少ないですが、糖分は間接的に尿酸の産生に関わることもわかっています。タンパク質が少ないからといって甘いものも食べすぎないようにしてください」
以上のように、プリン体摂取注意のキーワードをあらためてまとめると「タンパク質を取りすぎないよう意識して、動物の内臓系は避ける。牛乳をこまめに飲む」。これを意識するだけで、健康診断の数値も少しは改善されるはずだ!