『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は鉄道ファンの彼女が「鉄道なくなるもの、生まれるもの」について語る。
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昨年10月、「南海電鉄6000系」で初の廃車が出ました。6000系は1962年に運転が開始された車両で、それまで全72両が現役で走っていました。
鉄道車両の寿命は40年程度といわれるなか、全車両が50年以上走っていたのは非常に珍しいこと。たとえるなら、モーニング娘。'20に中澤裕子さんら1期生から15期が全員いるような光景を想像してください。......それくらいすごいんです。
この6000系は、南海初のオールステンレスの車両でもありました。ドアが片開きになっているんですが、「バン!」と閉じる音がまぁうるさい(笑)。いわゆる"爆弾ドア"ですね。本来、片開きドアは開閉が遅いので通勤型車両には向かないといわれていますが、その開閉のスピードをなんとか速くして、両開き並みの開閉時間を実現したそうです。
ほかにも、車両内の窓が2段式になっていたり、行き先表示が後づけ感満載だったりするところも好きです。
日本の高度成長期の大量輸送を担ってきた6000系は、今後2023年までに全車両が置き換えられることになりました。廃車になるのも仕方ないですが、何両か別の鉄道会社でセカンドライフを送ってほしいです。
西武、京阪、東急などの往年の車両が集まる富山地方鉄道なんかどうでしょうか。または、錆(さ)びないステンレスの特性を生かして、海沿いの路線とか。
一方で、新しく生まれるものもあります。珍しいところだと、神奈川県横浜市、みなとみらいの新たな交通サービス「ヨコハマ・エア・キャビン」。これはロープウエーなんですが、法律的には「索道」といって鉄道事業法の管轄になるので、これも鉄道の一種ということで。
これは地上最大40m(!)の高さを走行し、桜木町駅前から運河パークまで約630mをつなぎます。この地域は、電柱や首都高の地中化にこだわり、開放的な港の景観の保護に注力してきたので反対意見も出ています。それでも個人的には、都市と交通の一体化に胸が熱くなるタイプなので、海の上を走る姿を見てみたいです。
平地をつなぐ都市ロープウエーは世界的にも珍しいので、「話題になるかもよ!?」と交通マニア目線から小さな声で言ってみたり......。実際、赤レンガ倉庫に近い運河パークと桜木町駅は地味に遠いので、多くの人が移動しやすくなりそうです。
アトラクション感のあるこのロープウエーに乗って、そのまま「よこはまコスモワールド」で乗り物を楽しんでもいいな、と思っていたら、実はこのロープウエー、コスモワールドを運営する会社が計画しているものらしいです。作戦にまんまと引っかかってしまった感があります(笑)。
このヨコハマ・エア・キャビンは、2020年度末(2021年春)に開業予定。開業はすでに一度延期しているので、いったいどうなるのか。地元民ではない私も、勝手に期待しています。
●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21時~)にレギュラー出演中。市川紗椰初の鉄道本『鉄道について話した。』(集英社)3月5日(木)発売予定。"錆びない鉄人"といわれるほど頑丈な6000系の最初の車両は、走行距離が地球150周分にも及ぶそう。Official Instagram【@sayaichikawa.official】
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