『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は2021年の抱負を語る。
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教科書に載るレベルの一年になった2020年、皆さんはどう生き抜きましたか。カレンダーのページをめくったからって何かが変わるわけではないけれど、今年の暮れには「去年はすごかったねー」とのんきに話せていることを願っています。
2020年の抱負は、安易に子(ね)年にちなんで「がんばりマウス」でした。ブログのお年賀投稿にしれっと書いただけでしたが、数年続いていた薄らぼんやりとした倦怠(けんたい)感とやる気の低下から抜け出せるよう、ひそかに誓いました。
単行本『鉄道について話した。』の発売に向けて私にとって初のSNS、インスタグラムも開設し、目の前の仕事をこなしていた1月と2月。4月には世界が止まり、ステイホーム生活が始まりました。どこが「がんばりマウス」だ!と最初はもどかしかったものの、すぐにそれなりに充実した過ごし方を見つけました。
ホームシック対策としてアメリカ料理をたくさん作ったり、子供の頃以降食べていなかったアメリカンスイーツにもハマりました。ずっと見たかった映画や読みたかった本を読もうとしましたが、意味があることをしたくない、という強い気持ちから、普段は絶対見ないリアリティショーやジャンクな作品に触れました。
これが不思議と原点回帰につながり、自分の本質を思い出すきっかけに。日頃から無意識に「ためになるもの」を求めてしまっていたことに気づき、そこから解放されたのは大きな収穫でした。
英語脳の私は、仕事の前に日本のコンテンツに触れて頭を日本語モードに切り替えています。でも、現場がない日が続くとその必要がなく、ただただ見たいもの聴きたいものに浸ることができ、いかに自分が常に「オン」だったか気づかされ、実にならないものの大切さを知りました。
以前、疲弊していたとき、「削(そ)ぎ落とされたものを取り戻したい」と願いました。しかし必要だったのは「補うこと」ではなく、「無駄を省くこと」だったとわかりました。自分を変えたいときは何かを始めることが多いと思いますが、どちらかというと、何かをやめたほうがいいのかもしれません。
ということで、今年の抱負は安易に丑(うし)年にちなんで、「モーそういうのはやめます」。見て見ぬ振りをしてきた悪い癖、脱却します。とりあえず断捨離から!
とまじめなことばっかり考えた一年に聞こえますが、そうではありません。「街から人が消えても、信号機はまだ色を変えてるの!?」とシュレーディンガーの信号機への問いから、大半の時間はくだらない発想に費やしていました。
ここで、人に言うほどではないどうでもいい思いつきの一部を発表します。①ネットの検索履歴より、スマホの電卓の履歴を見られるほうが大人として恥ずかしい。②ロビン・フッドは元祖社会主義者。③プロポーズと土下座の差は、膝ひとつだけ。④税金は国へのサブスク。⑤エコ意識が高いコミュニストのアフリカ系アメリカ人が悲しんだら、その人はグリーンで赤でブラックでブルー。
まとめますと、考える時間がありすぎるのはよくありません。2021年は皆さんにとってわくわくする一年になりますように。
●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。今年こそ『のど自慢』の観覧に行きたいと、今から計画を立てている。Instagram【@sayaichikawa.official】