緊急事態宣言が解除されて約2ヵ月がたったものの、海外はおろか、国内移動も慎重な行動を求められる現在。だからこそ、コロナが収束したら訪れてみたい場所やこんなことをやってみたいと思いをはせる「Wishリスト」を各界の著名人たちに聞いてみた。
故郷や憧れの場所、そして懐かしい思い出の場所......僕らと同じように、仕事もプライベートも制限され、"ステイホーム"を迫られていた彼ら彼女らが、"ニューノーマル時代"の旅先に選ぶのは? 第2回は、『週刊プレイボーイ』本誌にて「ムツゴロウさんの最後のどうぶつ回顧録」連載中の動物学者、ムツゴロウさんこと畑正憲(はた・まさのり)氏が登場!
■ムツゴロウさんですらまだ見ぬ犬がいた
――ムツゴロウさんといえば、世界各地の動物を追っているイメージです。
「そうですね、昔はほとんど外国にいましたね。いろんな動物が好きだけど、犬に惚(ほ)れてましてね。(犬が)どういうふうにして人間のところに来たか。そういう犬文化を探ってるんですよ、僕は。
だから辺鄙(へんぴ)な所へも行きましたね。インドとチベットの国境なら(犬文化が)原始の形で残ってるんじゃないかと思うと、行きたくてたまらなくなるんですよ」
――犬は世界中にいますから、途方もないですね。
「そう、でも古いものは資料がないでしょ。だから絵画に描かれた犬を調べにヨーロッパへも行きました。16世紀のブリューゲルの絵には犬が出てくるんですけど、昔のパリア犬と非常に似ているんですよ」
――歴史に残る巨匠の絵ですら、犬の資料としてしか見てないんですか!
「何万年も前から犬は人間と共存してきましたけど、ルーツがわかっているのはラブラドール・レトリバーくらいですから。でも、ラブラドールって名前はウソなんですよ」
――どういうことですか?
「ラブラドールというのはカナダの地名なんですけど、正確にはカナダのニューファンドランド島が原産地なんです。ここはタラ漁が有名なんですけど、猟師と一緒に働く狩猟犬として活躍していたんです。
それにラブは非常に賢くていい犬なんですよ。昔、オリックスの始球式に連れてったんですが、ボールを投げたらちゃんとくわえて渡してくれて。65歳からゴルフを始めたんですけど、ラブが練習を手伝ってくれたおかげで、70歳でコンペも優勝しましたよ」
――溺愛しているのはわかりました! もう世界中の犬はほぼ見られたんですか?
「そうですね、だいたいは会ったと思います。でも、南米のフォークランド諸島にしかいないフォークランド犬はまだ生で見たことないですね。マラミュート系の犬で、毛のないタイプらしいです」
――では、いつかフォークランドに行きたいと。
「それもそうですけど、一番行きたいのは南極かな。何度か計画しても、まだ行けてないんですよ。でもアルゼンチンやチリまでは行ったことがあって、そこで海に飛び込んだら、ムール貝がびっしり! あんな海底は珍しい。常識を超えたものがありますよ。
その海にえらく感動したし、南極は植物に邪魔されずに動物が進化した場所なので面白いだろうなと考えるだけで、ワクワクしますね。でも去年大病して倒れたので、もし行く機会があっても体と相談ですね」
●畑正憲(はた・まさのり)
1935年4月17日生まれ。動物との共生を目指して北海道で「ムツゴロウ動物王国」を建国。『週刊プレイボーイ』本誌にて『ムツゴロウさんの最後のどうぶつ回顧録』連載中