イケメン製作所代表の手塚拓海さん イケメン製作所代表の手塚拓海さん

街中のドラッグストアに男性化粧品が並び、男性ファッション誌には当たり前のようにメンズ美容のページが掲載される。いまや美容に興味を持ち、そしてメイクをする男性は増えるばかりだ。

7月6日発売の『週刊プレイボーイ29号』では「メンズメイクでできる男になる」のタイトルでメンズメイクを特集。メンズメイク専門サロン「イケメン製作所」の代表者にして、メンズメイクの第一人者である手塚拓海氏の監修のもと、火災報知器、パニーニと言った人気芸人をモデルに、自分でできるメンズメイクのテクニックを掲載している。

手塚氏に、メンズメイクの現状やその特徴、また手塚氏自身が思う男性メイクの世界についてなどを聞いた。

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――ズバリ、男性メイクってどうなんでしょうか? ドラッグストアに行くと男性用化粧品が売っているなど、以前より身近になってる気がするんですが。

手塚 御認識の通り、メンズ美容の市場は確実に大きくなっています。イケメン製作所は2017年9月にオープンしましたが、おかげさまで売上は右肩上がりです。現在、お客様の数はリピーターのお客様を含め、月間のべ2000~2500人。土日はありがたいことにキャンセル待ち状態です。さらにコロナ禍以降はお客さんが増えましたね。

――コロナ禍以降に? ずっと人と会うこともなかったし、むしろ見栄えなどどうでもよくなった気もするけど......。

手塚 私たちも当初は同じように予測していました。ところが実際にはメンズメイクをされるお客様の数が増えた。そこで尋ねたところ、意外な答えが帰ってきたのです。「ZOOMなどリモート会議で自分の顔を見て、これはなんとかしなくちゃ」と思われたそうです。実際、ご自分でメイクが出来るようになるためのメイクレッスンの申し込みも急増しています。

――お客さんはビジネスマンが多いんですか?

手塚 メインは20代後半から30代半ばのビジネスマンです。でもお客様の層は幅広く、80代のアクティブシニアから、中学生までご来店されます(笑)。ご来店される理由も就活や営業、そしてYouTubeなどの仕事関係が約半分。あとはデートやお見合いなどプライベートの利用です。

イケメン製作所ではメイク、眉毛、ヘアまで総合的にしてくれる。モデルはお笑いコンビ火災報知器の高松信太郎さん。メイクしてどうなったかは『週刊プレイボーイ29号』をチェック! イケメン製作所ではメイク、眉毛、ヘアまで総合的にしてくれる。モデルはお笑いコンビ火災報知器の高松信太郎さん。メイクしてどうなったかは『週刊プレイボーイ29号』をチェック!

――皆さん、「ココをこうしてほしい」といったように、けっこう具体的にメイクの要望をするんですか?

手塚 そうですね、大体は漠然と「イケメンにしてほしい」と来られますね。なので、まずカウンセリングをして、お客様がカッコいいと感じるお顔を導き出した上で、その顔との差分を埋めるメイクをさせて頂いています。

皆さん、知っていそうでご存じないのが、女性が男性の顔のどこに最も注目しているか、ということです。私たちが2017年に実施したアンケートでは、1位は髪型で31%、2位が目元で27%。髪型と目元の印象だけで6割の印象が決まっています。メイクと言うとすぐにファンデーションを思い浮かべる方が多いのですが、実際には肌の印象が占める重要度はわずか9%なんです。

イケメン製作所ではこの顔の印象に大きな影響を与える、眉毛と目元の周辺は丁寧に重点的にメイクをしていきます。眉の太さは10mm前後しかないので、例えばたった1mm細くするだけでも10%削ることになる。同じように角度もまたわずか1°でも角度も変えると印象は一気に変わりますから。

――確かに細眉と太眉とでは、印象はまるで違いますよね。そもそも男性メイクと女性メイクってどう違うんですか?

手塚 原則として、男性のメイクは身だしなみのレベルを高めるメイクが主流です。男性は女性と違って、素顔から大きく変わるのは抵抗を持っていらっしゃる方が今はまだ多い。ですので、あくまで自然で目立たないようにやる。一方で女性は大きく印象を変化させることを目的とされる方が多く、「すっぴんだと誰だかわからない」メイクが主流だと思います。そこは明らかに違うと思います。

――メイクしてるってわかっちゃうのは、男性としてやはり抵抗がありますよね。でもどうすれば自然に見られるんですか。

手塚 ひと言で表すのであれば「立体感を出すこと」ですね。一般的にメイクは使用する化粧品の量を多くする、手数を多くするほど二次元的に、そしてマットになっていきます。ですので、例えばどうしてもカバーするのに多くのファンデーションを塗らなくてはならないときは、艶のあるリキッド系、パール系のファンデーションを使用したり、影となる部分にはしっかりシェーディング(陰影をつけるパウダー)する。そうすると二次元化されてしまった顔が立体的になりメイクがナチュラルになります。

メイク前にはカウンセリング。そこではデータに基づいて作られた「最もハンサムな日本人」「理想の恋人」「エリートビジネスマン」などジャンル別の顔を選ぶことができる メイク前にはカウンセリング。そこではデータに基づいて作られた「最もハンサムな日本人」「理想の恋人」「エリートビジネスマン」などジャンル別の顔を選ぶことができる

