「びんびんバイク」とは男心を刺激するにも程がある愛すべきバイクのことだ。今年発表・発売されたマシンの中から、青木タカオ審査委員長が勝手に7台の受賞車を決めた。今年の顔は!?
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■カワサキが史上初のワンツーフィニッシュ!
――今年、最も青木さんの男心を刺激したバイクは?
青木 1位は、まだ売っていませんが今秋の発表以来バイクファンから注目を浴び続けている、カワサキZ650RSです! 欧州で先行発売され、国内販売は来春の予定ですが、アオキは速攻で実車を徹底チェック、大ヒット間違いナシと確信しました。
――バイクファンはどこらへんにびんびん?
青木 コイツは1976年に登場し、通称"ザッパー"の名で人気を博したZ650の再来。キャンディエメラルドグリーンの美しい車体色をはじめ、リアエンドでドーンと反り返るダックテールカウルや砲弾形デュアルメーター、サイドカバーなどを忠実に再現して復活! タマりません。
――実車にまたがった感想は?
青木 サイドスタンドを払って車体を引き起こすと、スッと軽い。車体重量は兄貴分のZ900RSより28kgも軽い187kgなので、押し引きなどの取り回しがしやすい。
Z900RSは極太でたくましい容量17リットルの燃料タンクを股ぐらで挟みますが、Z650RSは容量を12リットルとし、スリムで伸びやかなフォルムが印象的です。サイズ的には大きすぎず小さすぎず、日本人の体格や日本の交通環境に"ちょうどいい"。
――スリムなワケは?
青木 秘密はエンジンです。Z900RSは並列4気筒ですが、より幅の狭い2気筒にしています。ベテランライダーなら説明不要ですが、公道でスポーツライディングを楽しむのに最高出力68PS/8000rpmは十分すぎるほどで、4発より低中速トルクの太いツインがイイという2気筒派は少なくありません。
ベースとなったZ650は先進的デザインのスーパーネイキッドで、軽快なハンドリングと優れたスロットルレスポンスを併せ持ち、ベストバランスとマニア筋をうならせていますから、そのネオクラシック版はまさに待望です。
ハンドルはZ650より50mm高く、30mmライダーに近い位置に見直され、70年代のいわゆる"殿様乗り"に近い。堂々たる乗車姿勢でシート高は800mm。日本仕様の足つき性は良好です。
――気になるお値段は?
青木 100万円前後が予想されていますが、Z50周年の節目やカワサキモータースジャパン桐野英子新社長の就任などが重なっており、ご祝儀的に100万円を切る大盤振る舞いもありえるなと。アオキはそう予想しています。
――なるほど。続く2位もカワサキ?
青木 Z900RS SEです。2018年の登場から3年連続のベストセラーとなっているレトロスポーツですが、先月にブレンボ製のフロントブレーキパッドと、オーリンズ製のハイグレードリアショックを備えた上級版の「SE」をラインナップに加えたところ、コレが即完売! 1973年に欧州でのみ発売された伝説の"イエローボール"を車体色に採用したのも人気に拍車をかけました。
スペック上はノーマルとほぼ同等ながら、フロントフォークのアウターチューブや前後ホイールをゴールド仕様とし花を添えただけでなく、最低地上高やシート高を10mmアップし、よりアグレッシブな走りに対応しています。
価格はスタンダードに22万円プラスの160万6000円に抑えたバーゲンプライス! 50周年記念モデルの登場も秒読みで、Z650RSとZ900RS兄弟の強さは2022年も続くと予想します。
――ページの都合もあるので解説は巻きでおなしゃす。続いて3位は!
青木 ホンダも負けていません! 4月に国内発売され、夏には4500台の国内計画販売台数の半分が売れたGB350とGB350 Sです。
心地よい鼓動が感じられるロングストローク設計の単気筒エンジンと、シンプルでありながら存在感が際立つこれぞ単車というスタイルで、バカ売れ。先鋭的なフォルムを必ずしもライダーたちは求めていないということが、GBの大ヒットでよくわかりました!
――4位はなんですか?
青木 4月に登場のスズキ・ハヤブサです! 市販車で時速300キロ超えをした名実共に最強最速の究極バイクは1999年に初代が誕生。2008年にモデルチェンジされ、今回3代目へと進化!
188PSもの最高出力を叩き出すエンジンは全域で力強く、3000rpm以下の低回転域でも余裕のある図太いトルクでゆとりあるパワーを楽しみながら走ることができます。
――5位をどうぞ!
青木 1978年の初代発売以来、ロングセラーモデルとして愛され続けるも、厳格化される環境規制に対応できず43年の歴史に幕を閉じたヤマハSR400ファイナルエディション。
最終型として3月に発売されたものの、エンブレムやカラーを特別仕様にした1000台限定のリミテッドを含め、合計6000台が瞬く間に売り切れました。累計12万台以上を生産しましたが、現在、中古車市場で引っ張りだこ。価格高騰中です!
――生産終了を惜しむライダーが多数いたんスね! どんどんいきましょう、6位は?
青木 1957年に初代デビューの長寿モデル、ハーレー・スポーツスターの最終形態となるフォーティーエイトファイナルエディションです。
春先に完売した21年式の空冷スポーツスターは、オカワリの声が販売店やユーザーから多数寄せられ、ハーレーダビッドソンジャパンの野田一夫社長がアメリカ本社に掛け合って最終生産分1300台を確保! 日本限定販売を実現しました。それでも発表の翌日には全国113店舗あるディーラーが次々に完売を表明。まさに大反響でした!
――スゲ! そして7位は?
青木 カワサキ・ニンジャZX-25Rです。現在250ccクラスで唯一、官能的なエキゾーストサウンドを奏でる4発エンジンを搭載。しかも車体は本格派スーパースポーツルック! 今年からワンメイクレースも開催される大フィーバーぶりで、カワサキ・レーシング・チーム(KRT)譲りのレーシンググラフィックス採用のKRTエディションは人気大爆発!
カワサキモータースジャパンの桐野新社長も自分で購入しワンメイクレースに出場したいそうですが、在庫がなく入手できないまま悶絶(もんぜつ)中です。
――マジか! 惜しくもベスト7を外れてしまったマシンはどれ?
青木 ヤマハYZ125です。モトクロス競技車で公道を走れないのでこの位置ですが、2ストロークエンジンを新開発し、より戦闘力を高めたヤマハには驚きました。
実に17年ぶりのフルモデルチェンジで、熱きファンから予約が殺到! 当初の販売計画は400台でしたが、1000台超えのウワサも。アオキも歓喜のジャンプをブチかましておきました。
――ではアオキ委員長、2022年二輪業界の展望をお願いします!
青木 環境規制に適合できず、惜しまれつつ生産終了となる人気モデルが出てくるはずで、ファイナルエディションはバカ売れ必至です。早めに予約を入れておくべし! 来年も二輪はびんびんですよぉぉぉぉ!
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』