手軽な栄養補給やダイエットにも最適。ステイホームで筋トレを始めた人はもちろん、運動しない人にも大人気のプロテイン。いったい、どんな摂取方法が効果的なのか? 筋肉芸人のパイオニア・なかやまきんに君に聞いた!
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■"マッチョな男のもの"という認識はもう古い!
――最近はコンビニでもプロテイン飲料や食品がたくさん並ぶようになり、かなり一般的になってきた印象です。
きん 健康ブームも相まってここ何年かで急速に広まりましたよね。コンビニで手軽に買えるようになったというのは大きくて、最近はトレーニングをする人だけでなく、女性や年配の方でも取り入れるようになった。その意味では日本もようやくスタートラインに立ったなと思います。
――「プロテイン」というと、マッチョな男がトレーニング後に飲むパウダーをイメージしがちですが、本来は「タンパク質」を意味する単語なんですね。
きん はい。筋肉や臓器、皮膚、血液、髪の毛など体の大部分がタンパク質でできていて、さらには免疫機能も高めてくれる。逆にこれが不足すると体力やスタミナが低下するだけでなく、脳の働きが鈍ったり、うつ病になりやすくもなります。
つまり生きていく上で必要不可欠な栄養素なんです。肉、乳製品、豆、魚などに多く含まれていますが、脂質や炭水化物と違って意識して取らないとどうしても不足しがち。その上、タンパク質はストレスによっても消費されてしまうので積極的に摂取を心がけたいですね。
――厚労省が策定する「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によれば、運動をしていない人で1日5g、軽い運動をしている人で15g不足しているとか。
きん 1日に必要なタンパク質の摂取量は運動をしない人で「体重(kg)×1」g、運動をする人だと「体重(kg)×2」gが目安といわれています。運動をしている70kgの人だと1日約140gが必要になりますが、この分を食事だけで取るのはなかなかハードルが高いんです。
――セブン-イレブンのサラダチキン(タンパク質約26g配合)を5個食べてもちょっと足りない計算になりますね。
きん 大会前のボディビルダーはひたすら鶏の胸肉やゆで卵を食べていますが、タンパク質だけを取ろうとすると味気ない食事になってしまって苦しい。
かといっておいしいステーキばかりを食べていたらタンパク質は十分ですが、脂質を取りすぎてしまい健康的とはいえません。なのでバランスのよい食事を心がけつつ、足りない分をプロテインで補うというのが理想ですね。
■プロテインだけを持って吉本の養成所へ
――初めてプロテインを飲んだのはいつですか?
きん 14歳です。中学時代はバスケ部だったんですけど、部室で友達に勧められたのが最初でした。当時のプロテインはめちゃめちゃ溶けにくくて、口の中でお団子みたいになったのを無理やりのみ込む感じでした。
――当時はまだ、プロテインもそこまでメジャーではなかったですよね。
きん 27年前なんで、プロアスリートでも飲んでいる人はあまりいなかったと思います。僕はバスケ雑誌の広告で知っていましたが、なかには筋肉増強剤のような薬物だと思っている人もいたくらいで(笑)。
――飲んでみて効果は実感されてましたか?
