『Here Comes The Sun』収録のアルバム『Abbey Road』のカバー風。東京メトロ上野車検区の踏切でひとりビートルズ 『Here Comes The Sun』収録のアルバム『Abbey Road』のカバー風。東京メトロ上野車検区の踏切でひとりビートルズ
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、サブスク配信サービスでみつけた「しょうもなプレイリスト」を紹介。

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いつでもどこでも好きな音楽が聴き放題のサブスク配信サービス。関連曲や類似アーティストとの出会いも魅力のひとつで、アルゴリズムのオススメだけではなく、ほかのユーザーが公開しているプレイリストを聞くのも発見につながる楽しみがあります。しかし、いろいろ探っているうちに、思わず「なんじゃこれ!?」と声に出してしまう珍プレイリストに行き着くことがあります。今回はそんな「しょうもなプレイリスト」を紹介します。

まずは、たくさんある「ロシアンルーレット」なプレイリストたち。プレイリスト内の一曲を除けば、全部同じ曲。シャッフル再生をして、違う一曲に当たるかどうかを楽しむ趣旨のようで、かなりの種類が存在します。やってみても、想像以上でも想像以下でもない体験でしたが(=大して盛り上がらない)、クイーンとデヴィッド・ボウイの『Under Pressure』がメインのプレイリストは、悔しいけど秀逸でした。

タイトルどおりプレッシャーがかかっている状態で流す『Under Pressure』に隠れている実弾は、ヴァニラ・アイスの世界的なヒット曲『Ice Ice Baby』。ダサい曲の代表『Ice Ice Baby』の絶妙なハズレ感もさることながら、後者は前者のサンプリング(無許可)のためイントロは酷似しており、ヴァニラ・アイスの蛇みたいな歌声が入るまではどっちかわからない。後に裁判で争われたベースラインのルーレットへの利用、意外と盛り上がりました。ちなみに「実弾しかないロシアンルーレット」という毒っ気あふれるタイトルの、全曲ジャスティン・ビーバーというプレイリストもツボでした。

続いては、「サンドウィッチ」というプレイリスト。ジャック・スタウバーの『Bread』で始まり、デイブ・ウォルの『Cheese』や$uicideboy$の『Lettuce』を挟んでから再び『Bread』で終わって、しょうもなさ的にはポイントが高い。音楽的なつながりや流れはまったくないですが......。

その点、「雨を見たことない奴に雨の現象を説明するときのプレイリスト」もバカバカしさに脱帽しました。CCRの『雨を見たかい』に始まり、ニール・ヤングの『See the Sky About to Rain』(雨が降りそうな空を見てごらん)、ボブ・ディランの『激しい雨』、CCRの『Who'll Stop The Rain』(誰が雨を止めるのか?)という問いに対して、ザ・ビートルズの『Here Comes The Sun』(太陽が来たよ)、最後はザ・ローリング・ストーンズの『She's A Rainbow』(彼女は虹さ)。リスト名どおりの選曲はもちろん、全部クラシックロックでまとめる音楽的なつながりもあり、悔しいけど少し感心してしまいました。

最後に、くだらない部門のトップは「オーウェン・ウィルソンが博物館で言いそうなこと」。こちらはカイリー・ミノーグなど、さまざまなアーティストの『Wow』という題名の曲がひたすら載っているプレイリストですが、「なんで?」と思う人は、映画『ナイト ミュージアム』を見て答え合わせをしてください。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。『ONE PIECE』の主題歌『ウィーアー!』のサビ「ありったけの夢をかき集め~」を、ずっと「畑の夢をかき集め~」だと勘違いしていた。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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