東京・神保町の路地裏に突如現れる行列。その先に「神保町 黒須」はある。このような人気店になるまでにどんなドラマがあったのか。紆余曲折を聞いてみた。
■トリュフにカキ。行列店の誕生秘話
『週刊プレイボーイ44』(10月18日発売)は、"ご褒美ラーメン"号。リリー・フランキーや爆笑問題などの連載陣や佐藤美希や長月翠など"ラーメン女子"が「私のご褒美ラーメン」を紹介するほか、さまざまなラーメン特集を掲載している。
そんな今号の表紙や付録DVDで女優・工藤美桜がラーメンを食べているのが、人気ラーメン店「神保町 黒須」。
2016年11月のオープンからもうすぐ5年、これまでどんな道のりだった? 黒須太一店長を直撃!!
* * *
――黒須店長は某ラーメン店での修業を経て、新聞配達をしながら2016年に『有吉ジャポン』(TBS)で開催されたラーメン店「無鉄砲」グループ新店長オーディションに出演。100名以上の候補者の中から最終2名まで残ったんですよね。
黒須 最後に落選してしまいましたが、その時点で自分の店を出そうという気持ちは固まっていて、その年にこの店をオープンしました。
――弊社の通用口からは徒歩3秒というありがたい立地ですが......神保町の路地裏で人通りも少ない場所。なぜこんな所に!?
黒須 店を出すならカウンター7、8席のみというミニマムな形でスタートしよう、でも人の多い山手線圏内にしようとは最初から決めていて。以前から物件は探していたんですが、ちょうど予算が合うところが空いていまして。
でも、工事業者さんからも「ここは人通りほとんどないですよ」と心配されました(笑)。ただ、僕はこの場所を見た瞬間、「絶対いける」と感じたんですよ。
――上品な鶏清湯(チンタン)スープにトリュフペーストとカキペーストがのった現代的なラーメン。でも、開店当時のラーメン界では二郎系や煮干し系、鶏白湯(パイタン)など濃い味のラーメンがブームだったと思いますが、あえての逆フリだったんですか?
黒須 いえ、その頃からラーメン店がビブグルマンを獲得するような事例が出てきていて、「ネオクラシック」と呼ばれる、このジャンルのラーメンが徐々に脚光を浴びていたんですよ。そこは意識して、戦略的に味の方向性を決めました。
――開店当初、インド人の店員さんがカレーも出していませんでしたっけ?
黒須 できることはなんでもやろうという気持ちもありました(笑)。彼は昔からの友人で今はカレー店を営んでいます。今も時々手伝いに来てくれますよ。
――オープン直後の反響はどうでしたか?
黒須 1年目は年間の収入が108万円。普通に考えると続けられるレベルではなかったです。それなのに、チャーシューを長時間煮すぎて、その日は店を休みにしたり(笑)。
――流れが変わったのはいつ頃から?
黒須 この1、2年です。『食べログ』の「百名店」に選ばれたりして、行列ができるようになってきました。
――大きなカキやカモを使った期間限定ラーメンは特にほかでは食べることが困難ですが、こういうメニュー開発は?
黒須 ほかのラーメン店はあまり参考にせず、そば屋やフレンチ、イタリアンなど他ジャンルの飲食店からインスピレーションを得るようにしています。だんだんとお客さんが喜んでくださる形がわかってきたので、今後も挑戦的な新メニューを出していけたらと思います!
■自衛隊時代は週プレ愛読者!!
――もともとは陸上自衛隊員だったんですよね。
黒須 25歳から5、6年ほど、埼玉の大宮で務めておりました。女性がほぼいない環境だったので、週プレさんには大変お世話になりました!
――皆さんで回し読みしたりとか?
黒須 それはもちろんですし、過酷な訓練から帰ってきた隊員には週プレのグラビアページを切り取って「○○さん、お疲れさまでした!」と手書きでメッセージを書いて部屋の壁に張っておく風習もありました(笑)。
――予想を超える活用ありがとうございます! ちなみになぜ自衛隊に?
黒須 親の勧めです。24歳まではアパレル業界を目指してファッションスタイリスト会社でアシスタントをしていたのですが、夢破れてしまい......。そんなときに「何もやりたいことがないなら、世のため人のために働きなさい」と。
――ちょうど3・11の頃だったのでは?
黒須 はい。東日本大震災のときは翌朝から東北に派遣されました。
――でも、あのときの活動で世間の自衛隊へのイメージが変わっていきましたよね。ご両親も喜ばれたのでは?
黒須 少しは社会の役に立てたかなと。
――そこで鍛えられて今の立派な体格に至るんですね。
黒須 地方では自衛隊員ってモテるんですよ。飲み屋で「筋肉触らせて」って言われたり(笑)。でも、東京とか都市部だとなんか危険な存在みたいに思われていた部分はあって。だから、イメージが良くなっていったのはありがたかったです。
――そこからなぜラーメンの世界に?
黒須 実はその前にすし屋の板前を目指したりもしたんですけど、スタートしたのが30歳だったので、そこから10年修業していたらもう40歳という現実に気づいて......。それならラーメンで勝負してみようと。ラーメンの世界は1、2年の修業で店を出す人もいる世界ですし、何より昔から大好きな食べ物なので。
――オープン5年でミシュラン掲載店になり、順風満帆な人生の方かと思っていたんですが、ここまでいろいろあったんですね。
黒須 そうなんです。ようやくです。
――ちなみに今後、お店を拡大したりは?
黒須 コロナで売り上げも減りましたし、通販の展開はできたらいいなと考えています。北海道から沖縄まで自分のラーメンを届けられたらうれしいですし。支店を増やすのは、まだ先の話です。自分が人間として不十分なところがたくさんあって、今年は従業員が辞めてしまったりもしたので。
――コロナでずっとお店を開けられなかったですしね。今後も週プレ編集部は通わせていただきます。それでは最後に読者にひと言お願いします。
黒須 ぜひ皆さん食べに来てください!
*「神保町 黒須」東京都千代田区神田神保町3-1-19
公式HP【https://jinbochoukurosu.net】
★『週刊プレイボーイ44号』(10月18日発売)、特別付録「かわいい女子がただひたすらラーメンを食べるだけのDVD」は、9人の美女が思い思いのラーメンをじっくりと味わう映像を収録した65分! 女優・工藤美桜が神保町 黒須でラーメンを味わうシーンをチラ見せ!