新型コロナウィルス感染拡大予防のため緊急事態宣言が延長されるなか、医療や福祉の専門家で構成する「教えて!『かくれ脱水』委員会」が「医師たちが緊急提言:このまま熱中症シーズンを迎えたら、医療現場は崩壊! 熱中症対策を全国民で!」をリリース。感染拡大防止のために付けているマスクなどが高める熱中症の危険性とともに、熱中症が新型コロナウイルスの影響でひっ迫する医療現場を追い詰め、医療崩壊を招く可能性を危惧している

「教えて!『かくれ脱水』委員会」は2012年に「熱中症者をゼロにしたい」という理念のもと、発足した団体。兵庫医科大学の特別招聘教授・医学博士である服部益治氏や、済生会横浜市東部病院の谷口英喜医師を筆頭に、13名の医療関係者で組織されている。

総務省消防庁熱中症情報によると、2019年の熱中症による搬送者は5月から8月までに全国で7万1317人、18年は9万5127人だった。5月1日には全国的に夏日となり、すでに熱中症シーズンは始まっているのだ。

そんななか同委員会の提言によると、新型コロナウィルスの影響によって例年以上に熱中症リスクが高まっているという。

ひとつ目の理由が、長らく続く「外出自粛」だ。

通勤や買い物など日常生活において運動する機会が激減。遠隔健康支援サービス「CAReNA(カレナ)」の調査では、緊急事態宣言後の在宅勤務者における約半数の歩数が1日4000歩未満に。他社のデータの多くでも、外出自粛による運動不足傾向が示されている。

同委員会によると、筋肉は体を動かすだけでなく、水分を貯める役割も果たしている。運動不足によって筋肉量が減れば、身体の水分量も減ってしまうという。つまり脱水状態になりやすく、熱中症の危機が高まるのだ。また、運動しないことで、体が暑さになれたり、汗をかいて体温を下げるなどの「暑熱馴化」ができなくなっていることも脱水を促進する。

さらにもうひとつの理由が、多くの人々が付けている「マスク」だ。

マスクを付けて過ごしていることで、体内に熱がこもりやすくなる。一方でマスク内の湿度があがるため、喉の渇きを感じにくくなる可能性も。熱中症対策において水分補給は重要だが、マスクによって阻まれてしまい、脱水を招きかねないのだ。

また同委員会は、例年にはない熱中症の"やっかいさ"も指摘する。

まず脱水状態は免疫を低下させ、新型コロナの感染率をあげてしまう。そして熱中症の症状である倦怠感や発熱、頭痛などは、新型コロナの初期症状にもあり、素人には見分けが難しいのだ。

さらに新型コロナで多くの医療現場がひっ迫されている最中、熱中症で搬送されるとその対応にリソースを回すことになり、医療崩壊に加担する可能性もある。またもし万が一、新型コロナだった場合、院内感染の危険性も高めてしまうことになる。

初夏となり暑い日が続く今、「熱中症に対して自分にできることをやることが、自分の生命を守り、医療を守ることになる」(緊急提言より)のだ。

同委員会では熱中症予防として下記の3つの対策を推奨。新型コロナの感染拡大を防ぐだけでなく、熱中症にも気を付けて健康に過ごそう。

1.活動前に、適切な水分補給と、必要に応じて水分や塩分の補給ができる準備をする。活動中や終了後にも適宜補給をおこなう。マスクをしていると喉の渇きに気づきにくくなります。例年以上に、意識して水分補給を。

2.人混みを避けた散歩や室内での軽い運動で、涼しいうちに汗をかく練習をし、暑さにカラダを馴れさせ、体温調整などが機能するようにしておくことも重要です。

3.環境省が毎日発表している、暑さ指数(WBGT)をチェックし、その日の行動指針にする。