メキシコシティの屋台より、モツ煮込みがメインのギサドと、ソーセージをみじん切りにしたグリーンチョリソーのタコス

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、彼女の大好物・タコスについて語る。

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以前、私の大好きなタコスについて語りました。その第2弾として、本場メキシコのタコスをご紹介したいと思います。

パリパリに油で揚げたタコシェルがよく見られるアメリカに対して、メキシカンタコスはトウモロコシか小麦粉の柔らかいトルティーヤを使います。具材やサルサの種類の豊富さも特徴です。

屋台の定番のひとつは、スパイスとジュースでマリネした豚肉をドネルケバブのように回転させながら焼き、薄く切って焼きパイナップルをのせた「アルパストール」。タコス初心者がメニューで迷ったら、とりあえずこれを頼むことをオススメします。

また、豚の内臓や脂身などをラードやハーブ類で煮込んだ「カルニータス」も、タコスデビューする方に最適です。

ほかにも、地中の穴の中で葉に包んで蒸したほろっほろの肉を使った「バルバコア」や、サイコロステーキ状の牛肉を入れる「カルネ・アサーダ」、牛の脳みそからタンまで頭部をすべて食べる「カベサ」など、地域によって無数の種類が存在します。

伝統的なもの以外でも、フルーツやシメ鯖(さば)、キムチを入れたものまであります。トルティーヤに挟みさえすれば具材はなんでもいいので、タコスとはもはや宇宙です。そして、その「計算されたカオス」も魅力です。一見雑な料理にも思えますが、おいしいタコスはよく計算されていて、奥深いです。 

私の考えるタコスの大切なポイントはコントラスト。モチッとトルティーヤに、ジュワッとしたお肉、そしてシャキシャキのタマネギなど、食感のコントラストが重要です。味も、辛さ、甘さ、酸味、香ばしさ、うま味など、ひとつのタコスの中にたくさん詰まっていることも大事です。

ひとつの要素そのものだけでもおいしいけど、絶妙な組み合わせによって魔法が起こる、いわゆるマリアージュを楽しむのがタコスです。

もちろん、トルティーヤも大切。「トルティーヤがうまい!」と思ったことがない人は、まだおいしいタコスに出会ったことがないのかもしれません。私も家でトルティーヤ作りをしているんですが、難しい! しっとりだけどもっちりしすぎてなくて、トウモロコシの風味が強いものを目指してます。

今、日本でもアメリカンタコスは広がってきていますが、メキシカンタコスはなかなかおいしいものに出会うことができません。"ザ・メキシコ"というお店もまだ発見できていないので、ご存じの方がいらっしゃったら教えてください。

ちなみに、米マサチューセッツ州ケンブリッジの「NACO TACO」というお店には、滞在した4日のうち3日足を運んだことがあります。

通常のタコスはもちろん、アヒルのコンフィーが入ったおしゃれタコスや、アメリカではやっている豆腐を使ったベジタリアンメニューもありました。いっそこのお店でバイトをして、レシピを盗んで日本でタコス屋を出店したいくらいです。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21時~)にレギュラー出演中。市川紗椰初の鉄道本『鉄道について話した。』3月5日(木)発売予定。スモーキーな風味のグアヒロチリが手に入らず、無理やりハラペーニョを燻製してみたら体中の粘膜がやられた。Official Instagram【@sayaichikawa.official】

★3月5日(木)発売予定の、市川紗椰初の鉄道本『鉄道について話した。』(集英社)は、全国書店、ネット書店などで絶賛予約受付中!

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