■冷凍すれば食品はどれくらいもつ?
コロナの影響で外出自粛が続く日々。自炊する機会も増えて、肉や魚、作り置きのおかずを冷凍したりと冷凍庫をフル活用している人も多いはず。そんなとき、冷凍に関する疑問がふと湧いてくるが。いまさら誰に聞いていいのかわからない、そんな小さな悩みに答えてもらった!
そもそも、なぜ冷凍すると長期間保存できるの?
答えてくれたのは、冷凍食品の専門家で東京海洋大学特任教授の鈴木徹氏。
「まず、食品が食べられない状態というのは『腐敗』と『劣化』を指します。腐敗とは食品についた微生物が増えて毒素を作ること。劣化とは食品の化学反応による栄養分の変化。酸化やタンパク質の変化により、栄養分がなくなったり、見た目や味が変わってしまうことです。
家庭用冷凍庫で冷凍すると、食品は-18℃以下になります。微生物は-15℃以下で動きが止まるので、腐敗することはなくなる。また、食品の化学反応の速度も緩やかになるので、劣化のスピードも遅くなるのです」
じゃあ、冷凍した食品の賞味期限は?
「前述のように、冷凍している間は微生物の動きが止まっているので、実は半永久的に腐りません。
しかし品質の劣化は徐々に進行します。冷凍庫内のにおいが移ったり、乾燥して味が落ちたり。なので最大1ヵ月を目安に消費を心がければ、冷凍前と変わらないおいしさではないでしょうか。ちなみに冷凍中の微生物はあくまで眠った状態。解凍するとまた動き始めるので、解凍後はすぐ食べることが鉄則です」
というわけで、食品別の疑問を詳しく教えてもらった!
■基本の冷凍保存はラップと保存袋で密閉
まず、冷凍する機会の多そうな「炊いた米」の冷凍について。上手な冷凍法は?
ここからは食品保存アドバイザーで料理研究家の島本美由紀氏にも加わっていただいた。
「基本的にどの食材も冷凍する際のポイントは同じで、空気に触れる面をなくし乾燥を防ぐこと。食品をラップで包むだけだと、空気接触と、庫内のにおいを吸収するリスクが上がるので、さらに冷凍用保存袋に入れることをオススメします。また、ご飯の解凍は常温解凍だとでんぷんが劣化しやすい0~3℃の時間が長くなりパサつくので、電子レンジで素早く加熱しましょう」
ちなみに、コンビニの冷凍チャーハンは賞味期限が10ヵ月くらいだけど、自分で作ったチャーハンも冷凍すればそれくらい長くもつもの?
「コンビニの冷食は特殊な冷凍庫で急速冷凍されているので、その賞味期限が可能なだけ。家庭の冷凍庫では急速冷凍に限度があり、業務用のクオリティに達するのは不可能。やはり1ヵ月の保存が目安です」(島本氏)
続いては肉類。
冷凍するなら、生肉と調理済みの肉、どちらがいい?
「微生物はどちらも眠るので、日もちは変わりません。加熱済みの肉は箸をつけていなければ、ラップと保存袋で保存し、生肉なら解凍後どう使うかを考えて冷凍すればよいでしょう。
例えば、鶏肉ならひと口大に切り、ひき肉なら保存袋に入れて上から箸などで押してへこみをつけてから冷凍すれば、解凍するときパキッと割って使えます」(島本氏)
冷凍した生肉を解凍したとき生臭くて赤い血のような汁が出るけど、これって何?
「血ではなく、肉のタンパク質やうま味成分が含まれる『ドリップ』という細胞の組織液です。特に電子レンジを使った解凍だとこれが出やすい。
電子レンジで解凍すると、マイクロ波が届く表面だけ解凍される加熱ムラが起き、熱が当たった部分だけ肉が縮みます。縮むということは肉が絞られている状態ですから、うま味成分が汁となって流れてしまうのです」(鈴木氏)
ドリップが出ないようにするためには?
「なるべく薄く均一に平らにして冷凍することと、使用するときは凍った状態から鍋やフライパンで加熱してしまえば、うま味が逃げ出すことはありません」(鈴木氏)
■刺し身はヅケ冷凍。貝類は氷漬けでうまさUP
次は魚介類。
肉と同様、調理済みの魚も生魚も、冷凍できる?
「冷凍できますが、魚に含まれる脂は肉と比べて劣化しやすい不飽和脂肪酸を多く含みます。特にマグロやカツオなどの赤身魚は脂の量が多く酸化しやすいため、家庭の冷凍庫だと3週間くらいで消費するのがオススメ」(鈴木氏)
生魚の上手な冷凍方法は?
「刺し身の切り身は空気に触れる面が大きい上に繊維が切断されていてもろいので、解凍後崩れやすい。冷凍時に醤油2:みりん1の混合液でヅケにすれば、解凍後もおいしく食べられます」(島本氏)
アサリやシジミなどの貝類も冷凍できるの?
冷凍生活アドバイザーの西川剛史氏にもお聞きした。
「できます。むしろ冷凍することで細胞の繊維が崩れ、エキスであるだしが出やすくなるので、味噌汁を作るときなどは冷凍するほうがオススメ。ただ、貝類は乾燥しやすいので、塩水に3、4時間漬けて砂抜きした後に、タッパーに水を入れてそのまま氷漬け冷凍してください」
さらに、シジミには冷凍することでこんなメリットも。
「アミノ酸の一種であるオルニチンが約8倍になり、栄養価が上がります。火を通さず、生きたまま冷凍することで、生体防御が働いてアミノ酸が多く分泌されるからです」(鈴木氏)
冷凍したほうがいい食材があったなんて驚きだ!
■生野菜は冷凍できるの?
ところで野菜も冷凍可能?
「どんな野菜でも冷凍できますが、解凍の際に水分が分離し、フレッシュさがなくなるので、加熱して使う前提で考えましょう」(鈴木氏)
そもそも野菜は、生のまま冷凍してOK?
「生のまま冷凍すると、細胞のシステムが崩れ、解凍後に野菜を劣化させる酵素の働きが強くなり、色やにおいが早く悪くなってしまいます。
冷凍前に加熱することで酵素の働きを止められるので、食べやすい大きさに切った後、湯通しするか電子レンジで1分ほど加熱してから冷凍してください」(鈴木氏)
■冷凍で進化する食品。NGな食品
多くの食品が冷凍できることはわかったけど、貝類みたいに冷凍するとメリットがある食品はほかにもある?
「菓子パンを冷凍するとアイスのようにいい食感になるものもあります。チーズ蒸しパンはチーズケーキアイス、クリームパンはシューアイスのような食感に。個包装パンの袋は密閉されているので、開けずにそのまま冷凍OKです」(西川氏)
さらにこんな食材も。
「卵を割らずに殻のまま保存袋に入れて冷凍し、自然解凍すると黄身が濃厚に。卵かけご飯にするとリッチな味わいを楽しめます」(島本氏)
逆に冷凍できない食品は?
「果物は解凍後の利用が難しいです。凍ったまま食べるか、解凍せずジュースにする分にはOKですが、野菜同様、解凍するとフレッシュさはなくなり、劣化させる酵素の働きも活発になるので、味が悪くなります。加熱して食べる果物料理も少ないのでオススメできません。
あと、解凍が一番難しいとされているのは、すし。常温解凍だと米がパサつくし、電子レンジだとネタが加熱されてしまいますから」(鈴木氏)
これらの技を覚えておき、外出自粛下の冷凍庫フル活用生活を乗り切ろう!