ニューヨークの空港で。写真手前の山盛りマッシュポテトに癒やされる
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、市川紗椰が気になった「ジャガイモ」の話題について語る。

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数年前にジャガイモについて語りましたが、久しぶりにジャガイモが主役の回をお届けします。

まずはアメリカの玩具、ミスターポテトヘッドのニュース。プラスチックのジャガイモに着脱可能な目や鼻などのパーツをアレンジして遊べる人気の人形で、ディズニー映画『トイ・ストーリー』シリーズで幅広い世代にもおなじみのはず。ハズブロ社が1952年に発売した歴史の長い玩具ですが、なんと、今年に入って新章を迎えました。

多様なジェンダーが受け入れられる社会の流れをくみ、「ミスター」を外し、男女の性差のいずれにも偏らないただの「ポテトヘッド」に改名しました。インクルーシブな社会の実現を望むと同時に、日本語にすると単なる呼び捨てになった分、外見に対しての悪口感が若干生じますが、実際は、ブランド名から「ミスター」を落としてジェンダーニュートラルにしただけで、個別のキャラクターの商品名は今までどおり「ミスター」と「ミセス」だそうです。

しかし、これに気づく前に「夫婦で買えるのは今のうち!」「いずれはプレミア価格間違いなし!」とアメリカでは爆買いが起こりました。商品そのものに変更がないことを知ってからのネットでの叩き売りもえげつなく、勝手に期待されて勝手にがっかりされるポテトヘッズがなんだかかわいそうでした。そもそもジャガイモに性なんぞないのに。

続いても今どきな話題。今や当たり前になったリモート会議ですが、自宅内の生活音が気になる方も多いとか。その悩みに応えるべく、マイクロソフトが雑音を自動的に消す技術を開発しました。用途はさまざまですが、マイクロソフトがメインに推しているのは、掃除機でも子供の声でもなく、ポテチを食べる音の抑制。会議中にこっそり食べてもパリパリ音でバレない!って、食べないのが一番よさそうだけど......。

「上司がTeams会議のフィルターでジャガイモになってしまった」というツイートが話題になった際も、そもそもなぜ自分をジャガイモ化できるフィルターが存在するのか気になりましたが、マイクロソフトにポテト好きがいるとしか思えません。ちなみに英語でこの話題を検索すると、関連で「リモート 芋 やり方」「ジャガイモになる方法」みたいな反応ばっかり出てきます。英語圏のポテト化願望、すさまじい。

その芋好きを裏づけるのは、アメリカで発売されたスポーツ用ポテトのニュース。ゼリー飲料のジャガイモ版みたいなもので、エネルギー源として効率よく吸収できるマッシュポテトを運動前にチューチューするという商品です。マシュポ好きの私にはたまりませんが、その分たくさん動かないと大変なことになりそうです。

最後にアート界から、「ジャガイモ写真コンテスト2021」。文字どおりジャガイモの写真を競う大会で、先日発表された優勝作品は、魚と芋を融合させた「フィッシュ&チップス」という作品。去年は「ロックダウンの終わり」という世界情勢を風刺した写真が優勝したので、「なんでこれ?」と首をかしげましたが、入賞作品に興味深いものもあるので、暇で暇でしょうがない方は探してみてください。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。ほかの最新芋ニュースでは、ニューヨークのダイナーで発売された200ドルの「世界一高いフライドポテト」も気になる。
公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!