ソロ(ひとり)キャンプするために山を買ったお笑い芸人・ヒロシ。そこはどんな土地なのか? ちゃんとキャンプできたのか? 汗と涙の開拓物語を語った!
■崖の土砂崩れは絶対避けたかった!
「昨年の9月に山を買いました」
――えっ!? なんでまた。
「僕、大勢でするキャンプが苦手で、ソロキャンプを始めたんです。そしてキャンプの仕事が増えてくるとキャンプ場で『ヒロシがいる!』ってバレることが多くなった。だから、最初は『無人島にしようかな』って値段を調べたら、数億円もするんです。さすがに、それは無理なので山にしました」
――山って、どうやって買うんですか?
「山の不動産屋さんみたいなのがあるんですけど、家を買うみたいに正確に区画が決まっている土地は少ないんです。だいたい、この辺りからこの辺りという感じ。実測していない。すると『後からもめるんじゃないか』と不安になりますよね」
――そうですね。
「だから『ちゃんと杭(くい)を打って実測してください』とお願いしたんです。すると『その費用が数百万円ほどかかりますがいいですか』という話になる。
ほかにも、例えば山の上の見晴らしのいい土地を買ったとするじゃないですか。でも、そこに行くには麓(ふもと)から林道を登っていかなければいけないんです。すると、その道は他人の土地だったりするし、無断で通れば不法侵入ですよね」
――そうなりますね。
「山を買うって、いろいろ大変なんです。あと、これは聞いた話ですが、自分の持っている山の竹林が近くの民家のほうまで伸びてしまい、民家の人から『邪魔だから切ってください』と言われることもあるそうです。それが規模にもよりますが数百万円はかかると。
しかも、一回伐採すればそれで終わりではなく、竹なんて何度も生えてきます。だから、そういう悪条件の山だったら、お金を払ってでもいいから手放したいと思う所有者は多いんです。それで、意外と安く売っていたりするんです」
――じゃあ、ヒロシさんが山を買うときに、一番気をつけたことはなんですか?
「やっぱり土砂崩れですね。自分の土地の崖が崩れて、公道をふさいだら、その土砂は自分で取り除かなくてはいけない。ましてや土砂が民家に流れていったら大変なことになります。
だから、僕はどうしても崖のある土地を買いたくなかったんです。僕が買った土地も最初は崖の部分と平坦(へいたん)な部分がセットになっていました。それで、『崖の部分は買いたくありません』と言って断ったんです。そうしたら、その後に崖の部分は省いていいということになったので『じゃあ、買います』と言って購入を決めました」
■ササ、ヒル、動物と格闘する日々!
――でも、山を持っているってなんかロマンがありますよね。それに家はかなり高いけど、山は安い土地もあるわけですから、僕たちでも買えないことはない。
「土地自体は家より安いかもしれないけど、その後にかかるお金もあります」
――あ、税金とかですか?
「いや、山林の税金はかなり安いですよ。ただ、そこに建物を建てると宅地になるから税金が高くなる。僕はキャンプしかしないので、家を建てる必要はないんです。ただ、草木が生えてるから、それを刈らなければいけない。
僕の土地って背の高いササが生えているんですよ。ササって刈り取っても根の部分が残っていて、踏んだら足に刺さるんです。痛いんです。だから、根の深い所までスコップを入れて根を掘り起こさなければいけない。
それに山には月に1回も行けないから、その間にまたササが生えてくる。こんなことばかりやっていたら意味がないので、今度は小さな重機をレンタルしてササを一気に取ろうかなと思ってます。でも、その前にまずは重機の資格を取らなくちゃいけない。こんなふうにいろいろとお金がかかるんです」
――確かに整備費がかかりますね。
「また、ササの根がきつい場所のほかに川沿いにも土地があって、僕は本当はこの川沿いでキャンプしたいんですけど、そこにはヒルが山ほどいるんです。
冬の間は活動しないけど、暖かくなってくると出てくるんです。その場所に足を踏み入れると5秒くらいで集まってくるんですよ。今後、何年かかるかわからないけど、このヒルもなんとかしなくちゃいけない」
――どうするんですか?
「葉っぱに卵がついているので、まずは草を刈って、あとは日当たりをよくする。そのために木を間引く」
――間引くというと?
「よけいな木を切るんです。例えば、木の枝が3つに分かれていたとすると、1本の木に養分を集中させるためにほかの2本をあえて切るんです。
でも、それをするとなると今度はチェーンソーがいるでしょ。それだけじゃなくて、ヒルって野生の動物が連れてくるんですよ。山の中で動物についたヒルが僕の土地でポトッと落ちる。そして卵を産んで繁殖する。
だから、本当は動物が入らないように柵を作ればいいんですけど、どんだけ時間と労力がかかるんだって話です。本当にまだまだわからないことだらけだし、慎重に作業したいので、詳しい人に教えてもらいながら作業しています」
――なんか、大変ですね。でも、将来的にそこで畑とかできたらいいですよね。
「やりたいなとは思いますよ。でも、実際問題、動物がたくさんいますから。そんな所で畑なんかやったら、すぐに作物を食べに来るでしょ」
――なんかイメージしていた山のキャンプと少し違ってきました。
「でしょ」
――そういえば、山を買ったらご近所さんとかにあいさつに行くんですか?
「もちろん最初にあいさつに行きました」
――そうですか。
「たき火をしていたら煙が上っていくわけです。それを見たご近所さんが火事だと勘違いされるといけないですよね。だから、山に行くたびに消防署に行って『今日、たき火をします』と連絡する必要があります。
とにかく、山を買ってまだ1年もたっていないので、日々勉強をしています。これから先どんなことが起きるか正直わかりません。だから『ヒロシが山を買って、自分の山でソロキャンプをしてる』っていうと聞こえがいいかもしれませんが、それなりに大変なんです」
■ヒロシ(Hiroshi)
お笑い芸人、ソロキャンパー。「迷宮グルメ異郷の駅前食堂」(BS朝日、毎週火曜22時~)などに出演中。近著に『ひとりで生きていく』(廣済堂出版)など