きん 本格的に飲むようになったのはウエイトトレーニングを始めた17歳ぐらいからですが、やっぱり筋肉のつき具合は変わってきました。それ以降はずっと飲み続けています。高校卒業後、吉本の養成所に入るために大阪に行くときもカバンの中にはプロテインだけ詰めて飛行機に乗りましたから。
――もう芸人じゃなくてビルダーですね(笑)。
きん 20代の頃は月収のほとんどをつぎ込んで、国内外のありとあらゆるプロテインを取り寄せては飲みまくっていたんです。毎日のように専門書を読みあさったり、成分を徹底的に調べたり。お金がないのにプロテインだけは常に最高級のものを飲んでました(笑)。
――いわゆる筋肉芸人の中でも、プロテインに対する意識の高さは当時から飛び抜けていたんですね。
きん そこまでしている人はほかにあまりいなかったですね。プロテインに振り回されているというか、タンパク質に人生を支配されているといっていいかも(笑)。
■コロナ太り解消にもプロテインは有効
――ここからは初心者向けにプロテイン選びのポイントを教えてください。
きん 今、日本では生乳を原料としたホエイと大豆を原料としたソイの2種類が主流ですが、分子の構造上、素早く消化吸収されるのがホエイ、ゆっくり時間をかけて消化吸収されるのがソイのほうです。いずれにせよタンパク質の含有量が80%以上のものをオススメします。
――最近は味もバナナストロベリーやリッチチョコレート、フルーツミックスなどバラエティに富んでいますね。
きん デザート代わりにすればダイエットにも活用できると思います。ただ、その多くは人工甘味料で甘くしているんですよね。その点、僕がプロデュースした「ザ・プロテイン」は人工甘味料不使用で、品質も最高級の原料にこだわって作りました。その分、ちょっと値段は高いですが、ぜひ試してほしいです。以上、宣伝でした!
――次にプロテインを摂取すべきタイミングと分量について教えてください。
きん これはとても重要です。タンパク質は足りていないと筋肉中のタンパク質が分解されてエネルギーとして使われてしまうので、なるべく長時間空けないように定期的な摂取を心がけたい。
僕は朝起きてすぐと夜寝る前、さらに筋肉のゴールデンタイムといわれるトレーニング後の計3回は必ずプロテインを飲んでいます。食事も含めると3~4時間に1回はタンパク質を摂取していますね。一般の方でも本来は6時間以上空けないのが理想的だと思います。
――分量はどうですか?
きん 一度に吸収される量がだいたい30~60gといわれていて、それ以上は摂取できません。逆に忙しくて食事が取れなかったときなどはプロテインで15~20g分は補うことができます。
――「プロテインを飲むと太る」というイメージを持っている人もいるようですが、この点はどうなんでしょう?
きん プロテインは低カロリーですが、それでも飲みすぎてしまえば余った分はエネルギーとして体に蓄えられてしまいますし、ほかの栄養素と同様に取りすぎも体によくない。逆に食事でタンパク質が足りていない人は、運動をしていなくても不足分をプロテインで補うべきです。
大事なのは自分にとって必要な摂取量を把握した上で、うまく足し算、引き算をすることです。
――一方でダイエットにもタンパク質は重要なんですよね。現在、コロナ太りに悩む人も多いと聞きますが、アドバイスをお願いします。
きん よく、食事を抜いてダイエットされる方がいますが、それだと脂肪だけでなく筋肉も減って代謝が落ちる。そうなるとリバウンドしやすい体になって結局は失敗してしまいます。なのでダイエット中も適度なタンパク質を取ることで筋肉の分解を最小限に防ぐ必要があるんです。
僕なんかは「やばい、今、筋肉が分解されてる!」っていうのが感覚でわかるので、そんなときはすぐにタンパク質を取るようにしています。
――そこまでストイックだとストレスになりませんか?
きん いや、タンパク質をきちんと取れているときが一番、気持ちも落ち着いています。逆にイレギュラーなロケなどで取りたい時間にタンパク質を取れないことが一番苦しいですね。
――完全に人生を支配されてますね(笑)。ちなみにこの取材中、タンパク質、切れてないですか?
きん はい。さっき、ゆで卵を5個食べてきたので大丈夫です!
●なかやまきんに君
1978年生まれ、福岡県出身。NSC大阪22期生を卒業し、2000年にピン芸人としてデビュー。2006年に米ロサンゼルスへ筋肉留学し、2011年、サンタモニカカレッジで運動生理学部卒業。2019年、第27回東京オープンボディビル選手権大会ミスター75kg級で準優勝を果たすなどボディビルダーとしても活躍するほか、栄養学でもお笑い界屈指の知識を持つ