GR86のプロトタイプを全開走行した小沢氏。「2代目はスポーツの道具。買ったらサーキットを走りたくなると思う」

10月28日、トヨタ「GR86」の2代目がついに発売。価格がモロに競合するマツダ「ロードスター」と購入を悩むクルマバカが多数いるという。そこで、どちらも試乗した自動車ジャーナリストの小沢コージ氏が徹底比較!

■ドリフトするならGR86で決まり!

小沢 オザワは久々に日本人であることに感謝している! 10月28日、ついにトヨタがGR86(ハチロク)を発売したからだ! しかもお値段は予想外の280万円以下スタート。その結果、日本が誇るもうひとつのお宝スポーツカー、マツダ・ロードスターと価格がモロかぶりになった!

GR86とロードスターのどっちが欲しいか。どっちを買うべきか。世のクルマバカは大いに悩んでいるという。実に贅沢(ぜいたく)で幸せな悩みじゃないか!

ロードスターとロードスターRFを何度も試乗している小沢氏いわく「乗るとフルチンで海を泳ぐ解放感が味わえる!!」

――ん? どういうこと?

小沢 そもそもの話をすると、2012年にトヨタがスバルと共同開発して造った大衆FRスポーツの初代86&BRZからして異例なの。スペース効率が悪く、販売台数も少なく、ビジネスとして儲からないフロントエンジン&リア駆動のスポーツカーなんてどこも造っていない!

世界中見渡しても、300万円以下から買えるFRスポーツを造っているのはトヨタとスバル、そして1989年から4代連続でロードスターを造り続けているマツダだけ。

GR86とロードスターをこの価格で手に入れられるのは、牛丼の並盛りを300円台で食えるのと同じレベルの幸せよ! それに世界的な環境規制を考えたら、新車で買える今こそマジで狙い目だと思う!

――なるほど。それにしても、GR86の価格には驚きました。兄弟車のスバルBRZが308万円スタートなのに対して、GR86は279万9000万円スタートです。これはどういうカラクリ?

小沢 理由は簡単! 最廉価モデルはモータースポーツ用のグレードなんだよ。もう少し言うと、最廉価モデルはレース用パーツにつけ替えることが前提なワケ。だからタイヤはショボいし、アルミホイールやフロアサイレンサー、何より先進安全装備「アイサイト」もついていない。だから安価を実現できた。

――そんなGR86とロードスターを選ぶ際のポイントは?

小沢 GR86は全長4.2m台で4人乗りのクローズドクーペ。片やロードスターは全長3.9m台のふたり乗りオープンカー。利便性や子供がいる家庭はギリギリGR86のほうが買いやすい。

ただし、GR86のリアシートは狭く、オザワが座ると頭がリアガラスに触れるレベル。オトナが座るのはチト厳しい。まぁ、両車を比較するなら純粋に走る楽しさで考えるべきだね。

トヨタ「GR86」価格:279万9000~351万2000円、発売:2021年10月、値引き:5万円、リセールバリュー:A。GR86は2012年にデビューした「86」の2代目である。初代と同じくスバルと共同開発されたFRのスポーツカーだ

マフラーは左右2本出し。ちなみにエンジン音を演出するアクティブサウンドコントロールを搭載。音はかなり刺激的

新型のウリは排気量。2Lから2.4Lに拡大。初代とは桁違いの力強さを誇るエンジンに仕上がっている

メーターパネルは、全グレード7インチカラーディスプレイとLCD液晶メーターを組み合わている

内装は水平基調のデザイン。2代目もMT車とAT車を用意。レバータイプのパーキングブレーキがスポーツ心を高める

――走りはどっちがイイ?

小沢 実に悩ましいが、単純にパワーを求めるなら断然GR86! 歴史ある群馬製作所本工場で造るスバル自慢の水平対向4気筒エンジンは、今回のフルチェンで2Lから2.4Lに排気量をアップしている!

ピークパワーは28PS、ピークトルクは38Nm増し、最高出力は235PS、最大トルクは250Nmとなった。片やロードスターは1.5L、ロードスターRFでも2Lだから力の差は歴然!

――ふむふむ。

小沢 しかも、GR86は最新のスバル車譲りとなるフルインナーフレーム構造採用でねじり剛性は50%アップ! ルーフ、ボンネット、フロントフェンダーまでアルミ化して軽量化に成功し、パワーロスも皆無!

サスペンションもこだわりまくりで、兄弟車であるBRZとはダンパー、パワステ、サスペンションスプリング、タイヤを取りつけるナックル、前後スタビライザーまで違う。

また、GR86のステアリングフィールは超ソリッド。走る味わいなら500万円超えのドイツ製スポーツカーに引けを取らないし、エクステリアもセクシーかつチョー上質! もちろん、ドリフト走行を考えているなら問答無用でGR86よ!

――要するにオザワのガチ推しはGR86であると?

小沢 そう単純にいかないのが4代目ロードスターのスゴさよ! デビュー7年目で正直、古いかと思いきや乗ると全然そんなことはない! とにかく圧倒的な軽さに驚かされる。

特にSグレードは車重1t切り! 電動格納式ルーフを持つロードスターRFでも車重は1100~1130㎏! 乗ればわかるが、その走りの魅力はスッポンポンで海や川を泳ぐような爽快さにある。GR86が強炭酸の濃厚サイダーだとしたら、ロードスターは山麓の天然水である!

どっちもウマい。しかし、キモとなる軽さと濃厚さが違う。ちなみにロードスターは年末にマイチェンが予定されており、かなり魅力的なデザイン改良&グレード追加がありそうだ。

(左)マツダ「ロードスター」価格:260万1500~333万4100円、発売:2015年5月、値引き:10万円、リセールバリュー:A(右)マツダ「ロードスターRF」価格:343万9700~390万600円、発売:2016年12月、値引き:15万円、リセールバリュー:A。世界中で大人気のロードスター。累計生産台数は100万台を突破。ふたり乗り小型オープンスポーツカー販売のギネス記録を持つ

爽快なオープンスポーツ。運転に集中するべく、スイッチ関係は最小限となっている。エアコンは操作性に優れるダイヤル式が採用されている

エンジンはロードスターが1.5L。最高出力は132PS。ロードスターRFは2L。最高出力は184PSだ

ロードスターは130L、ロードスターRFは127Lのトランク容量を持つ。カバンなどの荷物はトランクへ

――GR86とロードスターに点数をつけるなら何点?

小沢 クルマバカ的な視点で言うと、スポーツカーが300万円以下で買えるのは世界中探しても日本だけ! そういう意味ならどっちも120点! とはいえ、使い勝手で考えると4人乗りが可能なGR86は95点。ロードスターは乗車人数の面で90点だね。

けど、人生を豊かにするって観点ならロードスターに満点を与えられる。屋根を開けて走るだけで、普段目にしている景色が全然変わって見えるからね。それだけでも買う価値アリ!

●小沢コージ(Koji OZAWA)
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週木曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』