緊急事態宣言が解除されて約2ヵ月がたったものの、海外はおろか、国内移動も慎重な行動を求められる現在。だからこそ、コロナが収束したら訪れてみたい場所やこんなことをやってみたいと思いをはせる「Wishリスト」を各界の著名人たちに聞いてみた。
故郷や憧れの場所、そして懐かしい思い出の場所......僕らと同じように、仕事もプライベートも制限され、"ステイホーム"を迫られていた彼ら彼女らが、"ニューノーマル時代"の旅先に選ぶのは? 第4回は、アスリートの川内優輝(かわうち・ゆうき)選手が登場!
■内向きだった自分の人生観が一変した
――国内のみならず数々の国際大会にも出場し、多くの国々を訪れている川内選手ですが、印象に残っている場所はどこでしょうか?
「各地でいろいろな思い出はありますけど、多くの縁を感じているのはニューカレドニアです。去年も行かせていただいたんですが、また訪れたいですね」
――何度も行かれているんですか。
「最初に行ったのは12年前の学生のときでした。日本学生ハーフマラソンで6位入賞したことで、ニューカレドニア国際マラソンに派遣されたんです。上位の5人が箱根駅伝の合宿を理由に断ったため出場できたんです。僕にとっては初めての海外遠征で、何もかもが衝撃的でした」
――例えば?
「長時間フライトも、現地で食べたロブスターのおいしさ、レース前のパスタパーティやレース後のカクテルパーティの楽しさ、雨の中で18㎞まで競り合ってラスト3㎞で一気に引き離し優勝した記憶。美しい海や海岸線、丘の上から見た景色。思い出せばキリがありません」
――そこまで鮮明に覚えているとは驚きです。
「私の夢はもともと『日本全国市民マラソン巡り』で、海外レースには興味がありませんでした。海外に行けるような選手になるとも思わず、内向きな人間だったんです。
しかし、この遠征で『また海外レースを走りたい』と強く思うようになり、私の夢は『日本全国・世界各国マラソン巡り』にグレードアップしました。だから私の人生観を変えたレースなんです。
それに恥ずかしながら、妻と出会った場所で、一緒に優勝した場所でもあるので......」
――本当に人生を左右する大会だったんですね。
「そうなんです。一昨年に10年ぶりに招待いただいたんですが、昨年は大会事務局の好意で妻もご招待いただきました。ふたりとも以前は行けなかったウベア島やメトル島なども観光できて、その美しさに心が揺さぶられました。レースは再びふたりで優勝とはならなかったんですが、また参加できた際は一緒に優勝したいと思います」
――来年も開催されるといいですね。
「そうですね。妻と一緒に出場したレースでいうと、今年は中止になってしまいましたが結婚直前にカップル優勝した(カナダの)バンクーバーマラソンも思い出深いです。
妻も一緒に現地のランニングチームと公園で練習したり、トレイルのランニングコースなど観光案内をしていただいたり、現地での交流は忘れられません。また国際大会で、世界中の多くのランナーとグローバルに交流していきたいです」
●川内優輝(かわうち・ゆうき)
埼玉県庁勤務の市民ランナーとして脚光を浴び、昨年4月にプロ転向。2011年から世界選手権に4度出場。マラソン自己ベストは2時間8分14秒(13年)