『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、海外で人気のサンリオキャラについて語る。
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世界の感染対策について調べていた際、本題からは無関係なことに気を取られました。ブラジルの地下鉄のマスク利用啓発ポスターに、サンリオのキャラがマスクを着用して載っていたのですが......なんと、キティなどと並んで、チョコキャットの姿が!
日本では絶対に選抜メンバーに入らないチョコキャットの堂々たる姿に、記事を読み始めた目的を忘れて興奮してしまいました。
チョコキャットは真ん丸の大きな目の黒猫のキャラ。この連載のサンリオの回でも触れましたが、彼が誕生した1996年当時、私はアメリカでチョコキャットグッズを溺愛していました。学校でもキティより人気だったので、日本に引っ越してきてから知った本国での知名度の低さにびっくりしました。
私の小学校のローカルトレンドだったのか!?と思いましたが、調べると、欧米では根強い人気を誇っているよう。毎年行なわれる「サンリオキャラクター大賞」では、日本だと70位台が定位置のところ、アメリカでは2位になったりと、常に上位にランクインしています。
グッズを期待して来日するファンも少なくなく、「ピューロランドにはチョコキャットの気配すらなかった」という怒りの投稿をアメリカの旅行サイトで見ました。
なぜこんなに人気に差があるのか。日本では黒猫は縁起が悪いからはやらなかった、という海外の分析を見ましたが、『魔女の宅急便』のジジの愛され具合や大手宅配業者のサービス名になっている事実もありますし、そもそも国内で彼を積極的に売り出した様子がありません。
女帝キティと同じ猫だからかぶることを避けたのか? スポッティドッティというキャラは最初から海外向けに作ったという話もあるので、チョコキャットもそうなのか? 知っている方、ぜひ情報を。ちなみに彼の親は「離婚しているけどまだ仲良し」という設定に欧米のローカライズを感じます。
同じく日本より海外で人気のキャラは、あひるのペックル。香港のキャラ大賞では連続で1位。日本では30歳オーバーに懐かしい!と言われるような存在で、今年は16位で健闘しました。
香港ではペックルカフェがオープンしたりと、日本より露出は多い様子。それでも組織票を疑いましたが、どうやら香港ではアヒルは縁起がいいとされているそうです。
「徳」の広東語発音がDuckに似ているため、旧正月の飾りに使用されたり、アヒルのアイテムを身につける人が多いもよう。ペックル人気、思ってたより奥が深いかもしれません。
もうひとり海外で人気なのは、アグレッシブ烈子。おとなしいOLのレッサーパンダで、会社への鬱憤をデスメタルで発散します。「クソ上司ぶっ潰せ!」は世界共通の気持ちなのか、アメリカのキャラ大賞で3位、ブラジル・イギリス1位、フランスやドイツ2位と上位を獲得したことも。
ネットフリックスのアニメも人気で、8月に配信した挿入歌がアメリカやイタリアの配信チャートでデイリーの1位を獲得したり、東アジア以外は盛り上がってます。こういうヤツいる!という人間模様の描かれ方が絶妙なので、サンリオに興味ない人にもアニメはオススメです。
●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。30歳を超えてから"サンリオ愛"が再燃したことを恥じる気配はない。公式Instagram【@sayaichikawa.official】