3月17日、牛丼チェーンの松屋が「カチャトーラ定食」(税込790円)の販売を開始した(一部店舗は除く)。カチャトーラとはあまりなじみのない料理名だが、松屋によると「イタリア語で『猟師風の』という意味のイタリア伝統料理」で、「とろ~りチーズをのせた鶏のトマトソース煮込み」のこと。
実は、松屋は今年1月にも「シュクメルリ鍋定食」という、こちらもあまりなじみのない料理を提供して話題になった。シュクメルリとは、鶏もも肉にニンニクとチーズを加えてホワイトソースで煮込んだジョージア料理のことだ。
なぜ、松屋はこうした"世界のマイナー料理"を次々と販売するのか。フードジャーナリストのはんつ遠藤氏が解説する。
「今年は五輪イヤーということでインバウンド需要も考え、海外の料理を提供するお店が増えているんです。例えば『富士そば』はシンガポール料理をベースにした『肉骨茶(バクテー)そば』を出していますし、『サイゼリヤ』はラムの串焼きをメニューに入れています。
その流れで松屋も海外の料理に目をつけたのですが、違っていたのは"あまり知られていない"海外の料理を売り出したこと。するとお客さんは『カチャトーラってなんだ?』と興味を持ちます。それでいて、実際に食べてみるとみんなが知っている味に近いため満足できるんです。
何しろ、カチャトーラを言い換えると『鶏肉のトマトソース煮』ですし、シュクメルリは『鶏肉のクリーム煮』ですから」
日本人が好きそうな味で、かつ、まだあまり知られていない料理を探すことに松屋は長(た)けているということだ。
「それに、鶏肉に絞っているところもうまい。松屋は牛丼店なので、メインの商品とぶつからないようにしているし、鶏肉は肉のなかでも原価が安いので価格を抑えられる。さらに、鶏肉の煮込み料理に絞ることでオペレーション的にも手間がかかりません。鶏肉を焼く料理だったらけっこうな時間がかかるので、ほぼ全店舗には導入できません」
そうなると、松屋の世界のマイナー料理・第3弾が気になるところだ。
「ポイントは鶏肉の煮込み料理で、ご飯に合うということです。今、僕が目をつけているのはセネガルの『プレヤッサ』。これは鶏肉をレモン汁とタマネギのソースで煮込んだ料理で、レモンの酸味とニンニクが食欲を誘います。対抗がアメリカ・ルイジアナ州の『ガンボ』。鶏やソーセージなどの肉をオクラやタマネギなどの野菜と煮込んだものです。
チュニジアの『オッチャ』も、鶏肉のトマト煮を卵でとじた料理でとてもおいしいんですが、カチャトーラと似ているので、ほかの料理を1回挟んで7月くらいに出してくる可能性があります」
カチャトーラの次の世界マイナー料理はなんなのか。暗い話が多い昨今だが、いろいろ予想するだけでも、ちょっとは楽しくなるはずだ。