びんびんとは男を刺激するにも程がある愛すべきバイクのこと。今年放出された珠玉のマシンのなかから、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ選考委員長が、独断と偏見で受賞車5台を決定した。注目のびんびんマシンはどれだ!?
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■3密回避でバイクが売れた!
――では、サクサクいきます。今年1位に輝いたびんびんバイクはどれ?
青木 1位は今月から日本で予約開始となった電動ハーレー「ライブワイヤー」で決まりです。青木はコイツをずっと追ってきました。15年にはプロトタイプ、昨夏は完成車を試乗しまして。ついに日本発売の日が来たなと。
――スペックは?
青木 最大航続距離は約235km。急速充電規格にも対応しています。必見は発進から約3秒で時速100キロに到達する加速。ぶっちゃけ、コレは1000ccのスーパースポーツ級のダッシュ力です。
――スゲェー!
青木 最高出力は102馬力と強力なため免許は大型二輪(AT免許可)が必要です。しかし、車両登録区分は軽二輪のため車検がいりません。納車は来年2、3月の予定です。
――今後、二輪の電動化はどうなりそうですか?
青木 経済産業省は2030年代半ばに販売する新車から純ガソリン車をなくし、すべてをハイブリッドやEVなどにする目標を検討しています。世界に目を向けても環境規制はどんどん厳しくなっており二輪の電動化は活発になると思います。すでにカワサキはハイブリッド車の開発を急ピッチで進めていますよ。
――続いて2位は!
青木 新型コロナが猛威を振るうなか、3密回避も手伝い軽二輪(126~250cc)の販売が増えました。それを下支えしたのが、12年ぶりとなる250cc4気筒エンジンを搭載したカワサキのニンジャZX-25Rです。
9月に発売するやいなや年間販売予定の5000台は即完売して大きな話題に。実際に乗ると胸のすく高回転サウンドが男を刺激します。
――今年はホンダの新型も人気大爆発でしたね?
青木 はい。3位も超バカ売れネタで、6月発売のホンダCT125ハンターカブです。こちらは年間販売予定の8000台を予約段階で達成し、来春には新色の追加も予定しています。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いです。
――ヒットの理由は?
青木 スーパーカブC125をベースに数々の専用装備でオフロード性を大幅に向上。水没対策で装着位置を上げたマフラーや吸気ダクトで川も平然と渡れてしまう。唯一無二の存在感が魅力です。
――今年も明るいニュースが多いですね?
青木 いや、4位は残念なニュースです。ヤマハのセローが35年の歴史に幕を閉じました。山奥など道なき道も突き進める走破性と、その扱いやすさで愛され続けたトレッキングバイクの雄が惜しまれながらも生産終了です。
――生産終了の理由は?
青木 排ガス規制強化です。実は今、設計の古い空冷エンジンでは適合できずロングセラーたちが生産終了へと追い込まれています。1978年発売のヤマハのSRも打ち止めが決定しています。
――残念無念合掌! 気を取り直して大トリの5位は?
青木 ジクサー250です。油冷エンジン大復活でファンは狂喜乱舞! そもそも油冷エンジンは1985年の初代GSX-R750に始まり、2008年のGSX1400ファイナルエディションを最後に生産終了なので約12年ぶりの帰還です。
空冷なみに構造がシンプルで軽量、整備性に優れるのに、水冷に匹敵する放熱性でパワーと耐久性を持つ優れもの。インド生産で44万8800円という価格破壊を実現しているのも人気のポイントですね。
――委員長、最後に来年の二輪界はどうなりますか?
青木 来年も引き続き、「3密回避」のバイクは注目されるはず。まだ具体的には言えませんが、怒涛(どとう)のニューモデルラッシュも。来年も二輪界はびんびんですよぉぉぉ!
(写真協力/ハーレーダビッドソン ジャパン カワサキモータースジャパン ホンダモーターサイクルジャパン ヤマハ発動機 スズキ)
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。現役の二輪専門誌編集長でもある