持論「山椒を入れればなんでもおいしくなる」が立証された、日本酒山椒
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、「ちょい足し創作酒」について語る。

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外出自粛に伴い、家でのお酒の消費量が増えた人が多いようです。実際、マンションのゴミ置き場の空き缶の数や、スーパーのおつまみコーナーの品数が目に見えて増えているし、友人の「二日酔い以外することがない」という迷言は脳に焼きつけられました。

オンライン飲み会のような新たな宅飲みスタイルも生まれましたが、相変わらずトレンドにうまく乗り切れない私は、"ちょい足し創作酒"というひそかなお酒ブームを開拓しました。

きっかけは、自作の「日本酒山椒(さんしょう)」。私はなんでも山椒を足せばおいしくなると思い込んでいるのですが、山椒の葉漬けや実山椒を漬け込んだ実山椒焼酎を切らしたある日、「山椒の粉を直接お酒に振りかければいい!」と思いついて作ったのがこのお酒です。

芋焼酎のロック(この場合は香りが控えめで味もさっぱりしている「三岳」を使用)に粉山椒をかけると、香りが鼻から抜けてちょうどいい刺激をくれる上、山椒の消化促進や抗炎症作用でスッキリした気分も味わえました。

焼酎を日本酒の熱燗(あつかん)に替えると香りがさらに強調され、まろやかさの後にやって来る山椒のピリリ感がたまりません。山椒の代わりに唐辛子をかけるのもオススメ。体がポカポカと内側から温まるし、唐辛子の辛味と日本酒の甘味の相性は間違いないです。

その後、ちょっとでもお酒の罪悪感を減らしたい、少しばかりパンチを加えたい、というふたつの柱からなる創作お酒実験を開始しました。

まず良かったのは、レモンサワーに細かく刻んだパセリを入れる、「レモンパセリハイ」。パセリの苦味と心地よい青臭さが感じられ、清涼感あふれる味わいに。パセリには鉄分やビタミンCなどの抗酸化ビタミンや悪玉コレステロールを減らす働きが含まれているので、免罪符としての役割もバッチリ。

ほかには、薄切りと潰したミョウガにジンとトニックを注ぎ、少し時間をおいて作った「ミョウガジントニック」。ミョウガの独特な風味とジントニックの苦味、炭酸の爽快さの相性がクセになります。

ミョウガには体の中の余分な水分を排泄(はいせつ)してくれるカリウムが多く含まれているので、アルコールvsミョウガでむくみプラスマイナスゼロになることを願って飲みました。

さらに、"おやつ酒"にも挑戦しました。次世代のガリガリ君サワーを生み出すべく、ビールにクーリッシュ、焼酎にアイスの実などを入れましたが、新たな食体験にはたどり着けず......。しかし、ハリボーグミをお酒に漬け込む「酔っぱらいクマ」の噂を聞き、ひらめいたのは、コアラのマーチにラム酒を注いだ、通称「酔っぱらいのマーチ」です。

そのままだと一体感がないので、コアラのマーチにホットケーキミックスの衣をまとわせ、油で揚げ、その揚げコアラのマーチ(字面だけでゾッとする)にラム酒をかける。

ちょい足しの領域を超えているのと、「酔っぱらいのマーチ」というネーミングを成立させたかっただけかもしれませんが、出来上がったのは最低かつ最高の逸品。お試しあれ。

マジメな提案だと、緑茶ハイに梅干しがオススメ。二日酔い知らずな組み合わせで、今後お店でも実践予定。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。コアラのマーチを揚げながら、揚げオレオが存在するアメリカの血が騒いだ。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!