高速道路などで事故やトラブルに見舞われると、せっかくの帰省や行楽が台無しになる。渋滞などでイライラすることもあるが、呼吸を整え、疲れを感じたらサービスエリアへ
例年、年末年始は交通事故や高速道路でのトラブルが増える。それらを回避するにはどうすればいいのか? 賢い運転術などを自動車専門誌編集長のキャリアを持つ、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に解説してもらった。

■年末年始の高速道路でのトラブルはタイヤ関係が多い

ーー年末年始は交通事故や高速道路でのトラブルが増えるそうですね?

渡辺 まず年末は繁忙期なので例年交通量が増えます。また、12月は日の入りが早いため夜間の時間帯が長くなる。薄暗くなるとドライバーの視界が悪くなりイライラする。気持ちが焦った状態で運転するので事故が多くなります。

ーー帰省中に高速道路での事故も多いようですね。 

渡辺 帰省は1年間の仕事の疲れが蓄積した状態での運転なので、どうしても注意力が散漫となり基本的な安全確認を怠ってしまう。普段ハンドルを握らない方だと、運転ミスが起こりやすく、事故につながってしまう。家族を同乗させていると、おしゃべりやケンカなどで車内が非常に騒がしくなり、それがドライバーのイライラにつながる場合もありますね。

ーー年末年始の運転で注意するポイントは?

渡辺 例年、年末年始の高速道路で起こるトラブルの多くはタイヤ関係(パンク、バースト、エアー圧不足)とされています。

高速道路のトラブルで多いとされているのがタイヤ関係だ。タイヤの空気圧が低いとバーストの可能性もはらむ。日頃からタイヤの空気圧はしっかり確認することが大切

ーーなぜタイヤに関するトラブルが多いんスか?

渡辺 気温が低くなるとタイヤの中にある空気はボリュームが小さくなる。つまり、タイヤの空気圧が相対的に不足気味になるんですね。そもそもタイヤの空気は自然に抜けることもあるので、ガソリンの給油時にこまめに空気圧は確認しておきましょう。

ーーほかに高速道路でのトラブルはありますか?

渡辺 ガス欠やバッテリー切れが挙げられます。冬場はクルマで暖房をフル稼働させ、ヘッドランプやワイパーも作動させるのでバッテリーがほかのシーズンよりも上がりやすい。そのため、突然エンジンが始動できなくなるトラブルが起きるんですね。

ーーつまり、年末年始に長距離運転をする際は事前にガソリンを入れ、クルマの点検整備を行なうべきであると。

年末年始の高速道路ではガス欠やバッテリー切れのトラブルも多いという。運転前に自ら点検することがトラブル回避の近道。不安なら販売店やショップに整備に出そう

渡辺 そのとおりです。ライトも事前に必ずチェックしましょう。通常は使用しませんが、フォグランプなども確認してください。

ーー季節的に雪対策は?

渡辺 重要ですね。年末年始は降雪や路面の凍結の影響でタイヤが滑る。ブレーキやハンドル操作に影響が出ると事故に結びつくので冬用タイヤに付け替えて溝もしっかり確認しましょう。特にスタッドレスタイヤはシーズンオフになると保管している関係で、空気圧やヒビ割れのチェックが大切になります。また、タイヤチェーンがあるなら事前に点検整備と予行練習をしてからクルマに載せること。

ーー事前にクルマに載せておくと、役立つというか便利なモノってありますか?

渡辺 何が起きるかわからないので所持金に余裕を持たせ、毛布や食料、簡易トイレもクルマに載せておきましょう。ガス欠やバッテリー上がりでエンジンが始動しない、そんな時に役立ちます。特に毛布は寒さ対策だけではなく、雪にタイヤが埋まって脱出できない際に使用できます。タイヤと雪の間に毛布を差し挟むと脱出できる可能性が高まりますよ。

ーーなるほど。事故を回避する運転術はあります?

渡辺 薄暗い道路で危険を回避できるメリットがあるので、冬場は早めにヘッドライトを点けること。降雪時や激しい雨の時は自分のクルマの存在を周囲に伝える効果もあります。天候の悪い日は昼間でもヘッドライトを点灯する。

ーーふむふむ。

渡辺 それからコレは当たり前の話ですが、スマホやナビの操作はクルマを停車させて行ない、車間距離にも注意すること。また、暖房を使用しながら運転していると眠くなりますし、エアコンを内気循環のモードにしておくと、車外の空気が入らないので、車内の二酸化炭素の濃度が増えて一層眠くなるので注意が必要です。いずれにしても、長距離運転は心身ともに疲労が蓄積するので、定期的にサービスエリアなどに入り休憩しましょう。

ーー長距離ドライブは、ゆとりある計画を立てるべしと。

渡辺 そのとおりです。

ーーちなみに雪道運転のコツってありますか?

渡辺 進みたい方向をしっかりと見ること。見るというよりも睨む感覚ですね。そうすると横滑りを生じたときでも、カウンターステアなどの操作が不思議なほど的確に行なえて、クルマの進行方向が安定します。またハンドルやペダルを「戻す」操作を丁寧に行なうこともきわめて大切です。

ーーほかに注意点は?

渡辺 年末年始は酒席が多くなりますが、飲酒運転は絶対にダメです。コレは当たり前の話ですが、改めて申しあげておきます。安全運転で、どうぞ楽しい年末年始をお過ごしください。


渡辺陽一郎 Yoichiro WATANABE
カーライフジャーナリスト。1989年に自動車購入ガイド誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長に。1997年に同社取締役を兼任。その後、フリーランスに。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員