「つばめグリル」のじゃないほうグルメ、牛肉とポテトの北欧風
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、「じゃないほうグルメ」について語る。

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飲食店に行く前に人気メニューをしっかり調べるのが当たり前になった現代。確かにそうすれば間違いないんだろうけど、気づいたら周りの人が全員同じものを頼んでいる......。

そこで今回は、人気店の看板メニューや、メディアや口コミで「このお店といえばこれ」と取り上げられるほうではないメニュー、すなわち「じゃないほうグルメ」を考えてみました。

まずは、中野ブロードウェイの老舗「デイリーチコ」のじゃないほうグルメ。「中野 ブロードウェイ」と検索すると「ソフトクリーム」という関連ワードが出てくるほど、ここの特大ソフトクリームは名物になっています(高さ約40㎝、重さ約700g)。

しかし、このカラフルなソフトクリームのインパクトに隠れたこだわりの品が、讃岐うどん。本格的な食感の麺は店内の製麺機で打った自家製。昆布、いりこ、かつお節で取ったおだしは、特にいりこの風味が印象的です。しかも、かけうどん250円、天ぷらが各種50円からと、チェーン店より安い価格設定。放課後、友達がアイスを食べる間、私はかけうどんに無料のカレー味の揚げ玉をのせて食べるのが定番でした。

ソフトクリーム屋の麺の次は、麺のお店のじゃないほうグルメを。のどぐろと真鯛のラーメンと、生姜醤油ラーメンが二大看板の大塚のラーメン屋「Nii」。ここのじゃないほうグルメは「ジャンボハンバーグ丼」です。タネに豆腐が入っているフワフワ系バーグで、スパイスの効いた赤ワイントマトソースも爽やかなので、300gのビッグサイズもペロリでした。今はテイクアウトもあるそうなので、ラーメン屋さんのメニューとは思えないこだわりをぜひ。

続いてのじゃないほうグルメは、ハンバーグ屋さんから。何店舗もある人気洋食店「つばめグリル」は、うま味たっぷりのビーフシチューソースがかかったつばめ風ハンブルグステーキをはじめ(焦げ防止としてハンバーグの下に敷かれたインゲンも妙に好き)、ハンバーグの種類が豊富。そんななか、私がイチ押しするじゃないほうは、「牛肉とポテトの北欧風」なるメニュー。

サイコロ状の牛肉とポテトの炒め物に卵の黄身がのったサイドメニューで、味つけはシンプルに塩こしょう。柔らかい牛肉のうま味、ジャガイモの絶妙な「外カリッ中ホク」感、タマネギの甘さ、そして生卵のまろやかさ。間違いなくおいしいものしか入ってないメニューだけど、わんぱくな見た目から想像する味を上回るクオリティの高さに、感動しました。見落としがちなメニューだと思うので、ぜひお試しあれ。

ここまで、メニューから連想したしりとり形式を無理やり続けましたので、次はお肉屋さんのじゃないほうグルメとしましょう。メンチカツでおなじみの吉祥寺の行列店「さとう」ですが、実はキムチがオススメです。コクたっぷりのクセになる味わいの自家製キムチは自然発酵で作られており、乳酸菌が生きたまま腸に届くそう。黒毛和牛専門店の肉じゃないほう、侮れません。

さすがに、キムチ専門店のじゃないほうグルメは思いつかないので、今回はここまで!

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。10年前、栃木のどこかのカレー屋さんで友達からひと口もらったシュークリームのおいしさが忘れられない。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!