大好きだったシーモンキー。こんなカオスな背景があったとは 大好きだったシーモンキー。こんなカオスな背景があったとは

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、その昔、日本でもブームになったシーモンキーの思い出について語ってくれた。

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小学校3年生のとき、わが家に摩訶(まか)不思議な一員が加わりました。そいつの名はシーモンキー。日本でも70年代にはやったそうですが、私が飼っていた90年代アメリカでは定番商品でした。

コミックの最後のほうのページに必ずあったシーモンキーの広告。"The Amazing Live Sea-Monkeys"なるミステリアスな名前に、水と混ぜて1時間足らずで生命が芽生えるというSF感あふれる売り文句。肌色のニュル~ッとしたボディに妙な笑顔のシーモンキーのイラストは怖かったけど、それでもお小遣いをためて買いました。

今思えば、自分で申し込んで、自分宛てに荷物が届くところから魔法が始まっていました。説明書には、「シーモンキーは駆けっこが大好き!」や「踊るのが得意」とあり、小さな水槽に広がる壮大な可能性に魅了されました。

実のところ、シーモンキーはアルテミアという小型の甲殻類。1957年にアメリカ人発明家のハロルド・ヴォン・ブラウンハット氏が品種改良し、長期間の休眠に耐えられる乾燥した卵の交配種を作りました。

水質と塩分濃度を整え、シーモンキーが暮らせる環境をつくる謎のパウダーもついており、この中身は現在もブラウンハット氏の奥さまが管理する金庫に隠された企業秘密だそう。

そんなシーモンキーについて、最近衝撃的なことを知りました。開発者のブラウンハット氏、実はネオナチ系の白人至上主義組織の一員だったそうです。アメリカの主要メディアによると、彼は毎年大規模な集会に参加していた上、KKKの支部にも銃を提供。

シーモンキー以外にも伸びる警棒のような武器も開発しており、売り上げの一部は組織の活動資金に充てられたそうで......ってことは、私が必死にためたお小遣いは、回り回って、ネオナチを潤していた。どう気持ちを消化すべきか......。ブラウンハット氏がユダヤ人だと知り、さらに混乱してます。

この嘘みたいな話、さらにカオスになります。

ブラウンハット氏の2003年の死を受け、奥さまは玩具メーカーとライセンス契約を結びました。契約では、メーカーがパッケージや流通を担当し、中身の休眠卵や謎のパウダーは奥さまが提供。1000万ドル支払えば、休眠卵と謎のパウダーのレシピを買収可、という内容でした。

契約から数年後、メーカーがこれまでの契約料が買収額だとし、シーモンキーはすべて自分たちのものと一方的に宣言。奥さまは当然訴えましたが、13年の初公判から進展してません。

その間メーカー側は中身を中国産の卵に変更し、ずっとシーモンキーを販売し続けています。謎のパウダーの代わりも作ったそうですが、どうやら効果はなさそう。アマゾンレビューなどでは、「1日で死ぬ」「昔はうまくいったのに孵化(ふか)しない」などの声が見られます。

ここまで登場人物が全員イヤな物語、なかなかありません。でも、シーモンキーは悪くない! やつらなら乗り越えることができるよ! うん!

ちなみに、日本では東京の玩具会社が販売しており、本家の騒動とは無縁のようです。最近育てたという方、ご報告お待ちしています。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。役者が着ぐるみを着た、実写版シーモンキーのテレビ番組についてもいつか語りたい。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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