――それにしても、男性メイクに興味を持つ人が増えているということは、それだけ自己プロデュースの大切さを感じる人が増えてきているということですね。

手塚 おっしゃるとおりです。コロナ禍の前はインスタグラムを中心とした顔出し系のSNSなどでその重要性が高まっていました。そして、このアフターコロナでは実際に顔を合わせることがリスクの時代になり、リモートで人と接触することが推奨されるようになりました。

例えば実際の営業のシーンなどを想像してみてください。これまでは営業マンは体型、香水、スーツの種類、所作などで顔以外をカバーする方法はいくらでもありました。ですが、リモートで営業をする時代になった今、もしそれが初見であれば、モニターに映し出された「顔」の印象が、そのまま最初の印象形成につながってしまう。そんな風に見た目の重要さをかつて以上に認識する男性が増えた様に感じています。

――手塚さん自身が、そもそも男性の美容に関わるお仕事をするようになったのは、どういう経緯だったんですか?

手塚 僕は大学卒業後、国内の大手広告代理店に就職し、その後は転職して大手外資系企業のマーケティング戦略に携わってきました。そこで初めてアジア人がルックスでマイナスの評価をされていることに気づき、自分の容姿をコンプレックスと感じるようになりました。その時の思いが原点となり、後に男性のルックスに関わる仕事を始めたんです。

――最終的にメンズメイクに至ったのは? 美容整形ではなかったんですか?

手塚 女性は早ければ中学生、高校生の頃からメイクをし始め、日々鏡を覗き込み自分の理想とする顔を意識して生活していますから、美容整形は有効な手段だと思います。でも男性はそこまでできない。ではそれに対応してくれる場所となると思い浮かぶのは美容室しかないのですが、実際には美容室では髪の毛しかやってくれない。それなら「美容室以上、美容整形未満」をコンセプトにメンズ総合美容サロンを作ろうと考えました。

あと、割と知られていないのが欧米の政治家や企業のVIPは重要な商談の前はほぼ必ずメイクをしています。容姿を整え、自信を持ってプレゼンや交渉にのぞみ、そしてしっかり仕事をまとめてくる。僕自身の上司もそうでしたが、これは日本の政治家やビジネスマンも、絶対に取り入れたほうが良いと感じていたことも原点といえるかもしれません。

――最近、特に変わった目的で来られる方はいますか?

手塚 コロナ禍の前はマッチングアプリの写真用に来られる方が多かったと思います。今どきはマッチングアプリでも自撮りをNGとして指定のスタジオで撮影を求められることが多くなっているそうです。加工アプリを使用して盛りすぎてしまうと、実際に対面した時にトラブルになるからだそうです。

コロナ禍以降は、先にも申し上げたとおり、リモート会議中の自分の顔に年齢や疲れを感じた、という方が非常に増えた印象です。

――ただ、こういう言い方はなんですけど、いくらメイクをしても理想の顔立ちにならない人はいるんじゃないですか?

手塚 もちろんそれはいらっしゃいます。でもそれでもいいと思うんです。私たちイケメン製作所が一番大切と感じているのは、「お客様のイケメンスイッチがオンになるかどうか」ですから。

――イケメンスイッチ?

手塚 そうです。人は外見だけではなく、内面にも多くの魅力があり、それらが総合的に評価されるものだと思っています。そこで「今、私はイケてるぞ!」と自分自身が乗れるスイッチを押してあげることで、うちに秘められていた自信のオーラが出て自然とカッコよく見えるものです。私たちの仕事は、メイクをして見た目を変えるとともに、その内面もしっかり変えることなんだと思っています。

逆を言えば、いくらカッコよくしたとしても、ご本人が自信を持ってもらえなければ、それはカッコよく見えないんですよね。

――将来的な目標は?

手塚 やはりメンズメイクの良さをもっと大勢の人に知ってもらうということと、日本全国にイケメン製作所を作ることですね。「今日だけはどうしてもカッコよくありたい」というシーンがが、どんな男性にも必ずあると思います。その時、是非、近くでお手伝いしたいなって思うんです。人生は決して長くないですから、コロナ禍で大変な時期ではありますが早期に実現させるのが夢ですね。

手塚拓海(てづか・たくみ)
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。大手広告代理店を経て、2015年に株式会社オシアスターを設立。2017年メンズメイク「イケメン製作所」を創業。

イケメン製作所
〒104-0061 東京都中央区銀座3丁目8-10銀座朝日ビル4F
0120-987-347
営業時間 
11:00~21:00(平日)
9:00~21:00(土曜)
9:00~19:00(日曜)
※祝祭日は日によって営業時間が異なる。

左から、上田輝希さん、前谷春樹さん、稲村真奈さん、佐野和輝さん 左から、上田輝希さん、前谷春樹さん、稲村真奈さん、佐野和輝さん

★『週刊プレイボーイ29号』(7月6日発売)では、カラー4ページで「顔の悩み解消! 自信が持てる! メンズメイクで「できる男」になる!」を特集! お笑い芸人の火災報知器、バニーニがモデルになってメンズメイクで好感度アップ。オンライン合コンに挑戦!