『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回も、前回に引き続き「特殊能力」について市川紗椰が本気で考えた。

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前回に続き、マンガや小説に出てくる特殊能力のどれが欲しいか、本気で考えてみます。しょうもない理論と、くどいイチャモンにおつき合いください。

まずは透明になる能力。飛行機や映画館に忍び込める上、街中で面倒な知人とすれ違いそうになる際に姿を消せるのは地味に便利そう。しかし、完全なる透明って、実際は難しい。透明の体でも光は反射したり屈折したりするので、ガラスでできた像みたいになってしまいます(イメージは、体がクリスタルガラスでできた『銀河鉄道999』の食堂車で働くクレア。それはそれで嫌いじゃないけど)。

完全に透明になることが可能でも、体に空中のホコリなどがたまってしまい、徐々に姿が見えてきて存在がバレる。そもそも、服は透明にならないから全裸素足でウロウロすることになるので落ち着かない、落ち着かない。体に触れたものも一緒に透明になるならいいが、それだと開けた扉も透明になるし......。これらの問題を解決しても、透明な目は光を取り込むことができないので、何も見えません。目だけ光を取り込めるようにした場合は、目が透明じゃなくなるということです。宙に浮いてるふたつの目ん玉はむしろ目立つので、透明人間はなしとします。

ちなみに、時を止める能力も同じような問題が生じると予想します。時間を止めると光も同時に止まるので、何も見えない。よって、時を止める能力もボツ。

続いては怪力。これって耐久性がないと困ります。悪者を殴っても、皮膚は切れるわ骨は折れるわで、腕がバラバラの骨の袋と化しそうです。そもそも冷静に考えたらけんかなんてしたことないですし。暴走する車を止めて事故を阻止するのはいい使い方ですが、ニュートンの運動の第三法則(作用・反作用の法則)によると、物体Aから物体Bに力が作用するときは、物体Bは同じ力で反対方向の力を物体Aに及ぼします。つまり車を200m飛ばしたら、私はそれ以上に後ろに下がります。着地が怖いし、かえって迷惑かけそうなので、超人的力も辞退します。

意志の力だけで物体を動かせる念動力はどうか。グータラかつ片づけが苦手な私には、日常使いが容易に想像できる本命の能力のひとつ。使うたびにカロリーも消費されるとなお魅力的です。しかし、『スター・ウォーズ』のレイを見ていると、コントロールが難しく、事故につながる恐れが否めません。酔っぱらったときの大惨事が目に見えるため、保留です。

子供の頃から一番憧れたのが、過去に戻る能力。江戸や古代ローマの街並みを見たり、ウッドストックに参戦したりと憧れの場所に行くのはもちろん、学生時代に戻って、今の知識を生かしてひと儲けするのもアリ。ただ、記憶を持ったまま過去に行くってことは、脳やほかの臓器も今の自分のままなのか? 肝臓が30代の10代、なんだかいやです。肌もボロボロになりそうですし、この能力も躊躇(ちゅうちょ)します。

考えれば考えるほど、どの能力も副作用が厳しくて......。結果、スパイダーマンになり、強度と粘着力がすさまじい糸を瓶詰にしてホームセンターで売るのが現実的かな......。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。すべて自分の中のトホホな妄想なので、異論の嵐が来ないことを無責任に願っている。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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