CB1100シリーズに何度も試乗している青木氏いわく、「飽きずに長く付き合える。特に空冷エンジンの味わいは絶品ですよ」

デビューから11年、空冷直列4気筒エンジンを搭載したホンダの大型バイク「CB1100」が生産を終了、大きな話題を呼んでいる。モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が別れを惜しみつつ特濃解説!

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■最終限定モデルは受注殺到で即完売

青木 うぅ、涙が止まらん!

――どうしたんスか?

青木 日本の至宝的エンジンの52年にわたる歴史が最終搭載モデルで幕を閉じたんです! 国内で唯一、空冷直列4気筒エンジンを搭載していたCB1100です!

――マジか!

青木 ホンダは10月8日にCB1100のEXとRSのファイナルエディションを発表、これをもって国内販売向けの生産は終了。

国産の空冷4発といえば、1969年に登場したホンダ・ドリームCB750FOUR、1972年に登場したカワサキ900スーパー4(Z1)がその代表格! どちらも世界的大ヒットを記録しました。空冷4発は日本のバイクが世界に羽ばたくきっかけをつくった、まさに伝統的エンジンなのです!

ホンダの空冷4発の歴史は1969年に登場したホンダ・ドリームCB750FOURからスタート、世界中のファンを熱狂させた。ちなみにCB1100シリーズのデビューは2010年3月だった。(中央)CB1100RS、(上段左から)CB1100EX、CB1100、CB750F、ドリームCB750FOUR

――ふむふむ。

青木 実はレーサーレプリカの大ブームが巻き起こった1980年代から、より冷却性能に優れる水冷エンジンが主流となったんですが、一方で、昔を知るファンからは空冷直4の復活を望む声が根強くありホンダは2010年にCB1100を発売したんです。"新しくて懐かしい"。そんなCB1100シリーズは大人の所有感を満たしまくり!

エンジンが主役の無骨な佇(たたず)まいや冷却フィンの造形美、走行後に膨張した金属が収縮して「キンキン」と鳴る音、そしてどこか有機的で表情のあるパワーフィールなど、スペック一辺倒の高性能マシンでは決して味わえない五感を刺激する空冷直4エンジンはファンに長く愛されてきました。

――生産終了の背景は?

青木 生産終了が決まった最大の理由は環境規制です。エンジン温度を管理しやすく燃焼効率を高められる水冷に対し、空冷は目まぐるしく温度が変化し、排ガスの浄化に関して不利なんです。遮音性でも水冷にかないません。

CB1100EXファイナルエディション 発売:11月25日 価格:136万2900円 EXのファイナルエディションは前後のフェンダーほか各部をクロムメッキで仕上げた。伝統的なスタイルをより際立たせている

――最終限定モデルとなった2台はどんなバイク?

青木 空冷エンジンの要である冷却フィンをわずか2mmという極限の薄さにし、バルブの挟み角を広げ、DOHCのカムシャフト軸の間を広く取って存在感を主張するシリンダーヘッドなど、CB1100シリーズは美観を徹底追求。結果、伝統的な車体デザインに仕上がっています。

最終限定モデルは、そんなスタイルにドンピシャの前後18インチのスポークホイールを履くトラディショナルなEX。そして17インチアルミ・キャストホイール仕様のRSを用意。この2台、エンジンは同じですが、性格が違います。

CB1100RSファイナルエディション 発売:10月28日 価格:140万3600円 スポーティなネイキッドスタイルが売りのRSだけに、ファイナルエディションも激アツ。前後共に17インチホイールを採用!!

――具体的には?

青木 ハンドルを手前に引き寄せ、上半身が直立する王道ポジションのEXは、落ちつきのあるおおらかなハンドリングが魅力。優雅に余裕を持ってコーナーを駆け抜けられる。走っていると上質感や懐かしさのようなものを感じます。

一方、ラジアルマウントキャリパーやリザーバータンク付きリアクッションで足回りを強化したRSは、グリップ位置が少し下がって前傾気味のライディングポジションが特徴です。フロントに荷重をかける現代的なスポーツライディングにも応えてくれ、キビキビ軽快に走ります。

――見た目だけでなく、乗り味も差別化されていると。

青木 そのとおり。ただし両車とも基本設計は共通。そのため低速から潤沢なトルクを発揮するエンジンと重厚なサウンドが味わえます。ぜひ、空冷4発の歴史的重みを感じながら乗ってほしいですね。

――まだ買える?

青木 ファイナルエディションは発売日に販売計画1600台の半分に当たる800台の受注が入り、残り半分も即完売しました。残念ながらもうCB1100は新車で買えません(大号泣)。でも、俺たちの空冷4発とCB1100は永遠に不滅ですよぉぉぉ!

●青木タカオ 
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。専門誌『ウィズハーレー』(内外出版社)の編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』

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