かつてメキシコシティに安全な水を供給していたCarcamo de Dolores。上空から見ると走っているおじさんに見える、グーグルアース映えの噴水
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、市川紗椰が最近楽しみに目覚めたという「グーグルアース」について語る。

* * *

ステイホームの時間が増える=地図を眺める時間が増える、という私のお約束の行動パターンに気づいてしまった方は「またかよ」と思うかもしれませんが、どこかに需要があるのを信じ、再び地図パトロールの結果報告をさせてください。今回眺めていたのは、上空からの3D画像が見られる、グーグルアース。ずっとマップ派でしたが、最近はアースの楽しみに目覚めました。

カナダ西部のアルバータ州辺りを眺めていたとき。アルバータ州にはカナダスモーキー山脈や700以上の湖があり、大自然のイメージが強いですが「街を見たい」とカナダを代表する商業都市のカルガリーを探しました。カルガリーを目指してアルバータ州の南東辺りをぼんやりスクロールしていたら、テラコッタ色とグレーがかった茶色い大地のまだら模様と、それを彩る小さな湖の数々に魅了されました。

凸凹の地形の陰影も美しく、雲が動物に見えてくるのと同様、ずっと眺めていると、いろんな形が浮いてきました。気のせい程度の形が多いなか、ある山の陰影が、人の横顔にそっくり。しかも「ウォーボンネット」と呼ばれる、北アメリカの先住民の一部が身につけるあの羽根の冠を見事にかぶっています。さらに、耳の辺りに直角に下がる長細い線があり、イヤホンをしているネイティブに見えます。

ここまで似ていると、さすがに巨大なアート作品か、何か人工的なものだと思って調べましたが、なんと自然にできたものだそう。バッドランズ・ガーディアン(不毛の地・悪地の守護者)と名づけられたネット上で有名な地形で、グーグルアース好きの間では「地理的な奇跡」として広く知られているようです(2005年にグーグルアースで発見されたそうです。一瞬でも自分が最初に見つけたと思って失礼しました)。

興味深かったのは、イヤホンに見える部分。ケーブルに見える部分は自然にできたにしては直線的すぎると思いきや、やはりここだけは人工物で、道路だそうです。スピーカーの部分は油田の跡で、ガーディアンの耳たぶに当たるところに偶然掘られたもの。結果として、巨大なイヤホンの広告のようなものが出来上がりました。粘土質の土壌に何百年もの雨水が浸食して生まれた自然の奇跡に、油田という人間の欲とエゴの象徴ともいえるものが重なり、広告っぽくなる。皮肉とユーモアと同時に、悲しさを感じます。

次に感動した発見は、島の湖の中の島の湖の中の島。以前紹介した「バングラデシュの土地の中のインドの土地の中のバングラデシュの中のインドの最強の飛び地」(2015年に解消)の島と湖版で、こちらもカナダにあります。バッドランズの守護者と違って、調べても特に名前はないそうなので、勝手に名づけました。夢の中の夢の中の夢を描くクリストファー・ノーラン監督の映画をヒントに、最後の小さな島を「インセプション島」! 私のドヤ顔を文字から感じとっていただけたら幸いです。

グーグルアース・パトロールが好きな方は何かしら見つけられるだろう「なんだこれ!?」案件。面白い発見があったら教えてください。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。イヤホンをした巨大ネイティブの地形は、北緯50度00分38.20秒/西経110度06分48.32秒で調べてください。
公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!