ヒストリーチャンネルの人気番組『ポーン・スターズ』の舞台になっているお店。Huluやアマゾンのプライム・ビデオでも見られます

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。

今回は、この5年ほどCSばかり見ているという彼女が最近ハマっている、ヒストリーチャンネルの人気番組について語る。

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5年ほど前から、気づけばアニメと『NHKのど自慢』以外はCSばかり見ています。Netflixなどの配信ものも見ていますが、ただテレビをつけてボーッとするときは、地上波よりディスカバリーチャンネルやナショナル ジオグラフィックのスピード感が合うし、リアルタイムじゃないのも心地よい。

以前、CSの車番組を取り上げましたが、数年前から見ているヒストリーチャンネルの『Pawn Stars』もオススメです。

この番組は2009年に始まり、現在17シーズンが放送されている人気番組。日本では『アメリカお宝鑑定団 ポーン・スターズ』というタイトルで放送されていますが、日本でおなじみの長寿鑑定番組と違って、こちらは実在するラスベガスの家族経営の質店に密着しています。

次々に持ち込まれるお宝の振り幅がとにかくすごい。ビンテージ玩具や有名人のサインから、100年前の歯科医の椅子や隕石(いんせき)の破片まで、ありとあらゆるものが買い取りの対象。

全体の傾向として、ベースボールカードやマーク・トウェインの初版本、南北戦争の銃など、アメリカの歴史を感じる品物が多く、アンティークの車やバイクが頻繁に登場するのも日本の質店との違いかもしれません。

見どころのひとつは、持ち込まれた品に対してオーナーのリックが披露するうんちく。持ち主の前で本人置いてきぼりの説明を長々とし、その知識マウンティングに対して客は「そうね」のひと言。

毎度ツッコミたくなる気持ちと、説明に素直に「へー」となる気持ちが混在します。家宝がはっきりと「偽物です」と言われたり、生々しい交渉にはドキドキします。

うんちく親父もお手上げなときや、交渉が平行線をたどる際は専門家が登場しますが、この専門家軍団がまた濃い。ソ連グッズを見ると興奮で目が覚醒する武器の専門家と、ざっくり「物知りひげおじさん」としか説明されない専門家が私のお気に入りです。

従業員たちのやりとりも見どころです。主なメンバーは一昨年77歳で亡くなったリックのお父さんで共同経営者のオールドマン、リックの息子・若旦那、そして若旦那の友人・チャムリー。

全員アメリカンサイズの体格で、全員性格に難あり。特に若手ふたり組がクズだけど、憎めないダメさと底抜けの明るさが取り柄のチャムリーは人気者で、グッズやプロデュース商品はバカ売れしているそうです。

大っぴらな商売っ気に引きながらも、そのチャムリーが開いたお菓子屋さんがあると聞き、ラスベガスに行った際に探してしまいました。お菓子屋さんは見つからなかったけど、リックが経営するバーベキューレストランがあり、うっかり訪問。

出演者の等身大パネルがあったり、看板にイケメン化がすぎる似顔絵があったり、味に期待ゼロで観光客ホイホイに足を踏み入れたところ......これがびっくりするほどおいしい。うんちく親父、バーベキューの知識もだてじゃなかったです。

もちろん、質店そのものものぞきました。何百回も見ている看板を目の当たりにしたら予想外に興奮し、ほかでも買えるだろうスター・ウォーズの初期グッズを購入しました。テレビって怖い。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。ラスベガスで買ったグッズが中野ブロードウェイにもあったが、全力で見て見ぬふりをした。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!