菜の花で有名ないすみ鉄道。紫陽花を発見し、写真を撮るために迷わず途中下車

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は彼女の好きな花について語る。

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春を丸ごとステイホームで過ごした今年、気がついたら季節はすっかり梅雨。まだまだ油断できない現状と、ジメーっとした重い空気に心もそのまま引っ張られそうになっている私は、お花をめでて気分を高めています。

お花をめでる、と聞くと、完全におばさまの趣味のイメージもあるかと思いますが......そのイメージ、正しいんじゃないかと思います。「実はお花の趣味も進化していて、若者にも響いています」と言いたいところですが、実際は私が大人になっただけで、お花を見ると喜ばしい気持ちになる年齢になってしまったのです。

好きなお花は、街中に咲いている身近なもの。桜に関してはまだ団子派ですが、時期的に桜の次に姿を見せるツツジはたまらなく好きです。近所に何げなく咲いているちょっと地味だけどたくましい花。道路の脇で排ガスを浴びながら、身を寄せ合って低い所に咲くツツジのひたむきな姿にはほれぼれしてしまいます。

丘に沿ってモコモコと雲みたいに咲く光景が圧巻な、東京・根津神社の「つつじまつり」は今年は中止となりましたが、代わりにドライブや散歩で遠くから眺めました。ツツジの前を通るときだけマスクをチラッとずらし、思いっきり春の香りを嗅ぎました。

そして大好きなツツジが散って、ちょっと心細いな、という時期に気持ちを満たしてくれるのが、紫陽花(あじさい)です。

紫陽花は6月頃に咲いてくれる、律義できちょうめんな花。咲く前はただの草なので、こんな所に!という喜びがあるし、色や形のバリエーションにも惹(ひ)かれます。ミステリー小説を読みすぎたせいで、一部だけ色が違うと死体が埋まっている可能性も頭によぎりますが......。

紫陽花の好きなところは、咲いている時期が長い上、最後まで咲いた頃の状態のままシワシワに乾いていくところ。桜みたいに惜しまれながら散るわけでもなく、ボタンみたいにみずみずしいまま地面に落ちるわけでもなく、そのままの姿でカピカピ、最終的にはガイコツみたいになる。最初から最後までまじめな花、紫陽花。懸命に生きた感じがたまりません。

そんな紫陽花ですが、花言葉はなんと「移り気」「浮気」「冷酷」だそうです。もしかして私、人を見る目がとてつもなくないのかも。ちなみに子供の頃、ケンカした友達のために摘んで和解の証(あかし)として差し出したタンジーは、「あなたとの戦いを宣告する」のようです。マヤちゃんごめん。

じゃあどういう花なら贈っていいのか、と花言葉を実は信じてないながら考えてみた結果、とにかくシンプルな花束がいいな、と思いました。どでかいブーケより、目立つ花が1本、差し色になる花が2、3本+かすみ草くらいが抜け感があってしゃれているし、家で飾りやすい。

包装紙がないのも爽やかで今っぽい。最近は1本から買える花屋さんが増えていますし、1輪だけ贈るのも粋な上、ちゃんとした花瓶がない人でも困りません。

花束を贈るのをハードル高く感じている週プレ読者よ。人とのつながりを再確認しているこの時期に、家族や気になる誰かにいかがでしょうか。ただし、花言葉にはご用心。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。エリンギの花言葉が「宇宙」と知り、なんだかいろいろわからなくなる。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!